★Step31 彼女の変化は……

久しぶりの学校のせいか、周りの反応がよそよそしく感じられました。しかし、リンダだけは何時も通り自分に接してくれています。夏子は、本当の事の発端が、リンダに有で有る事は認識していましたが、今は、それを考えるべきではないと思い、自分も出来るだけ自然に接する様に心がけました。


南は相変わらず、何も言いません。そして、夏子から声をかける事も。ぎくしゃくした関係は相変わらず改善されていませんが、先ずは、夏子が学校に来た事にリンダは安堵しました。ひょっとしたら時間が解決してくれるかもしれません。


そんな淡い期待も有ったのですが、結局、その日、南と夏子が話をする事は有りませんでした。


西日が校舎の影をグラウンドに落とします。都会の夕暮れは、一日の終わりを意味してはいません、これから始まる物もあるのです。それらが動き出すこの瞬間は、一種異様な雰囲気が有りました。


「南、夏子は?」


後ろから声をかけるリンダに南は振り向こうとはしません。それどころか、避ける様に、足早に校舎を後にします。


リンダは、それを見て、南の前に走り出ます。そしてこう言いました。


「怒ってる……昨日の事…」


流石に、ひっぱたいた事に関して、リンダは反省していました。たとえそれが男の子で有ったとしても、暴力は暴力です。先に手を出した方が謝るべきだとミルおじさんに教えられていましたから。


「別に…」


南は、怒ってるんだか許してくれたんだか良く分らない返事をして、すたすたと、リンダに前を歩いて行きます。


「――ねぇ…」


どう言う風に南に接したら良いのか、良く分らなくてリンダの問いかけもちょっと、おっかなびっくりです。


「なんだ…」


そう言って南はリンダに振り向きます。


「早く言えよ」


リンダは再びむかつきます。笑顔で米神に『怒』マークが浮き出しています。でも、手を出したのは自分ですから取りあえず、謝らなければイケません。リンダは『怒』マークをパワーアップさせて気持ちを高めてから、徐に頭を下げ、


「ごめんなさい」


その一言で片付けました。南はその行為を見て、リンダと視線を会わせると


「はぁ?」


眉間に皺を寄せて、そう一言言っただけでした。でも、兎にも角にも、謝ったんだから今度は立場的には対等です。リンダは南に言いたい放題の事を言い始めました。

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