★Step29 彼女のおせっかい

「なんだよ、一体…」


リンダは南の腕を引っ張って夏子と家を目指していた。リンダのカンでは、夏子が来て欲しいのは南だと感じていました。確証は有りませんでしたが、この前のクラブの一件で感じたのは、南に対する不信感でした。何故、夏子が南に不信感を感じていたのかは定かでないが、それが払拭されないうちは、夏子は学校に現れないで有ろうと、リンダは考えたのだ。


「良いから、来るの、そうでないと何も始まらないんだから」


南は、何故か嫌がった。自分の恋人なんだから、自分で責任取らなきゃイケないとリンダは考えています。


「南がはっきりしないからイケないのよ。南がちゃんと、はっきり、夏子に言ってあげないから迷ってるのよ」


リンダは南の腕を掴み問答無用で、南を夏子の家の前につれて来ました。


「じゃぁ、行くからね」


リンダは南にそう言ってからインターホンのボタンを押しました。インターホンには夏子の母親が出ました。リンダは自分の名を名乗ると、母親はリンダの事を覚えていてくれて直ぐにリンダを家に上げてくれた。


♪♪♪


夏子は相変わらず機嫌が良くありません。南が現れたのはちょっと嬉しかったのですが、連れて来たのがリンダだと言う処に引っかかってしまいました。ここにいるのは、純粋に南の意思では無い、リンダが行くと言ったからなのです。夏子にはそれがちょっと許せませんでした。


「なに、どうしたの」


夏子は何時に無く語気を荒げて南にそう言いました。


「おまえこそ…どうしたんだよ」


南は、相変わらずぶっきらぼうです。何時もの夏子なら、南は、こんな物だと許せるのでしたが、今日は何故か許せませんでした。


「別に…いいじゃない…」


「別にって事は無いだろ」


夏子の視線はちょっと危険な雰囲気を湛えています。かろうじて耐えてると言う感じの口調です。今にも爆発するんじゃないか、そんな感情が見え隠れします。


「大丈夫よ、明日から学校行くわ。これ以上勉強遅れてもつまんないし」


夏子の視線の向こうには、カレンダーが有りました。そこには模試や定期テストの日程がびっしりと書き込まれています。本当ならば、受けなければならなかった、大事なテストもキャンセルしてしまっています。


そのカレンダーの中には、赤丸だけが書かれた日が、何日か有りました。 互いに忙しい日程を縫って予定されていた、南とのデートの日でした。その日だけは、全てを忘れて、二人だけで楽しめる。そう言う日だった筈なのですが、その日程も過ぎ去ってしまっています。


「南には負けたくないもの…」


夏子はそう言って、ベッドの上で、膝を抱えます。今の夏子の視線には何時もの優しさが有りません。突き刺さる様な冷たい視線でした。


「明日は、必ず来いよ…」


南はそう言って視線を背ける夏子に向かって一方的にそう言うと部屋出て行ってしまいました。


「ご、ごめんね、夏子」


リンダはそう言うと、南を追いかけて部屋を出ました。

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