★Step13 楽しい学校デビュー
結局、南はリンダを伴って学校に登校しました。見た事の無い女子を伴っての登校でしたから自と二人に目が向けられます。
「少し離れろ…」
南の米神がぴくぴくと動きます。リンダは、南の腕にぶら下がらんばかりの勢いでくっついて来ます。こんなトウモロコシに、なんで付き合わにゃならんのだ。南の心はその事で一杯に成りましたがリンダは全く気にしません。こう言う時は女子の方が胆っ玉が座って居る様で、見ず知らずの視線に対しても笑顔で応える余裕が有りました。
♪♪♪
「リンダ・リルルです、宜しくお願いします」
リンダは光江に習った様に元気に自分の名を名乗ってから深々と一礼しました。そのぎこちなさが男子のストライクゾーンだったらしく、彼女はあっという間にクラスの人気者になりました。
「佐藤です」
「鈴木です」
「田中です」
そう名乗った三人組みは、特にリンダにぞっこんの様で休み時間に早速、名乗りを上げてリンダの争奪戦が始まりました。南はその様子を机に頬杖をついてぼんやりと眺めているだけであまり気にしていない様子です。でも、彼女の周りには、いつの間にか人の輪が出来て話の花が咲いている様でした。
「南君、あの子、この前会った子よね…」
相変わらず洗練された美しさを纏った夏子は、南の傍らでちょっと困惑した表情を作りそう彼に尋ねました。
「ああ、そうだ」
夏子に対して南は慎重です。この前の辺境惑星での出来事以来、ずっとこの調子でしたが夏子は特に気にしていないのに南はあの屈辱は忘れない、そんな思いが有りました。学校側から見ても理想的な二人は、人の輪の中心にいるリンダを見て顔を見合せます。それはとても複雑な視線でした。
♪♪♪
昼休み、リンダは光江が作ってくれたお弁当を開けました。
「ねぇ、南…これ、何?」
ゼリー飲料を啜る南にリンダはお弁当の中身を指さして不思議そうに尋ねました。
「おにぎりだ」
「おにぎり?」
「そうだ、日本のサンドイッチみたいな物だ」
リンダは、ふうんと分ったんだか分らないんだか良く分らない返事をします。
「この黒い紙みたいなのは?」
「それは海苔」
「じゃあ、この黄色い大根…」
「良いから食え!」
リンダの質問攻めに南は段々めんどくさくなって投げやりに答えると、ばったりと机に突っ伏して目を閉じてしまいました。夜遅くまで勉強に明け暮れる南にとって、昼休みは貴重な睡眠時間でした。それを邪魔するのは者は、たとえ夏子で有ったとしても、うざったく感じるのです。
「いただきます……」
リンダは机に突っ伏して寝てしまった南を横眼で見ながら光江に習った様に両手を会わせてそう言うと、おにぎりを一口頬張りました。おにぎりはリンダの味覚にぴったりでした。程良い塩気とほんのり香る海苔の香りが独特で、とても幸せな気分になれました。
「南、おいしいよ」
リンダは無視する南を気にする事無く上機嫌で話しかけますが、彼はしかとを決め込んで居ます。昼休みは睡眠時間、そのスタンスは譲れない様でした。
「あの、リンダ…さん…」
リンダの前に現れたのは夏子と女子が二人でした。一緒にお弁当を囲もうと言う御誘いだった。リンダは二つ返事でOkです。それを聞いた三人はリンダの周りに椅子を持ち出すとごるっと輪を描く様に並んでお弁当を広げます。そのとばっちりは南を直撃して、女子のお喋りに巻き込まれて眠る処の騒ぎでは有りません。流石に教室の中で「うるさい」と切れる訳にも行かず。渋々、空いて居る席に避難する事に成りました。
リンダの学校初日は大成功。友人もできてこれからの三ヶ月間を楽しく暮らせそうで心が躍ります。彼女が受け入れられたのは農場育ちのおおらかさでしょうか、魅力的な笑顔に皆が魅かれた様です。リンダは思います、大切な思い出が沢山出来ます様にと。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます