★Step12 地球の生活は驚きと共に
リンダは光江と一緒に夕食の食卓を囲みました。
そこでリンダは又しても困惑します。日本では「お箸」と言う物で食事するのだそうです。そして主食はお米。お米は食べた事は有りますのでその事には驚かなかったのですが、問題はこのお箸と言う物で二本の木の棒は全然上手く使えません。光江はリンダに優しく教えてあげるのですが、流石に直ぐに上手く派行きません。悪戦苦闘して手が攣りそうになった処で光江がフォークを用意しました。
「ゆっくり慣れて下さいね」
光江に優しくそう言われてリンダはちょっと照れ笑い。この光江とは上手くやって行けそうに思えました。雰囲気が何処となくメイおばさんに似ていたからです。その後、二人は急速に仲良くなり光江も普段、相手にしてるのが南なので話し相手にもならず、ご両親も帰って来るかどうか分らなかったので話し相手がいなくてちょっと寂しかった様でした。
「あの、南はやっぱり地球でもゼリー飲料ばっかし食べてるんですか?」
リンダの言葉に光江がちょっと寂しそうな表情を見せました。
「中学に上がる前までは利発で明るい普通の子だったんですよ」
リンダは、ほうと思いました。そして、これは良い事を聞いたとも。光江曰く南があんな性格になったのはついこの3~4年の事らしいのです。原因はやはり家庭環境でしょうねとの事。両親が普段家に居る事が少ないと言うのは子供にとって寂しさを助長する事になるに違いないとリンダは思いました。そして、リンダ自身も自分に両親が居ない事を光江に打ち明けました。
「類は友を呼ぶ……でしょうかね?」
光江はそう言ってにっこり微笑みました。
「――どう言う意味ですか、その類はなんとかって…」
「日本の古い
「ふうん…」
リンダは鼻で答えます。意味がよく理解できないときにやる彼女独特の癖でした。メイおじさんには、ちょっと失礼になるかも知れないので止める様に言われて居たのですが、ついつい出てきてしまいます。でも、光江は気にしていない様です。そして楽しい夕食の時間は足早に過ぎて行きました。
♪♪♪
南は、何時もの様に自室でゼリー飲料を食べた後、休むことなく明日の授業の準備をします。明日はちょっと苦手な暗記物が目白押しでしたので、流石にちょっと気が滅入ります。数学や物理の様に、応用が利く科目が得意な南でしたが、暗記物、日本史や世界史、更に広がって宇宙史等になって来ると、ちょっと怪しい部分が出て来ます。
もっとも危ないと思ってるのは等の本人だけで、周りから見れば大したものだと言われんばかりの知識の広さでした。
「宇宙史Ⅱ…か」
南は教科書と参考書を開き、ちょっとめんどくさそうに予習を始めます。教科書を何ページか捲った時、机の脇に置きっぱなしにしておいた携帯端末が鳴りました。南はそれをこれまためんどくさそうに探り寄せ、端末の表面に表示されたの着信表示を確認しました。そこには南の父親の名が表示されています。
「もしもし…」
南は両親に対してもぶっきらぼうな物言いをします。少し警戒した様な口調で父親からの電話を受けると、少し不機嫌そうな口調で父親の質問に答えます。
「――リンダ?あぁ、無事に着いたよ。親父、今日は?」
それを聞いた父親は安心した様な口調で要件を伝え、南はその内容に何度か相槌を返します。父親の話によりますと、急な患者に対応しなければならなくなったので今日は帰れないとの事、もっとも、そんな事は珍しい事では無くて日常茶飯事、南も別に驚いた表情は見せません。そして話が終わって電話を切ると、椅子にだらんと座り、天井見詰めて小さくため息をつきます。
「――ふぅ」
そんなに心配ならば帰ってくれば良いとも思ったのですが、患者が居るのでは仕方が有りません。医者は病人がいる限り仕事はエンドレスだとそう考えなおして、机に教科書や参考書を広げると明日の予習を再開しました。
♪♪♪
都会の喧騒は夜になっても収まる事は有りません。リンダはそれが不思議でなりませんでした。彼女にとって、夜は一日が終わった事に感謝して心静かに休む物と言う認識が有りましたが、都会は夜になって益々、その怪しい魅力の翼を広げて行く様に感じられました。
「ねぇ、南、起きてる?」
リンダは南の部屋の前で扉をノックしながらそう尋ねました。南の部屋の扉は、音も無く開かれると、彼の冷たい視線。なんだか邪魔者を見る様な目でリンダを睨んで居ます。
「なんだよ…」
リンダは南の目つきの悪さに慣れたせいか冷たい視線なんて全然気になりません。攻撃が無効になる魔法でも唱えたのでは無いかと思われる位のほほんとした視線に南は崩れ落ちてしまいそうになりましたが、そこは都会の子、切り替えは早くリンダを視線で威嚇します。
「ねぇ、南は明日学校行くんでしょ」
南は嫌な予感がしました。そして何も答えません。
「一緒に行こうね」
ほら来たと南は思いました。一緒に行こうは転校生の基本中の基本、こんなトウモロコシ娘と一緒に学校に行ける物かと心に中で叫びつつリンダのお日様みたいな笑顔を見詰めます。それに、夏子にあらぬ誤解を与えてしまいそうだったから、南はきっぱりと言い放ちます。
「断る…」
そして部屋の扉を閉めてしまい、何度呼んでも返事が返って来る事は有りませんでした。リンダは小さく肩をすくめて見せます。
「初日で右も左も分んないから、明日だけは一緒に行こう。その後は、あたし一人で良いからさ」
そう言った後、暫くして部屋のドアが開き南がこれまた一言こう言いました。
「明日だけだからな」
そして再び扉が閉められ今度こそ扉は開かれる事は有りませんでした。リンダは心の中で思いっきり「い~~~だ」をしながら。自分の部屋に戻ります。でも、地球の学校と言うのはどんなところだろう、そう考えただけで心が躍ります。今夜は良く眠れるだろうか、それだけが心配でした。
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