第2話どうやら今の私は、絶対無敵のようです

 それからも大立ち回り、また衛兵十人ほど燃やしてやって、あれだけの事をしておいて、自分だけは「お嬢様」の仲間だと思ってた、馬鹿な使用人も何人か燃やしてやった。


 親父の攻撃白魔法が尽きるまで殺し合って、何度か種火も飛ばして着火させ、ほとんど耐火(レジスト)されたけど、ついに左腕炎上させるのに成功した。


「あははははは、死んだな、親父しんだっ! ありがと~、パパとこんなに遊んでもらえたの10年ぶりぐらい? ぎゃはははははははっ」


「腕を切り落とせっ!」


「はいっ」


「ぐああああっ」


 衛兵が抜刀して左腕落として着火失敗。


「ヒール、ヒールッ」


 親父が治療魔法で自己治癒。それでも衛兵が近づいて来たら着火してやって、クソ親父にもガンガン種火飛ばして着火着火。


 昼から50人は殺せたけど、メイドとか穴掘りや死体処理やってた下働きは逃げて、残ってるのは親父と衛兵。


 クソババア(母)も殺しかったけど、屋敷全体着火するのは難しくて失敗。


 やっぱり人間とか、人間が触った所の油とか、そういう穢れたもんじゃないと火が付かないみたい。


「クソッ、化け物めっ、殺してやるっ」


「そんな化け物、ご丁寧に何年もかけて地下牢に閉じ込めて苦しめ続けて、無能のゴミから見事に作り上げた馬鹿って誰だっけ? もうご自慢の白魔法も尽きて、一体どうやるんだろうな? ケケケケ」


 地面に埋まっても燃えてるのとか、火着けられて倒れてるのとか、着火されたばっかりで泣き叫んで転げまわってるのとか、そいつらの中心にいるようにして囲まれないように注意。


 それでも結構槍で刺されて穴だらけ、一回死んだから慣れたのかまだ生きてる。


「ヒール、エクスヒール、パーフェクトヒール」


 魔法は使えないけど、おまじない程度に言っておく。他人には使えないけど自分の怪我は治せるような気がする。


「旦那様、一旦お下がり下さいっ」


「うむ」


 クソ親父を下がらせようとする家令、鬼みたいな顔で睨むな。小さい頃は仲良しだったじゃない、邪険にすんなよ。


 とりあえず邪魔するのに家令にも着火。


「あああああっ?」


 もしかして自分は「お嬢様」と仲良しだから、着火されないとでも思った?


 じゃあ一回ぐらい地下牢まで助けに来いよ、食い物の差し入れぐらいしろや。


「ああ、服脱いでも無駄だから、火着いてるのは人間の皮とか油とか穢れだから」


「ひいいいっ」


 上半身の服全部脱いでも、火が着いてるのは人間だから消せない。


「おのれ、幼い頃あれだけ可愛がられておきながら、平気で殺せるか?」


「可愛いって言うなら、一回ぐらい嘘でも地下まで助けに来いや、ベリミタスは来てくれた。番人に騙されて蹴り倒されたけど、お小遣いの銀貨50枚も払って、廊下の端まで歩かせてくれたよ」


 今ならそのベリミタスでも、平気で着火して殺せる自信がある。


 人質にして降伏しろなんて言われたら、すぐ燃やしてやる。


「誰かあるっ? この化け物を倒せた者には、褒美は思いのままだっ」


 残念でした、衛兵も怯えてる腰抜けしか残ってない。刺し違えてでも殺そうとして槍で突きさして、着火されて転げまわってる奴か、死んで燃えてるのしかいない。



 そこで表の庭の方が騒がしくなって、馬の足音が聞こえて来た。


「正教会っ、聖騎士団であるっ! アンデッド出現の報を受けたっ、何処かっ?」


「おおっ、聖騎士団っ」


「こちらに御座いますっ、お待ちしておりましたっ」


 家の恥より化け物退治の方を取ったか? さあて、今のうちにクソ親父に盛大に火種を投げてやる。


「旦那様っ、お早くっ」


「うむ」


 クソッ、耐火されて逃げられた。


「お前が通報のあったアンデッドかっ? 大人しく縛に着けっ」


 さあて、どうやって言い逃れするかな?


「さっきのクソ親父は悪魔崇拝者です。地下牢で実験して、白魔法が使えるアンデッドで、槍で刺し殺してもすぐ復活する化け物として作られました。私は魔術回路が壊れた失敗作なんで、処分されそうになって逃げようとしたのに逃がしてくれなくてっ、助けて下さいっ」


 哀れな被害者としてマヤって、泣いて跪いて救いを求めてみる。半分嘘だが半分ぐらい本当、どっちを信用するかな?


「たわけがっ、白魔法が使えるアンデッドなど存在せぬっ」


 ですよね~、自分でも自分の存在が良く分からない。


「でも本当なんです、調べてくれたら分かりますっ、私は8歳からずっと地下牢で閉じ込められて、変な物食べさせられて化け物になるよう育てられたんですっ」


 他にも自分と同じ、孤児とかスラムの子でもいたら一発なんだけど、残念ながらジジイとかババアの住人は全員死んでる。


 まあ変な物は一杯食った、自分からゴキブリとムカデとネズミの赤ちゃん食った。


「昼には槍で穴だらけにされて一回死んだんですけど、墓の中で生き返って出てきたら、また逃げないように殺されかけて」


 心臓の前の服の穴と血とか、身体中に空いてる槍の傷と血の跡を見せて、前も後ろも穴だらけ。


 全員槍を降ろしてくれて、殺気も怒鳴り声も消えた。


 愚かなアンデッドで、自分がどんな化け物なのかも知らない、哀れな生き物として認定してくれたようだ。


「よし、お前を一旦保護する、侯爵を調べるのは後だ、それと…… これだけ全員殺したのはお前か?」


 う~ん、これは言い訳できない、認めるとしよう。


「はい、囲まれて槍で何度も刺されて怖くて怖くて、さっきみたいに殺されると思って抵抗したら、なんでか消えない白い炎で燃えて、みんな死んでしまって」


 私は無辜の市民で実験動物、私は被害者、親父は悪魔崇拝者。


 今までの地下牢の生活を思い出すだけで、綺麗な涙がすっと流れ始め、止まらないからダラダラ流れて来た。


「それでは今からお前を聖騎士団へと連行する、怖い事はしないから火を着けないと誓ってくれ。何か希望はあるか?」


「はい、何年もまともな食べ物を食べていません、何かお恵みを」


 歩兵の騎士が非常食のような干し肉とか、甘い固形物をくれた。


「うっ、うううっ、うわああああああっ」


 この世にこんなおいしい食べ物があるのかと本気で泣けた。騎士達も貰い泣きしてくれた。


「もっとあるから沢山食べなさい」


 騎士達が歩み寄って菓子を手渡してくれた。地面や死体から出ている炎に触れた者もいたが、聖騎士団だけあって聖別された装備と祝福(バフ)で、着火して死ぬ者はいなかった。


 こいつら敵にしないで良かった。「え? 私の防御力低すぎ?」の紙装甲なので、刺され過ぎると死ぬし、聖別された槍や剣で刺されると即死んで、そのまま復活しなかったかもしれない。


「ああっ、ああああああああああああっ」


 12,3歳ぐらいの、血塗れで服も身体も穴だらけ血だらけの女の子が、甘い物やら干し肉食っただけで号泣したので、悪役で悪魔崇拝者は侯爵のクソ親父と屋敷の者全員だと決定した。



 正教会聖騎士団


 大して変わんね~~


 大人しく連行されて、馬車には一人で乗せられ、手枷付きで来たのに結局牢屋入り。


 慰めになるのは、涙脆い騎士が甘い物とか暖かい食べ物差し入れてくれたぐらいで、魔封じの首輪とか足の鎖と重りが増えたので、白い炎使って逃げられない。


「出ろ、出ろ出ろ出ろ、出た」


 白い炎出すのは、魔法じゃなくてスキルなのか体術?なのか、魔封じの首輪はあまり効果がなかったようだ。


 暫くすると事情聴取が始まって、優しい騎士が責任者になって聞いてくれて、何と紅茶と甘い茶菓子が出た。


「君はどこの子供だい? 誘拐されて来たのか?」


「いえ、侯爵の娘で、天然痘にかかってから魔法が使えなくなって、そんな子は存在しちゃいけないので葬式まで出されてしまい、それからずっと地下牢暮らしで」


「うっ」


 事情聴取している騎士の方が泣いてしまい、惨めな実験動物に憐れみを示してくれた。


「普通、みんな一か月ぐらいで死ぬんですけど、私だけ死んでも生き帰るので生き残ってて…… 他に実験されてた沢山の子供はどうなりました? 私と一緒で殺されてましたか?」


 いいこと思いついた、と言う訳で、一緒に実験されてた子供が一杯いたことにする。


「なっ? 君以外にも被害者が?」


「みんな毎日泣いて暮らして、声を掛けて励まし合って生きて来たんですけど、実験に失敗したり、凄い魔獣を食わされて身体が弾けたり、魔物になったら始末されたんです」


 盛大にマヤって、失敗作は殺されたと言っておいた。


「孤児とかスラムの子はすぐ死んでしまって、でも魔術回路が壊れた私はいい実験台になったみたいで結構長持ちして、目的の「死なない兵士」は出来たんですけど、肝心の魔法が使えないので失敗作だそうです」


「死なない兵士? 君の服には刺し傷が大量にあったが、本当なのかね?」


 着替えを貰った後、証拠品に押収された、ボロで穴だらけで血塗れの古着と下着。


 半信半疑の騎士や従者に見せてやるのに、手近のペンを取って自分の左手の甲に力一杯突き立ててやり、掌も貫通させてから抜き取った。


「こんな風に、すぐ治って行きます」


 手を開いて見せてやると、槍の刺し傷と同じで、傷跡は蒸気を上げて急激に治り始めた。


「ああ、そんな、神よ……」


 嘘話を信じたのか、騎士が顔色を変え始め、他の従者に質問した。


「おいっ、地下牢の他の部屋はどうだった?」


「いえ、誰もいませんでした……」


 いないそうなのでマヤってみる。


「あっ、ああああっ、リタッ(そんな子いません)、コリンッ(そんな子いません)エリカ~~~ッ!(そんな子いません)」


 存在しない他の子供達の行く末を思い、机に突っ伏してオイオイ泣いてやると、事情聴取は中止された。


 気の毒そうに見て来る、青い顔した係員が牢屋に戻してくれたけど、何か泣いてた。



 もう夜だったけど、牢の中でも聞こえるぐらい大騒動で出撃準備。移送された子供達を救い出すために、目の色が変わってる聖騎士団大出動。


「緊急出動っ! 非番の者も起こせっ! 王宮にも通報して応援要請っ! 修道女会と聖女騎士団にもだっ! 町の番屋にも応援要請っ! 国家的犯罪でテロ準備行為を鎮圧するっ!」


「侯爵家全員を押さえるっ、飯焚きの使用人もメイドまで全員だっ、拷問官っ、忙しくなるぞっ、今夜中に吐かせて行方不明の子供達を救い出すっ!」


 事情聴取されたのが聖女騎士団なら、女同士なので下手な嘘がバレてたかもしれないけど、男の前で「泣いている子供(メスガキ)」をやると、ガッツリ嘘が通った。



「出動っ! 出動っ! 聖騎士団っ、気合入れろっ!」


「正義の戦いだっ! 神に反する者どもに鉄槌を下すっ!」


「抵抗する侯爵の私兵は皆殺しにしろっ! 今まで殺されて来た子供達の弔い合戦だっ!」


「おおっ、おおっ、おおーーーーっ!」


「これより死地に赴く聖騎士団に神のお恵みを、聖なる祝福(バフ)」


 もう夜も更けてるのに近所迷惑。外の方で物凄い気合が入った掛け声と一緒に、馬が走り出して馬車に乗った一団もガッシャンガッシャン鳴らして出て行った。


 うん、結構死んだな。クソ親父もクソババアも死ね。



 牢屋で暫く寝ていると、何軒か向こうの牢では誰か拷問でも受けてるのか、夜なのにドッカンドッカン騒がしかった。


「子供達をどこに隠したっ? 証言では常時十人以上の子供が地下牢で実験されていたと聞いているっ、死人が増えすぎて私達騎士団を呼ばないと解決しない事態になったから、その前に子供を移送して隠したなっ? 言えっ!」


「し、知りませんっ、ガフッ、そんな子供はおりませんっ、おげええっ」


「今更そんな嘘が通ると思うかっ? 浄化の炎を出すアンデッドだと? 一体どれだけ残虐な実験をして来たんだっ?」


 うん、クソ親父他屋敷の者、全員悪魔崇拝者でアンデッド制作実験してた悪魔だと確定。


「侯爵、貴方はあの子「達」に酷い事をしましたね? もう聞いております。きっと明日には修道院長から正教会を破門され、処刑宣告が出るでしょう。諦めて移送した子供の行方を言ってください」


「そんな子はおりませぬ、あれは私の娘でして……」


「自分の娘をあのような牢屋に入れてっ、実験動物にする親がいてたまるものかっ!」


 さっきの涙脆い騎士のおじさんが、クソ親父を尋問してくれているようだ。


「いえ、あれは妻の不逞の子でして」


「もう嘘はいらんっ、地下に捕らわれて実験された子供達を、一体どこに移送したっ?」


「ですからそんな者はおりませんっ、あの化け物の嘘ですっ」


 時間が経つごとに子供の行方が分からなくなるからと、急いで親父までしょっ引いて来て、侍従とか使用人とかメイドとか、いる奴全員王宮とか番屋の衛兵と共同で引っ張って来て、全員拷問して事情聴取中。プゲラ。


 そんな子供存在しないのに大笑い海水浴場。



 地下担当のクソ馬鹿は、外に来たのは着火してやったけど、地下の事情を知ってる奴は少ない。


 牢番が生き残ってたら、あらゆる拷問を加えて早急に自白させてくれるだろう、ワタシグッジョブ。


「ああっ、うわああああああ~~~~っ!」


 きっと屋敷の連中は、生爪はがされて、真っ赤になった焼きごてを当てられて、歯をペンチで抜かれてる。


 治療呪文が効く範囲でやり放題、治してからもう一回、ふりだしにもどる、所まで可能。


 地下牢でもしょっちゅうやってたから、その手の事はよく知ってる。


 地下の住人は続々と新入りが来て、大体一か月で病気になって死んで、外に運ばれて何処かに埋められていたから、生活跡も骨もタップリ残ってるだろう。



 入牢翌日、ボサボサの髪の毛を短く切って貰い、髪の毛なら実験しても良いだろうと軽く燃やしてみると、すぐに白い炎に入れ替わって燃え尽きずに、延々燃え続けた。


「せ、聖遺物……」


 ごく稀に聖人や聖女の髪や体はこうなるらしい。


 即座に鑑定士で魔法士で検査官が呼ばれて調査開始。


「修道士会の検査官で魔法士です、君を少し調べさせて欲しい」


「はい」


「レベル90? 有り得ない、王家や諸侯のお抱え勇士レベル、勇者を名乗れるぐらいだ。一体どんな修行を?」


「天然痘で魔法が使えなくなってからは、8歳からずっと地下牢で、外にも出して貰ってません。変な魔物や魔獣食べさせられたからだと思います」


 安物の臭い肉が出たから、あれが魔物の肉だろう。普通の人は何ともないのに、感度が3000倍ぐらいあって、私だけレベルアップしたかもしれない。


「それだけでレベルが上がる訳が? ん? 君は何か結界を展開しているね。魔法の類は使用停止されてるけど、スキルに神聖結界がある、これで周囲の悪しき者を滅ぼして来たはずだ」


 身に覚えがあり過ぎるので困る。あれってスキルだったんか、それで使用禁止になってない。


「最初はダニとかシラミが出なくなって、次に牢の中のオトモダチ、ゴキブリとかネズミも出なくなって、どんどん範囲が広がって、屋敷全体、貴族街、平民街、今は王都の半分ぐらいになってます」


「そ、そんなに…… 最近王都ではアンデッドやヴァンパイアの被害が激減している、それを全部君一人で……」


「はあ、そうみたいです」


 たまに引っかかって弾けて潰れるデカイのって、アンデッドとかヴァンパイアだったんだ。


 流石にレベルが上がり過ぎると、次までの必要経験値が高すぎて結構な時間が掛かるようになった。


「他にも、自動回復のスキルがある、スキル浄化の炎? スキル蘇生? スキル不死? なんだこれは」


 ああ、あれ全部スキルだったんだ、それも鑑定士でも知らないようなレアスキル。


 今まで何回死んでも蘇生して自動回復して、刺し殺されても生き帰って、スキルレベル上がったのか不死が着いたんだろう。


「修道士会での情報は秘匿を許されていません、この件は王宮にも報告しなければなりません」


「はあ……」


 他にも傷を付けてもすぐ修復されるのも見せ、血のサンプルとか髪の毛も持って帰って調査終了。


 ほんの数日平和な日が続いた。水桶にも入って数年分の垢を落として石鹸で頭も洗った。


 食糧事情が大幅に改善されて、最初の何食かは胃が受け付けなかったが、すぐにモリモリ食ってブリブリ出せるようになった。



 そんな日もすぐに終わり、涙脆い騎士のおじさんが青い顔で入って来た。


「すまない、悪い知らせだ……」


「はい」


「侯爵の奴は、裏取引でもしたようで、正教会からも破門されず、修道院長からの処刑宣告も出なかった。多分、君の製造方法を王家や正教会に提出することで、不死や蘇生が欲しい年寄りが恩赦を与えた」


「そうでしたか」


「それと長年の聖教会への献身と人材供給の功績で、免罪の書状を持っていたから、それを行使して今回の犯罪も無かった事にされた」


「はあ、そうですか」


 クソ親父が処刑されなかったのは残念だが、また殺す機会もあるだろう。


「それと、君が殺してしまった衛兵や使用人達、正当防衛が認められず、数が多すぎると言う事で、君の処刑が決まった」


「はあ、そうですか」


 まあ、精一杯頑張ったし、衛兵とか使用人とか恩赦やら減刑が出る前に、聖騎士団が結構殺してくれたから良しとしよう。


「君は悔しくないのかっ? アンデッドに改造され、その実行犯である侯爵は生き残り、犠牲者の君が殺されるんだぞ?」


「まあ大丈夫です、普通の方法では死にませんし」


「騎士団の中でも、徹底抗戦するか、君を連れて何処かに逃がすよう話し合いをしている。捕縛しようと国の衛兵が来るだろうから、いつでも逃げられるよう心づもりして置いてくれ」


 う~ん、嘘で騙して騎士団まで討ち取られるのは気の毒だ、どっかに逃がして貰うぐらいにしておこう。



 早速その日の夜、牢屋のドアを叩かれて目が覚めた。


「逃げるぞっ、行き先は正教会本部がある聖国サレンディール、そこでだめなら船で国外まで送る、正教会繋がりで受け入れてくれるところを探すっ」


 私の人生波乱万丈。外国か~? 言葉通じないのは困るなあ?


 この人達は善意だけど、受け入れ先は白魔法使えるアンデッドの、制作レシピが欲しいだけなんじゃ?


 だとしたら今までは拷問までは無かったのに、「アニは身体は治せても、痛みを消せないのはすぐに分かったよ」とか、ゲスミンの顔で言われそう。


 今度は手足切り落とされて、再生するかどうか実験されるんだな。


「いえ、もういいです、そこまでして頂かなくても」


「生きるのを諦めるなっ、もっと自分を大切にするんだっ」


 うわあ、おじさんマジ泣きしてくれてるよ、いい人っているんだなあ。


 でも行き先王国でも聖国でもどっちも地獄じゃん、まあ、旅行気分で出ますか?



 馬車に食料とか色々詰め込んで、逃走準備してくれてる聖騎士団。


 それやったら多分捕まるよ、取引に応じた奴らって、実験体と製造レシピが欲しいんだから、逃がすと良くないことが起こる。


「聖騎士団の諸君、こんな夜中にどこに行くのかな? 旅姿で保存食まで持って、聖国辺りまでご旅行かな?」


 私達は売られた。修道院長とか裏取引に応じた奴らに売られた。


 多分、もう一回死んだことにされて、実験と拷問三昧の日が始まる。


 多分全身拘束されて鉄の箱にしまわれちゃうんだ、鉄球とか当てられて、どれぐらいの速度までベクター?で防げるか計測されちゃうんだ。


 何メートルまで首チョンパされるか、着火できるか測られちゃうんだ。

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