第48話マルフード領内㊴初めての冒険者ギルド

「さて、これで話は終わりだ。君はソランジュと同じにおいがする。厄介事を次々と持ち込んで私の睡眠を邪魔するやつのにおいだ。君に関わることが今後ないと願うよ。さぁおかえりはあちらからだ。エイミーくんは君のことをずっと心配していたよ。安心させてあげたまえ。」


司祭は野良猫を追い払うようにシッシッと手を振る。


「じゃあね、片思いザンネン司祭様。」


後ろで何か怒鳴り声が聞こえるような気がするなぁ。さっさと母親と宿に帰ろう。母親と手を繋いで教会を後にした。中にいた時も思ったけどでかい建物だ。出来るだけお世話にならないようにしよう。


自分が個人で討伐した魔物に関してはいちおう保管してあるそうだ。合同で討伐した魔物についてはトビ達と話し合わなければいけないから冒険者ギルドに顔を出すように伝えられたらしい。全く息つく暇もないな。

宿に着くまでの間通行人からジロジロ見られた。居心地が悪い。母親曰く自分がかなりの量の魔物を討伐したことがマルフードに広がっているらしい。本気にしないやつがほとんどだろうな。

「あ!リッカおかえり!」

「帰ったな、今日はなんでも好きなもん食わせてやるよ。」

赤毛給仕とオーナーに声をかけられた。


「肉、肉が食べたい。あと甘いもの。」


「任せとけ!マルフードを救ってくれた英雄様にご馳走してやるよ。」


うむ、良きにはからえ。やはり戦いの後の飯はいいな。あっ!そうだ。

「ねぇ、これ目玉焼きに「リッカ!ダメよ!もう!」


母親に怒られた。ちっ、卵の話をするべきじゃなかったな。自分が拾ったものはちゃんと育てろとド正論をかまされた。目玉焼き…


「ん?よくわからんが目玉焼きが食べたいのか?のせてやるから拗ねるなよ。」

オーナーに適当に頭を撫でられる。やっぱおっさんはダメだな。撫で方が雑すぎる。どこぞのイケメンエルフを見習…いや見習うな。あいつの事は記憶の彼方に葬りさろう。


母親を宿に残し冒険者ギルドに向かった。今回狩った魔物はかなり多いからいい収入になるはずだ。途中でミートパイを買ったがすぐに食べてしまった。夜ご飯の前のおやつだ。

冒険者ギルドに入るとおっさん達が昼間っから飲んでいた。酒臭い…。とりあえず受付に行って今回の報酬の話をしよう。受付には若い女性が立っている。

「今回の件スタンピードの魔物を保管して貰ってるリッカです。どこにありますか?」


「はぁー、またか。黒色の目と髪でリッカって名乗る子供がスタンピードの討伐した魔物を出せっていうイタズラ多いのよ。子供が討伐したなんてでっち上げに決まってるじゃない。衛兵に突き出さないでおいてあげるからさっさと帰りなさい。お嬢ちゃんみたいな子がギガンテスを倒せる訳ないじゃない。私忙しいの。」


この女に態度悪いな。商業ギルドのカードを見せる。これは身分証明証になってるから本人かすぐわかるだろう。

「なによこれ、商業ギルドのカードか。ってこれ噂の本人じゃない!いやいや子どもが討伐したなんて嘘よね?でも倉庫いっぱいに魔物が保管されてるし…。」


「あんたの独り言はどうでもいいから討伐した魔物だして。」


「…ギルド長を呼んで来るから待ってなさい。」


少しすると強面で顔にキズがあるデカいスキンヘッドが現れた。子どもが見たら泣き出しそうな風貌だ。

「お前がリッカか。重症だと聞いていたから来るのはもう少しあとだと思っていた。奥に部屋がある、着いてこい。」


スキンヘッドに大人しく着いていく。部屋にはいると反対側のソファに座るように言われた。

「受付がすまなかったな。お前のしたことはでっち上げだと思い込んでいてな。そう思っている人間は半分くらいいる。で、討伐した魔物の受け渡しについてだがこのまま冒険者ギルドに売らないか?本来ならギルド員以外が売ることは出来ない。しかし今回は例外的に売ることを許可できる。おまえがいつも取引しているのはクリークのところだろう?あいつのところは個人経営だから全て買い取ることは不可能だ。全て売ろうと思ったら莫大な時間がかかる。冒険者ギルドなら今すぐ現金で支払い可能だ。どうだ?」


スキンヘッドが言っていること嘘ではないだろう。クリークが全て買い取ることことは無理だと思う。だからこそウォータードラゴンの時はオークションに出したわけだしね。少しづつ売るのは面倒くさそう。

「全部でいくらになるの?」


「肉、素材合わせて白金貨2枚だ。詳しい査定額はこっちに書いてある。ギガンテスはB級パーティーとの共同討伐だからあいつらと話し合ってどうするか決めろ。それとスタンピードの危険手当が領主様から支給されてる。お前は金貨500枚だ。ここまでで何か質問はあるか?」


全部で金貨2,500枚か。ウォータードラゴンの金額とあんまり変わらないが大金であることは変わらない。

「思ったより儲からなかった。」


「ははは!そりゃ状態がわるいものが多かったからなぁ。バラバラだったのも少なくない。これでも高く見積もった方だよ。お前には冒険者ギルドに入れる歳になったらぜひ加入して欲しいからなぁ。」

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