第46話マルフード領内㊲初めての教会
目を開けると白い天井が見えた。どこだここ?体の傷は全て治っていた。シンプルな内装の部屋にいるようだ。簡素な服を着ている。オオコウモリのマントから誰かが着替えさせたのだろう。
?手に卵を握ったまま寝ていたようだ。買ったばかりの短剣の代わりにこいつがでてきた。結局あの短剣はなんだったんだろう。吸血の刃を問い詰めたら分かるかな?
とりあえず今の状況を把握するべくベッドからおりて扉を開く。
廊下に出てしばらく歩くとデカい扉を見つけた。扉の向こうから人の気配がするな。気配遮断を使いながら扉の向こうに行こうとしてマナを全身に巡らせようとしたらどこからかマナが吸われたせいで魔法を使う事が出来なかった。身体強化やバリアも同様に使う事が出来なかった。今の状態で誰かに襲われたら抵抗できない。慎重に行かなくてはいけない。
できるだけ気配を殺して扉を開くとすぐに長椅子の後ろに隠れた。かすかに話し声が聞こえる。
「〜ですか〜しか〜」
「い〜大丈夫〜」
片方の声は聞き覚えがある。ちらっと覗くとやはり片方は母親だった。もう1人は司祭のようだ。しまったここは教会か。まずいところに担ぎ込まれたようだ。
「おっ!子猫発見!」
襟を後ろから掴まれ捕獲された猫のようになる。後ろを見ると修道女の格好をした女が自分を掴んでいる。金髪でお胸の豊かな女だ。全く気配を感じなかったぞなんなんだこいつは。
女の声に反応して母親と司祭がこちらに気づいたようで近づいてきた。
「ソランジュ!その子供を離しなさい!」
「え〜こっそり入って来て様子を伺ってるとか怪しいじゃない!チョロチョロ子猫みたいにさ。ねぇ君は何してたの〜?」
「別に何もしてない。どこか分からなかったか警戒してただけ。」
なおも女はこちらを見つめてくる。美しい女だがそれを上回るおそろしさがある。目にハイライトが宿ってないぞ。
女と睨み合っていると司祭が女から自分を奪い取って母親に渡した。母親が自分のことを抱きしめ頭をなでる。寂しかったか?ぞんぶんに撫でていいぞ。
「リッカ、リッカ、リッカ…お帰りなさい。生きて帰ってきてくれてありがとう。」
「お腹すいた。クッキー食べたい。」
「ふふ、そうね。前買ったクッキーは古くなってしまったから新しいのを買いましょう。何でも買ってあげるわ。クッキー以外にもなんでもね。」
ふむ、自分はどれほど眠っていたのだろうか?クッキーはクリークに買いに行かせようかな。
「目覚めたばかりで悪いがこちらの話をら聞いてもらっていいか?リッカくん?」
司祭が話しかけてきた。目の下に大きなクマを飼っている細身の男だ。
「まずは自己紹介をしよう、私はドミニク。そこの聖女ソランジュのお目付け役だ。一時的に聖教会からマルフードに派遣された者だ。君がB級パーティーとギガンテスを討伐してから今日で5日だ。君は教会に運び込まれて治療を受けた。あぁ治療費はもう貰ってあるから気にしないでくれ。君にはいくつか聞きたいことがある。母君と積もる話もあるだろうが今は我慢して欲しい。あちらの小部屋で2人で話そう。」
「え!ドミニク!私は?私もこの子と話したい!ギガンテスのこととか聞きたいよ〜。それにこの子強そうだし!」
「ダメだ。お前はしごとがあるだろう?さぼってないで働いてこい。」
「ちぇ〜、またねリッカ!」
ここで逃げると後々めんどうなことになりそうだ。おとなしく司祭について行こう。
司祭と2人きりで小部屋にはいる。母親は長椅子で待っているそうだ。…この男がプリティエンジェルな自分によからぬ事をしてこようとしても今は対向手段がない。もしもの時は急所であるアソコを…「待ってくれ君何か恐ろしいことを考えていないかい?」別になんでもないさ。
「ふぅ、いきなりこんな小部屋に連れてきて申し訳ない。ここには盗聴防止の魔法が付与されている。他のものには聞かせたくない内容だからね。」
盗聴防止か。それ以前に魔法自体が使えないんだが。
「まず初めに私は鑑定魔法が使える。だから君の使える属性や恩恵も知っている。正直に言って君のステータスは異常だ。このことを聖教会に報告すれば君は教会に入ることを強要されるし拒めば討伐対象の悪魔だなんだと理由を付けて殺されるだろう。わたしはそんなことをしたくない。」
「なんで?司祭様は教会の人間でしょ?」
「教会だって一枚岩じゃないさ。私は自分で志願して教会に入信したが無理矢理入信させられた者も中にはいる。狂信的で人間至上主義もいるが私にはどうでもいいことだ。神がいようといまいと私には関係ない。話しを戻すぞ、君は教会に入りたいか?」
「絶対やだ。」
「わかった。それなら君にいくつかアドバイスをしておこう。1つ目に教会関係者に近づかないことだ。みんながみんな鑑定を使える訳じゃないが大きい教会には必ず鑑定持ちがいて教会に入るもの全てをチェックしている。2つ目に人前で神聖魔法を使わないことだ。君がマルフードで神聖魔法を使ったことはわかっている。どうやって使えるようになったのかは聞かない。だが使うならバレないようにしなさい。3つ目に神聖大国サンクトゥスに近寄らないことをおすすめする。これは言わなくてもわかるな?あそこに行けば入信するか死ぬかしかない。取り敢えず言いたいことは異常だ。なにか質問はあるか?」
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更新が遅くなってすみません。
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