第45話マルフード領内㊱生死の分け目
ギガンテスの後ろ側にいくと案の定怪我をしていた。なにかにズタズタにされたようでこれで立つのは無理だな。吸血の刃を抜いて構える。ギガンテスはトビ達の地味な嫌がらせにイラついて腕をブンブン振り回している。1発当たればアウトだな。
気配遮断と風鳥を自分にかける。準備は整った。音もなくギガンテスの傷がいちばん深いところを狙う。くるぶし付近だ。
風を纏い一気にそこを狙う。さしずめ人間大砲だな。
《ギャァァァァァ!!!》
命中した。自分自身もギガンテスの傷の中に埋まってしまったが大量の血が流れ出してきて押し出された。うぇ飲んじゃった。吸血の刃が赤く妖しい光を放っている。なにかにあったようだが今は構っている暇はない。
ギガンテスは自分の足を刺した犯人を見つけたようだ。凄まじい速さで両腕を伸ばしてくる。この距離ではこいつが移動できる範囲外に移動するのは無理だ。逃げれないなら戦うしかない。
「“拘束 ”」
これはナザールに教えてもらった魔法だ。少しの間対象を拘束することができる。拘束できる時間はマナの量に依存するそうだ。人間くらいの大きさの対象なら何時間でも拘束できるがこいつはせいぜい30秒くらいだろう。
生死を分ける30秒だ。ひたすら傷を抉る。血が吹き出してきて邪魔をする。吸血の刃がガタガタしだした。そこか!
ギガンテスのアキレス腱を切った。あたりは血の海だ。
《ギ、ギャァァァァァ!!》
拘束がきれたからギガンテスが絶叫した。最後の力を振り絞って腕を振り回した。凄まじい風のせいで吹っ飛ばされる。風で飛ばされただけなのに体全身が痛い。
「“エクスプローションウィング ”」
飛ばされながらやつに最後のこうげきを仕掛ける。これでダメなら打つ手がもうない。ギガンテスに命中して爆発を起こした後に体が切り刻まれ断末魔をあげ地面にたおれた。自分の体はニコルにキャッチされた。
「生きてるかい!?ダメだ反応がない!誰ポーション持ってない?」
「低級ポーションしか残ってない!とりあえず飲ませてみろ!」
なにかクソまずい物を飲まされた。さっきの上級マナポーションよりまずい。1週間洗ってないおっさんの靴下の匂いと苦いのに甘くて辛い。
「くそ!吐き出すな!全部飲め!!」
うぇ変なの飲んじゃった。さっきより楽になったな。目を開けるとトビとニコルが目に入る。トビには口を塞がれている。
「生きてたな!よくやったな!!」
「君不死身なのかい?ギガンテスに吹っ飛ばされて生きてるなんてホントは獣人とか?」
正真正銘人族だぞ。自分なら獣人でもプリチーだけどな。何とか起き上がる。左腕が動かないし息をする度に肋骨が軋む。全身が痛い。
「あいつは?死んだ?」
「多分な。俺らもマナがすっからかんだ。」
終わったな。今回も何とか生き残った。ぼろぼろだけど。
ん?マジックボックスの中身が騒がしい。オークションで買った短剣が騒いでいるようだ。こいつもやっぱり意思持ちか…。マジックボックスから取り出すとひとりでにギガンテスの方に飛んで行った。ついてこいと言っているようだ。
「ねぇ、あいつのところに連れてって。」
「それじゃ僕が連れていくよ。よっと、君軽いね〜もっと食べなきゃ大きくなれないよ?」
いっぱい食べてるぞ。そのうちでかくなるさ。
短剣はギガンテスの目玉の上で待っていた。ここを刺せと言っているようだ。目玉を刺すってえぐいような…。
短剣を手に取り目玉に向けて振り下ろす。突如青白い柔らかな光があたりを包む。目を開けると持っていたはずの短剣は消え手のひらサイズの卵を持っていた。なんだこれ。
「なんだったんだ今のは…。ん?なんだいそれは?」
「卵?何の卵かわかる?」
「さぁ?それよりすることが終わったなら帰ろう。今魔物に襲われたら全滅するよ。」
それもそうだな。マルフードに帰ろう。
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