第40話マルフード領内㉛ 初めてのオークション

昨日狩ったリトルホークをクリークに売りに来た。

「状態がいいな。外傷が全くない首を折ったのか。理想的な狩りの形だ。誰に教わったんだ?」

…綺麗なイケメンゴリラかな。とうぶん思い出したくない。

「誰でもいいでしょ。いくらになる?」


「E級のリトルホークが45匹うち雄が27匹だな。全部で金貨22枚と銀貨5枚だ。」


そこそこいい稼ぎになった。市場に何か買いに行こうかな。クリークが報酬を用意しながら「そういえばお前商業ギルドに行ってないだろ?顔出しとけよ。」と言われる。忘れてた。

「今日中に行ってくる。じゃあね。」


商業ギルドの受付の女性に声をかける。


「オークションの件できました。リッカです。」


「リッカ様ですね。この度はオークションへの出品ありがとうございます。こちらの資料に目を通してください。」


資料にはいくつかの注意事項や手数料、当日出品予定のものが書いてある。

・オークション側は出品して売れた商品から1割手数料として引く。

・オークション当日はドレスコードがある。清潔かつ場にふさわしい格好で来ること。

・オークション内ら武器の携帯禁止、魔法の使用禁止(自らへの防御魔法は可)

ほかもずらずら書いてあるがだいじなのはこんなところかな。

「オークションには珍しいものがおおく出品されますので是非ご参加ください。」


オークションは商業ギルドの後ろの建物であるらしい。思ったより小さい所でするんだな。

オークションまで後1週間ほどだ。服に関しては母親が作っているものがもうすぐできるらしいからそれでいいだろう。


それから1週間の間魔物を狩って過ごした。金貨50枚くらいたまった。現在の全財産は金貨200枚くらいだ。

オークション当日に母親から服を貰った。黒のシャツとパンツがピタッと体に吸い付いてくる。黒のマントはオオコウモリだ。体が大きくなっても使えるように成長に合わせて服が伸びるそうだ。高いだけはあるな。

母親の服は白のもふもふがついたワンピースコートだ。どこぞの貴族のご令嬢が着てそうだ。

今回は自分1人だけでオークションに行くことにした。クリークも来るらしいから母親に合わせたくない。絶対口説いてくるからだ。


商業ギルドの裏にあるオークション会場の辺りは高そうな馬車が沢山停めてある。貴族や大商人が入っていくのが見える。

「おーい、リッカ!こっちだ。」


クリークを見つけた。いつもは適当にながしている髪をオールバックにして茶色のスーツをきている。いつもより3割増しくらいでかっこよく見える。やはり連れてこなくて良かったな。

「なかなか決まってるじゃねぇか!お、そのマントはウチのだな。エイミーさんはいい仕事するな。で、エイミーはどこだ?いつも美人だが今日はもっと素敵だろうなぁ。」


「あんたみたいなのがおると思ったから連れてこなかった。ほら行くよ。」


「エイミーさん来てないのか…。」


しょんぼりすんなおっさん。

会場の入口に行くとクリークが懐から出したチケットを従業員に渡していた。自分たちが行くのは2階のVIP席だ。

「いきなりVIP席?」


「普通は無理だ。俺だってここに入るのは初めてだぞ。お前が出品するウォータードラゴンはB級とは言えドラゴン種だからな。ドラゴン種は高くで売れるからこんかいは特別なんだろうさ。」


へードラゴン種ってそんなに高いのか。いくらになるかな?席について少しすると会場が暗くなりハット帽を被ったちょび髭にスポットライトが当たる。

「紳士淑女の皆様、本日は商業ギルド主催の本オークションにお越しいただきありがとうございます。早速オークションを開始したいと思います。素敵なお時間をお過ごしください!」


ドレスを着た女性職員が商品を運んできた。

「先ず最初はこちら〜〜」次々と商品が出てきては売れて行く。欲しいものがあったら手を挙げて値段を叫ぶ。いちばん高い値段で落札だ。

「お次はとある迷宮から冒険者が持ち帰ったか短剣です。刀身から抜くことが出来ず戦闘には使用出来ませんが装飾の美しさから鑑賞用に売ってつけです!金貨15枚からのスタートです!」

?マジックボックスから何か違和感を感じる。吸血の刃がなにかを訴えかけるように震えるのだ。これを買った方がいいのか?…またお前のように意思を持った遺物とかじゃないだろうな?まぁこいつが主張するなら買うか。ほかのやつらが値段を釣り上げている。今は金貨25枚か。

「金貨35枚」


「金貨35枚が出ました!他にはいらっしゃいませんか!」


「金貨60枚での落札となります!」

粘る奴がいたせいで金貨60枚の買い物をしてしまった。明日からまた頑張ろう。

「お前金持ってんなぁー」


「あんたのとこでおろした金だよ。」


「はは、確かにそうだな。お前のおかげで俺も稼がしてもらってるよ。そういえばなんであれ買ったんだ?抜けないんだろ?」


「何となく。」

クリークが頭を傾げている。おっさんがしても可愛くないぞ。もちろん吸血の刃が主張してきたのが1番の理由だが落札した短剣は鑑定してもなにも分からなかったのだ。何かあるのは間違いない。

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