第30話マルフード領内㉑

魔法契約書のページをめくる。


〇ウォンテ家の人間は今回の件でエイミーや、リッカに罰を与えない。また今後この国の法律を犯さない限り不当に罰さない。

〇ウォンテ家の人間はエイミーがジェラールの元恋人であると公言しないまたジェラールがリッカの父親であることも公言しない

〇いかなる理由があろうともリッカをウォンテ家の後継者と認めない


異論はない。この家には一切かかわり合いを持ちたくない。それはウォンテ家も同じだろう。


「あの、ここにリッカの仕事の邪魔をしないというのを加えてください。」


「それは魔物の討伐のことを言っているのですか?」


「はい。少しでも危険を減らしたいのです。」


アマリアが目配せして執事が書き加える。


「これくらいでいいかな?そっちが何もしてこなければ自分も何もしない。お互いに関わりたくないんだからさ。」


「そうですわね。お互いにね。」


自分と母親が1枚目の契約書にサインをしてアマリアが2枚目の契約書にサインしようとした時横から契約書にが抜き取られる。


「ア、アマリア!もう君の態度には我慢できない!離婚だ!こんな契約書は無効だ!」


「はぁ、また離婚話ですか?何かあればあなたは離婚だ離婚だと言いますね。他に言うことは無いのですか?それにわたくしと離婚して領をどうおさめていくのですか?細かい仕事の確認はわたくしがしているのですよ?」


男とアマリアが言い争っていると扉が乱暴に開けられた。真っ赤な髪の男児…なんだごみか。


「お父様!僕もその契約書には反対です!」


「ジュード!腹違いではあるがリッカのことをそこまで思ってくれているのだな!」


男は感激したかのような顔をする。こいつがそんなこと思うわけないだろ。


「?僕はそこの平民に罰を与えなくてはいけません。領主の息子である僕に膝をつかせたのです。不敬罪です!そいつらはすぐ捕まるのだから契約書にサインする必要はないのです!」


得意げな顔で鼻息を荒くしている。牛みたいだ。いや牛に失礼だな牛は貴重な食料だがこいつは何の役にも立たないごみだ。


「はぁー、不敬罪は5年前に撤廃されたでしょう?授業でしたはずですよ。それに事の詳細はフィルマンから聞きました。先に暴力をふるったのはあなたでしょう?リッカは殺気をはなったそうですが正当防衛だったと判断させるでしょうね。」


「フィルマン、バベット2人を連れ出してちょうだい。」


男とごみは騎士たちに連行されていった。現領主様と未来の領主様があれで大丈夫か?アマリアは頭が痛そうだな。


「身内の恥を晒してしまいましたね。ジュードの言ったことは気にしないでください。これで魔法契約の完了ですわ。」


アマリアがサインをした後に2枚の契約書が光だし1枚にまとまった。初老の執事が手をかざすと契約書が2枚に分裂した。


「こちらは複製でございます。必ず保管をしてください。」


やっと終わった。これで帰れる。


「月の女神にいたそうですわね。出禁にならないようにしておきますわ。購入した商品は宿に届けさせますわ。」


「わかった。…大変だね。」


扉に目を向ける。旦那も子どももあれでは気苦労が耐えないだろう。


「ふふふ、覚悟をして嫁いで来ましたもの。耐えてみせますわ。」


イタズラをした子供のように笑う。強い女性だ。


「アマリア様。」


「なんでしょうエイミーさん」


「申し訳ありませんでした。」


「なぜあなたが謝るのですか?あなたが本当に知らなかったことは調べがついていますわ。」


「知らなければ婚約者がいる男性と付き合ってもいいということにはなりません。それにアマリア様はリッカを産み育てることを許してくれました。この子は私の1番の宝です。」


母親がアマリアに向かって頭を下げている。この人はこういうところはきっちりする人だ。


「…その子が賢いのはあなたの育てかたがよかったのですね。羨ましいわ。ジュードには弟がいます。あの子に適性がなければ弟が領主になります。」


だから安心しろということだろうか?弟はまともにだといいな。


「私的に関わるつもりはありませんが仕事の依頼は受けていただけますか?魔物の討伐要請を出すことがありますから。もちろん報酬はお支払いします。」


「仕事ならね。」


満足のいく回答がだったようだ。


「もう帰る。」


今日は厄日だったな。宿に帰るか。




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