第28話マルフード領内⑲

ここから少し胸糞なヤツらが出てきます。ご注意ください。

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馬車のなかは居心地が悪い。母親と2人ならまだしも騎士たちやごみもいるのだ。広い馬車だが隣の人間との距離はゼロだ。


誰も一言も喋らない。さてどうやって脱出するか。まずこの馬車の中では無理だ。茶髪騎士がかなり警戒している。母親が傷つけられる可能性が高すぎる。


領主舘につくまで待機だ。それから考えよう。警戒をとかずにひたすら馬車に揺られる。


30分程して馬車が止まった。馬車を降りると立派な建物が見える。ここが領主館か。真面目騎士が後ろから軽く押して来るため前にすすむ。中はシンプルながら品が良い家具が置いてある。

ん?領主館に入った時に一瞬マナを吸われた。なんだなんだ?

自分と母親は客室と思われる一室に閉じ込められた。もちろん鍵をかけられた。


「痛いところはない?」


「大丈夫。それよりここからどうやって出るか考えなきゃ」


扉も窓も1つだけだ。窓に近づくと不思議な感覚に襲われる。少しだけマナが吸われた?まただこの屋敷自体になにかの魔法が付呪してあるのだろう。迂闊に動けば相手の思う壷か。

その後も部屋の中を探索するが特におかしいところはない。母親と椅子に座って待っているとドアが開いた。

黒髪の顔が整った男が真面目騎士を連れて現れた。その男は母親みて目を見開き口を震わせる。まるで何年も会っていなかった知り合いにあったような反応だ。


「名前や容姿から予想はついていたがエイミー、やはり君だったのか」


「ジェラール!?あなたがなぜここにいるの?死んだはずじゃなかったの?」


母親が今までにないくらい狼狽えて許容範囲範囲を超えたのかその場で気を失う。慌てて受け止めソファーに寝かす。何となくわかってきた。男は黒髪だ。この国で黒髪は余りいない。それに母親のこの態度を見るにこの男は…

「君がエイミーと僕の子供か」


男が自分を見ながらつぶやく。この男が父親か。この男は領主で既にごみ改めてジュードというあまり自分と年齢の変わらない息子がいる。つまり正妻がいるのだろう。ここまでくればわかる。母親が人様の旦那に手を出すとは思えないが騙された可能性だってある。

ふつふつと怒りが込み上げる。真面目騎士が剣に手をかける。


「領主様お下がりください。危険です」


「全て話せ。これは命令だ」


男と真面目騎士に圧をかける。男は顔を青ざめながら「わ、わかった全て話そう」と答える。


男は母親の様子を見る。

「すこし後で話そう。僕達は客間で待っているよ。メイドをここによこすから休むといい」


2人は部屋を出ていった。


ノックもなしに扉が雑にあけられた。メイドのようだか躾がなっていないな。こちらを睨みつけながらお茶が入った時におぼんを乱暴に机の上に置く。お茶は薄汚れていて少し臭う。

「ふん!卑しい庶子と愛人風情がジュード様にご迷惑をかけたらしいわね。これだから品がない人間は嫌いなのよ」


いやしい庶子と愛人風情か、騎士といいメイドといいここの人間は躾がなってない。

身体強化をかけて手錠を壊す。メイドが声を発するよりも早く顔面を殴りつける。母親が気絶してくれてよかった。これを見せずに済んだ。

メイドの顔の形が分からないくらい殴る。抵抗しているものの力の差がありすぎてどうにもならない。最後にメイドを扉に投げつける。

《ドンッ》


大きな音をたてて扉が壊れる。人が来る前にメイドの傷を癒す。これで証拠隠滅だ。扉は残念だったな。


人が集まってくる。1人豪華なドレスを着た女性が近づいてくる。これがあの男の正妻だな。


「何事ですか?」


よく通る声で訪ねてくる。


「この屋敷では臭い薄汚れたら紅茶を出すの?」


女は後ろのメイドに目配せをしてお盆ごと持ってこさせる。中身を確認して小さなため息をついた。女は倒れているメイドを見る。


「奥様!この子供は私を何度も殴りつけ投げ飛ばしたのです!!」


「どこにその証拠があるの?」


「え?」


「お前には殴りつけられたあとは見えないわね。それにお客様にこの様なものを出すメイドを雇っておく訳にはいかないわ」


女はメイドに手をかざす。メイドの足元から黒いモヤがではってくる。


「あぁぁぁぁぁっっ!!奥様申し訳ありません!!お許しください!!」


恐怖で顔が歪んでいる。


「なぜ私に許しを乞うのです。相手が違うでしょう?」


メイドが自分を見る。メイドの胸くらいまで黒いモヤは上がってきている。メイドは地面に頭を擦り許しを乞う。


「お許しください!私が間違っていました!」



「なんで許してやらなきゃいけないの」


残りは無視する。メイドが何喚いていたが数秒後すると動かなくなり完全にモヤに取り込まれた。モヤは砂のように崩れ落ち消えた。この魔法は闇魔法か?


あの男の正妻と向き合う。


「初めまして。わたくしはジェラール・ウォンテの妻であるアマリア・ウォンテです」

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