第25話マルフード領内⑯

どちらにせよ買取はここではウォータードラゴンを出すことはできない。全長15mくらいあるからな。


「お前のおかげで儲かりそうだ!今後ともご贔屓に!俺はクリークだ。」


「リッカ。ねぇここで出せないでかいヤツがあるんだけど買取できる?」


「ん?あそこで他にでかいヤツなんていたか?」


クリークが顎に手を当て考え込む。


「ウォータードラゴン」


「は?ウォータードラゴンはB級の魔物だぞ?ほ、ほんとか?」


「嘘つく意味が無い」


「ははっ!あの湖の主だぞ?すごいな!!」


目をギラギラさせて興奮している。確かに主にふさわしい力の強さを持っていた。


「しかしうちでは多分ウォータードラゴンの買取はできないな」


「なんで?」


「まず第一に金が出せない。ドラゴン種は小さなものでも金貨80枚程だ。大型になればなるほど取れる素材が多いから金額もはねあがる。見てみないと分からないがウォータードラゴンなら金貨300枚は確実だ」


おぉ!金貨300枚か。しかもそれ以上になる可能性がある。それだけあれば装備を整えることができるし嗜好品だって買うことが出来る。


「そこで俺から提案だ。お前商業ギルドに所属してるだろ?オークションに出さねぇか?鑑定を俺がして品質を保証する。そんでもってオークションにだす。鑑定料は今回はまけてやる。お前はより金貨を得る、俺はお前のような強いヤツとコネができる。悪くない条件だろ?」


ふむ、買取屋と関係をもてるのはいいことだ。オークションにも興味があるしこの案でいこう。


「わかった。それでいい」


「よし!とりあえずウォータードラゴンを見たいから後ろの工房にきてくれ。」


クリークの工房はかなりでかい。店の外装に比べてでかいように感じる。


「でかい」


「だろ?自慢の工房だ。付呪で空間魔法をかけてるから外から見るよりでかいんだよ」


自慢げに笑っている。ここならウォータードラゴンを出しても良さそうだ。マジックボックスから取り出す。やっぱりでかい。


「首を一撃か、いやその前に何かで殴ったな」


クリークはブツブツ言いながらウォータードラゴンの体を触っている。


「解体料はオークションの報酬から引かれる。傷が少ないからかなり高値で売れるとおもうぞ。」


一撃で仕留められたのはこいつのおかげだな。短剣をひとなでする。さおになおすとまた抜けなくなった。やはり血をこいつにつけることが抜く条件なのだろう。


商業ギルドへの連絡など基本的な段取りはクリークがする。商品を出すのは自分だからオークション開催前日までに1度商業ギルドに顔を出すように言われた。オークションは2週間後だ。


工房から出てきた。母親はまだ黒い皮を見ている。そんなに気になるのか。


「ねぇあれいくら?」


「あれは吸血鬼の眷属のオオコウモリの翼だ。汚れや水を弾くしそこら辺の鎧より耐久性がある。なんせC級の魔物だからな。あの大きさで金貨45枚だ。」


びっくりのお値段だ。まぁC級の魔物ならそれくらいするか。金に余裕はあるし買ってもいいな。


「いるの?買えるけど」


「リッカの新しい服を作るのに使えたらなと思ったのよ。でも値段がねぇ。」


ふぅと困ったようなため息をつく。自分の隣のやつが食い入るように母親を見つめている。おいおっさん人の母親をなんて目で見てんだ。クリークは母親に近づきながら愛想良く

「いやぁ奥さんお目が高い!こいつはいい品ですよ。リッカに良くしていただいたからおやすくしますよ。」


「まぁ!本当ですか?」


「もちろんですよ。金貨40枚でどうですか?」


「金貨5枚も!いえでも手持ちがありませんし…」


「今回のリッカの報酬はかなりのものですよ。それがあれば「いいえ、大丈夫です。そのお金はリッカのものです。わたしが勝手に使っていいものではありませんから」


母親がキッパリとクリークに言い放つ。のんびりした雰囲気をもつ母親が言葉を被せて断ったことにクリークは少し驚いた顔をした。全く自分の服を作るためなのだろう?それなら別に問題は無い。


「これ買うから。横の毛皮はいくらするの?」


「こいつはC級の魔物のホワイトウルフだ。常に雪が降るラクナイ国でしか出現しない。この青みがかった美しい純白の毛皮は人気でな。汚れは弾くし頑丈だ。だが加工がかなり難しくてな職人泣かせだよ」


「加工には塩水に浸したアリアドネの糸を使います。すると皮自体が柔らかくなります。あとは職人の腕次第ですね」


母親が真剣な顔で言い放つ。職人の顔をしている。これを使って服を作ってみたいのだろう。


「で、いくらなの?」


「あ、あぁ。金貨50枚だ。」


「オオコウモリの皮も買うから80枚にまけて」


「おいおい、そんなことしてたら商売上がったりだよ」


「売れ残ってるんでしょ?それにまた魔物をここにおろすから」


「はぁ〜、しっかりしたやつだ。またうちの店でおろしてくれよ?」


念押しされた。任せておけ。


「買ったからこれで自分の服作ったら?母さん自身の服はずっと作ってないでしょ?」


「リッカ…、ありがとう。頑張ってリッカの服をも作るわね」


母親の目が潤んでいる。これくらいで泣くなよ。これからは今まで以上にいい暮らしをする予定なのだから。

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