第23話マルフード領内⑭

「お!そうだこの貝殻お前に返しとくぜ」


おっさんが中身をくり抜いた貝殻を渡してくる。様々な素材になると言っていたな。


「魚も素材出てくる?」


「魚はこのヒゲだな錬金術の材料になるはずだ。どっちも値段はわからんがそれなりの値段がすると思うぞ」


ふむ、ここで貸しでも作っとくか。


「貝も魚も素材はおっさんにあげる。だから食事代今後泊まってる間はただにして。それから母さんはここでは働かないから。お針子の仕事したいって言ってた」


「食事代タダなのはいいがそれでも釣り合わないぞ?エイミーさんのことはわかった。残念だな…」


本気で残念そうか顔をするな。


「残りの代金は貸しにしとく。ここでの生活に慣れてないから何かあったら手助けして」


おっさんが感心したような顔で見てくる。


「お前頭いいなぁ。よし!わかった!何かあったらできる限り便宜を図ってやるよ。それと!おれをおっさんって呼ぶな!オーナーと呼べ」


「食事楽しみにしてるよ、オーナー」


母親が待つ席に戻る。


「機嫌が良さそうね?いいことでもあったの?」


母親がニコニコしながら聞いてくる。今日の稼ぎはかなり期待できる。明日が楽しみだ。それに今日の食事はいい食材をつかった物だ。頑張って戦ったかいがあるというものだ。


「今日のご飯はきっと美味しいから」


夕食が来る間母親に今日あったことを簡単に話す。もちろん戦闘部分は避けてだ。そうしているとオーナー直々に料理を持ってきた。


「へいお待ち!貝の酒蒸しと魚ムニエルオレンジソースぞえだ」


来たな!見た目がかなり豪華だ。嗅覚を刺激するかおりが告げている。これはいい美味いと。


「まぁ!美味しそう!」


「食べよ」


まずは貝の酒蒸しを1口食べる。これは白ワインを使っているな。白ワイン自体の善し悪しは分からないが貝から旨みが溢れてくる。前世で食べていた貝よりずっと美味い。

次は魚だ。ソースを付けずに1口。白身魚特有の淡白な味だが臭みが全くない。ハーブなどは使っていない。この魚自体が臭くないのだ。次はオレンジソースを付ける。オレンジの甘みと魚の淡白な味が合わさっている。

お貴族様はこんなうまいものを食べているのか。


夢中で食べる。こんなうまいものは初めて食べた。母親がコチラを見てこまったかおで笑いながら「付いてるわよ」と言ってハンカチで口を拭いてくる。

こちらのことなどきにせずもっと食べろ。


貝1つはそれなりに大きいし魚は30cmないくらいだ。母親は満腹なようだ。自分はまだ足りていない。腹7分だな。ただ今日はもう疲れた。早くベッドで寝たい。


表情を変えたつもりはないが母親が自分を抱いて移動する。たまには誰かに運ばれるのも悪くない。まわりのおっさん達から「おねむか?」とか「お子様だな!」とか言われる。


「まだ子供だからいいんだよ。羨ましいだろ?」と言い返しておく。おっさん達の悔しそうな顔が見れて良かった。今日はぐっすり眠れそうだ。


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