第22話マルフード領内⑬

先程の戦闘で服がボロボロだ。新しく新調するか。ただでさえ子供なのだ。ぼろい格好をしていては買取の時にさらに舐められる。母親に作ってもらうのもいいな。


そういえばさっきの戦いでいくつか気になったことがある。1つ目は自分には風属性の才能があるということだ。これがなければ負けていた。連続してるマナを消費し続ける代わりに風を纏って信じられない程のスピードが出た。

早すぎて飛んでいるようにも思えたな。あれは“風鳥(カザトリ)”と名付けよう。これで光・神聖・風・特殊が使えることがわかった。教会で鑑定する以外にカンタンに属性が分かればいいのだが。

もうひとつの気になることはこの剣だ。あの戦闘中に突然抜けたのだ。こいつが震え出したところから考えると自分がダメージをおったからもしくは血がついたからだろう。ためしに親指を噛んで血を出しこいつに擦り付ける。

…何も起こらない。痛い損じゃないか。まぁ抜けたんだからよしとしよう。しかしこいつの刀身の模様は綺麗だな。黒いところに銀色の模様がある。

む、いかんこんなことをしていてはもんが閉まってしまう。とりあえずかえってから考えよう。


門を通る時衛生に2度見された。ぷりてぃーな自分のお目目が気になったのかな?冗談だ。やっぱりボロボロすぎだよな。


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検問所の衛兵たち

「あの子どもボロボロでしたね…何をしてきたんだか」


リッカが過ぎた後1人の衛兵が衛兵隊長に話しかける。


「わからん。だが得体のしれない子供だ」


「そういえば領内さまのところには報告したんですよね?どうなったんですか?」


「それは機密事項だ。忘れろ」


部下が文句を言うのを無視する。衛兵隊長は大きくため息をついた。


(仕方ないだろう。上がこれ以上情報を他に流すなと言っているのだから。あの得体の知れない子供がこの都市になにか悪いことをもたらさなければいいが。)


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宿に着いた。思ったより時間がかかった。マナはまだまだ余っているし身体的な疲労はないが精神的にも疲労が大きい。精神力を鍛えなくては。


宿に入ると母親が見えた。大きく目を見開き軽く悲鳴をあげこちらにはしって近づいてくる。自分の体を確かめるように触ってくる。くすぐったくて体を捩る。


「大丈夫なの?怪我はない?痛いところは?」


「何をしていたか聞かないの?」


ふと疑問に思った。最近母親は何をしているか聞かない。母親は複雑そうな顔をしながら


「リッカが悪いことをしていないのは分かるわ。なにをしてるかは聞かないのはあなたが困ると思うから。でもね、心配はさせて。あなたは私のたった1人の大事なリッカなの。今してることをやめろとは言わない。ただいきて帰ってきてくれるなら十分よ」


…そうか。母親なりに思うところがあるんだろうな。これ以上聞くのは野暮だ。母親が抱きついてくる。まったく子離れがてきていないな。

母親の背中を撫でる。安心しろ死なないように努力はする。


「お腹すいたでしょ?ご飯にしましょう。お母さんも今日の仕事は終わったから」


「うん、貝があるからおっさんに渡してくる」


「おっさんじゃなくてオーナーよ」


人の母親を落とそうとするやつはオッサンで充分だろ?厨房に行くとおっさんがこちらを見てくる。


「お前エイミーの子供だろ?どうしたんだそんなにボロボロで?」


「別になんでもない。それよりこれあげる」


おっさんに10個程貝と魚を5匹渡す。マジックボックスから出したばかりだから新鮮だ。おっさんは驚いた顔をして顔を近づけ小声で話しかけてくる。おっさんの顔が近いの萎える。


<これ水竜湖で取れる貝じゃねぇか!あそこにはウォータードラゴンが住み着いてるからかなり高い貝と魚だぞこれ!こんなとこで出すんじゃねぇ!>


あれはウォータードラゴンと言うのか。ドラゴンって空飛ぶ以外のやつもいるんだな。


「だったらこれは宿代。これでなん日分泊まれるの?」


自分が回りを気にしないのに呆れたのか諦めたのはため息をついた後に普通に話しかけてくる。


「この貝1個で金貨2枚になるぞ?中身だけでだ。外側は飾りや粉にして色んな材料に使われるからもっとするだろうよ。魚はちと鮮度が落ちてるが金貨4枚はかたいな」


おっと、思っていたより高級食材だ。上手いというのもあるだろうがウォータードラゴンが住み着いていたせいで希少価値がうまれたんだろう。


「美味いの?」


おっさんは鼻息を荒くして


「当たり前だ!お貴族様が食べる食事にも出てくるやつだぞ」


それは期待できそうだ。


「だったら貝4枚と魚を1匹を今日の夕食でだして。残りは宿代ってことで自由にしていいよ」


「貝が6枚と魚が4匹でしめて金貨28枚か。何日分になるだろうな」


「92日くらい」


おっさんが口の端をひくひくさせて苦笑いする。


「はは、どんだけだよ」


おっさんはぼけた顔を引き締めるように両頬を思いっきり叩く。


「よし!それじゃあお前は上客だな!たっぷりサービスしてやるよ」


それでいい良きにはからえ。

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