第20話マルフード領内⑪
宿に帰る途中でハングの店で串焼きを買った。宿に着くあいだに全て食べてしまった。母親にお土産にするつもりだったのに…。成長期の食欲が憎い。
宿に入ると母親が給仕をしていた。こちらに気づいてた。
「リッカ!おかえりなさい」
「ただいま。なんで給仕してるの?」
「宿のオーナーさんがね人が足りてないから給仕をしてくれたら宿泊費を半分にしてくれるって言ってくれたのよ」
ニコニコしながら報告してくる。宿のおっさんは本格的に母親を落としにきたな。母親はのほほんとしてるからな自分がしっかりしなくては。
「お針子じゃなくていいの?」
「お昼の時間帯だけだから昼以降に探しに行くわ」
それで宿代半分にするのはやりすぎだろ。あまり借りを作りすぎるのは良くない。宿のおっさんに狩った魔物をすこし渡すか。また午後に狩りに行こう。
昼飯の時間なのだろう。周りのおっさんたちがデレデレとした顔で母親を見ている。男が多いこの環境に長く置いておきたくはない。とりあえず今は昼飯を食べよう。
「母さん昼飯のおすすめ1つ」
「わかったわ」
オーダー取って厨房に向かう。その間も他のおっさん達にひっきりなしに声をかけられている。しかし昨日のように強引な奴いないようだ。やはり最初が肝心だ。
暇つぶしにジオルドの店で買った短剣を観察する。試しに身体強化を使った上で思いっきり引っ張ってみる。だめだ。そもそもジオルドも力自慢がやってもダメだったと言っていたな。
短剣を前に唸っていると赤毛の給仕に声をかけられた。
「あ!昨日の子だよね?強いんだね〜」
「鍛えてるから」
この赤毛はサボりか?
「エイミーさんすっごく美人だからモテモテなんだよ!看板娘の座が取られるかも…」
当たり前だ。こんなベリーキュートな自分の母親なのだ。美人なのは当たり前だ。
「手出して」
赤毛は不思議そうな顔で手を出してくる。銅貨5枚をのせる。
「え?なに?ご飯ならいまさっき頼んでたよね?」
「母さん抜けてるからしっかり見てて」
賄賂だ。長くここで働かせるつもりは無いが変な虫がつかないようにしなくては。
「わかった!しっかり見とくね!」
赤毛はクスクス笑いながら力強く答える。しっかり頼むぞ。赤毛はオーダーを取りに行った。入れ替わりで母親がランチを持ってきた。
「銅貨5枚よ」
母親に手渡す。
「ゆっくりしていってね」
頭をひとなでした後に仕事に戻る。さて食べよう。
ランチは大麦のオートミールとソーセージとチーズだ。村にいる時よりも舌が肥えてるから物足りない。やはり香辛料が欲しくなる。胡椒やブラックペッパーが高いのは予想できるが実際いくらなのだろう?今度確認しておこう。
さて、昼食も食べ終わったし狩りに行こう。思ったよりツノウサギとナマジカは安かった。もっとと強い魔物を狩りに行こう。
昨日とは別のポイントにいく。検問所で止められることらなかった。
今の手持ちの武器はログから貰った解体用のナイフとさおから抜けない短剣だ。攻撃用の魔法がないな。というか自分がなんの属性を持っているかすら知らない。まぁそのうち何とかなるか。
身体強化をかけながら辺りを警戒しながら歩く。湖が見えてきた。森での経験則だが水の周辺には生き物が集まりやすい。気配を隠しながら身を潜める。1匹の熊が水を飲みに来た。あれは魔物ではなく普通のくまだな。熊が水に口をつける。すると水面が動いた。
…水の中に何かいる。次の瞬間水の中から巨大な何かが出てきて熊に噛みつき水の中に引きずり込む。抵抗しているようだが相手が大きすぎる。赤い血が湖に広がる。しばらく水面は荒く波を立てていた。
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