第15話マルフード領内⑥

母親が近づいてくる。自分顔や体を触って


「怪我はないの?」


と心配そうな顔で見てくる。大丈夫だ。あの程度の速さでは当たらない。


「大丈夫」


男の仲間たちがそそくさと宿から出ていった。自分ではなく母親になにかしてくるかもしれない。なにか対策を考えないとだな。


「あのー、おすすめ2つお持ちしました」


赤毛の娘が声をかけてくる。やっと来たか待ちわびたぞ。


「食べよ」


再び母親と椅子に座る。野菜や肉の入ったポトフに黒パンとベーコンが2枚とマッシュポテトがそえてある。一般庶民が食べるにはそれなりに贅沢な食事だ。


「1つが銅貨7枚です」


2つで銀貨1枚と銅貨4枚だな。村にいる時は基本的に自給自足だったから1食銅貨2.3枚だった。それから考えると金がかかるな。


赤毛の給仕に金を渡した。お礼を言いながら他のオーダーを取りに行った。


まず黒パンをちぎってスープにひたす。スープの旨味をしっかりすっている。黒パン自体は固いためスープに浸して食べるのが一般的だ。ベーコンは豚肉だろう。少し冷めているが美味い。


母親も食事を黙々と味わいながら食べている。女手1つだと食事は節約しなければならなかった。これからはそんなことをしなくて済むようにしなくては。


食事はあっとゆう間になくなった。少し物足りないきもするが明日から稼がなくてはいけないし商業ギルドから買った資料に目を通しておきたい。


「母さんこの後どうする?」


「もう部屋に帰りましょうか」


同じ意見だったようでよかった。


部屋に帰って資料目を通す。ここら辺の魔物は基本的に強いものはいない。せいぜいD級の魔物ぐらいだ。たまにC級もいるらしいがな。


魔物の名前や解体方法、わかっている特性について頭に入れておく。特に金になりそうな魔物は要チェックだ。


「そろそろ火を消すわよ」


おっと夢中で読み進めてしまった。ロウソクは宿から支給されたものだ。1泊にロウソク1本だ。獣や魔物から作られたものでは無いから嫌な匂いがしない。つくづくこの宿を選んでよかったと思う。


本を閉じてベッドに入る。ベッドは1つしかないからもちろん母親の隣だ。自分が窓際に行く。


「おやすみリッカ」


母親が頭をひとなでした。


「おやすみ」


目を閉じる。まだ寝ないがな。殴った男が報復で母親になにかする可能性がある。母親に何かしらの防御の魔法をつけなければ。


ヒールや身体強化を他人にかける要領でいいだろう。意識を集中させる。母親の防御力を底上げするというのはどうだろう?原理は身体強化と同じだ。“バリア”というのはどうだろうか?


試しに自分にバリアをかけてみる。追加で身体強化をかけて腹を思いっきり殴りつける。少し痛いな。ただあの男程度なら傷1つ付けられないだろう。当分はこれでいこう。


母親に1日1度バリアをかけておく。そうすれば滅多なことでは怪我をしない。


さて今日することは全て完了した。寝よう。

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