第11話マルフード領内②

リズ達に入場料を渡した。少なくとも中に入れれば外にいるよりは安全だろう。


人を避けて進み列に戻った。周りの人間の目が煩わしい。あそこで大っぴらに金を出したのは失敗だったな。


母親に手を強く握られ心配そうな顔を向けられる。大丈夫だ。この人数が襲ってきてもどうにでもなる。


こちらも少し強めに母親の手を握る。


そうこうしていると自分たちの番になった。


「止まれ。名前とここに来た目的言え」


「エイミーです。この子はリッカです。村が魔物に襲われたため避難してきました」


「他の者達と同じ目的だな。入場料は銀貨8枚だ。」


兵に入場料を渡す。やれやれやっと入れるな。


「よし!確かに受け取った。入っていいぞ」


母親の手を取りながら門の中に入る。

マルフードの中はこの状況でも活気づいている。人の流れも多く屋台も多い。


「母さん屋台でなにか買おう」


「そうね、ホッとしたらお腹空いちゃった」


何がいいかな。母親と歩きながら見ているとひとつの屋台が目に付いた。串焼きか美味そうだな。


「おっさんタレと塩4本づつくれ」


「おいおい!おっさんはないだろ!俺はまだ40だぞ!」


何を言うか。40歳は立派なおっさんだ。


「そうか、おっさんいくらだ?」


「俺はハングだ!ガキンチョ!全部で銀貨1枚と銅貨6枚だ」


1本銅貨2枚か、だとうな値段だな。ハングに多めに金を渡す。


少し驚いた顔をした後にニヤリとこちらをみてくる。おっさんのニヤリ顔は見たくないやめろ。


「領内の様子はどうだ?」


「まぁいつも通りだな。避難民の受け入れはしてるがそもそも入場料の値上がりのせいで中に入れるやつ自体が少ないからな。」


やはりか。平民であれば払えないやつは多いだろう。


「武器やギルドどこにある?」


「武器はこの道を真っ直ぐ行ったところのジオルドの店がおすすめだ。ハングの知り合いだって言え。ギルドは大通りを進めば見えてくる。お前は多分冒険者ギルドがお目当てだろ?10歳以下は登録できないぞ?」


「わかった、ありがとう。年齢の話は知ってる。」


ハングから串焼きを受け取る。


「食べながらいこ」


母親と串焼きをわけながら歩く。


美味いな。色んな意味で当たりだったな。


「ねぇリッカもしかしてギルドに所属しようと思ってるの?」


「うん、お金を稼がなきゃ」


自分の答えに母親は考え込むような顔をする。


「母さんも働くからお金のことは気にしなくて大丈夫よ?ここは大きい都市だから仕事もあるわ」


そうだろうか?子連れで家もない若い女性が働くといって思い浮かぶのは酒場や娼婦だ。そのどちらも必要な職であることは間違いないが母親にさせたくはない。


「とりあえず商業ギルドに行こうと思う。詳しくは後で説明する」


「商業ギルドに?」


商業ギルドに向かおう。

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