第10話マルフード領内①
マルフードに着いた。正確には中には入れてないが。周辺の村々から避難民が押し寄せているからだ。みんな命からがらといった風貌である。
母親の手を掴んでおく。これははぐれないための手段だ。母親は驚いた顔をした後に微笑んでいる。やめろ。
母親と手を繋ぎながら検問を待つ。検問と言っても名前と目的を聞かれ一定額の入場料を取られるだけだ。ギルドに所属していれば入場料は取られない。
「なんで入場料が上がってるんだい!?前は1人銀貨2枚だったじゃないか!」
「領内は避難民が溢れかえっているんだ!仕方ないだろう!」
なるほど入場料の値上がりか。入場料を高くすることで領内の資金を少しでも確保すると同時に金のない人間を入れなくてすむ。しかし今これをするとなるとマルフードの評判は悪くなるだろう。
まぁ悪くなったところでここ以外に発展した場所はここらではないからあまり関係はないか。
それにしても前の人間は粘るな。ないなら仕方ないだろう。無理やり入れば何をされるかわかったもんじゃない。
「ねぇリッカ前の人の声リズさんに似てるような気がしない?」
…確かに言われてみればあの人の声に似ているような。
「見てくる」
母親にそう言って少し列を離れる。人を避けて進むと検問所が見えてきた。確かにリズとその子供たちだ。金が足りなかったのか。
「銀貨8枚なんて払えるか!」
「ならここから出ていけ。入場料を払えない人間を入れる訳には行かない。」
銀貨8枚か。リズと迷惑兄弟改めカル、メダを入れたら金貨2枚と銀貨4枚だ。これは平民の月収の半分にあたる。これはかなりぼったくりだと思う。
カルとメダが不安そうな顔でリズを見ているら。村に残ったログの顔が浮かぶ。あれでも元C級冒険者だゴブリンくらいじゃどうということはないだろう。
しかしログがおそこにいたおかげで母親が無事だったとも言える。それにログには家族を助けてやってくれと言われた。
(金を貯めておいて良かったな)
リズ達に近づく。それに気付いた検問所の兵が怪訝な顔をしながらこちらを見てくる。
「はい、金貨2枚と銀貨4枚ね。これでいいでしょ早く通して。」
麻袋から金を出す。リズ達が驚いたようにこちらを見てくる。
「リッカ!?あんたなんでこんなお金を…それにこれを出したらあんた達はどうするんだい!」
「いいから行って。まだあるから大丈夫。これはログの借りを返してるだけだから。」
ログの名前を出すとやりきれないような顔をした。心配なのだろう。
「ありがとうリッカ」
礼を言いながらリズたちは領内に入っていった。さて列に戻るか。
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