第9話幼少期⑥
母親を連れ村を離れてから3時間ほどたった。その間にもいくつかの魔物に遭遇した。やはりおかしい普段マルフードに行く道にこれほど魔物が出てくるなど行商人は言っていなかった。なにか得体の知れないことが怒っているのは確かだ。
「リッカ大丈夫?疲れてない?」
聞いてくる母親の方が辛そうだ。住んでいる村が焼かれ火に何度も魔物に遭遇すれば疲労も蓄積するか。
「大丈夫。“ヒール”」
母親にヒールをかけておく。これで体力の疲労は無くなるはずだ。しかし精神の疲労まではどうすることも出来ない。
「リッカはすごいのね。6歳でこんな魔法を使えるなんて。」
母親がなんとなく誇らしいような顔をしているのは勘違いではないだろう。
(よかった)
よかった?自分はなぜ今そう思ったのだろうか?母親に異質な子供だとばれても変わらず母として接して貰えたことにほっとしている?
この不思議な世界に来てからというもの決して感情豊かな子供でなかったのは確かだ。精神年齢が大人なのが1番の原因だろう。普通は気味の悪い子供だと言って捨てることも出来た。母親はそれでも自分をこの歳まで育て慈しんでくれた。
(この恩は必ず返さなくてはいけないな)
「母さんマルフードまであとどれくらい?」
「だいたい2時間くらいだと思うわ」
身体強化で行けば30分くらいか。そういえば身体強化は他人にかけることが出来るのだろうか?ヒールの要領で行けば出来るかもしれない。
母親の精神面を考えてみても速くマルフードに着いた方がいいだろう。
「今から母さんに身体強化をかけてみるから驚かないでね」
「え?リッカなにを「“身体強化”どう?」」
母親に身体強化をかける。自分の手や体を不思議そうに見ている。
「なんだか力が湧き出てくるような感じだわ」
「このまま走ったら30分で着くと思う」
「!わかったわ、行きましょう。ありがとうリッカ」
さてさっさとマルフードに到着したい。いい加減腹が減った。
そんなことを思いながらマルフードまでの道を急ぐ。
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