第7話幼少期④

ヒールの習得に1年もかかった。そのおかげで怪我がすぐ治るようになった。そしてこの6年間でわかったことがある。どうやら自分のマナの量はかなり多いようだ。通常の人間が10使えるところを自分は100使えるようだ。ヒールは普通カンタンな怪我しか治せないが自分が使うとそこそこ深い傷も治ることがわかった。これは魔物との闘いで実証済みだ。


この世界にはいくつかのギルドがある。その中でもっとも平民が入るのが冒険者ギルドだ。冒険者ギルドは10歳から加入可能だ。とりあえず10歳までは村周辺の魔物と戦いつつお金を貯めることに専念したい。


いつまでも母親に頼るわけにはいかない。母も若いのだから再婚するかもしれない。その際に子連れでは難しいだろう。


さて今日も教会の写本を終わらせつつ森に行くか。


教会に着くと司祭に奥の部屋に呼ばれた。話があるそうだ。


「リッカ、教会に入るつもりはありますか?そのつもりなら中央教会に推薦を出します。もしそのつもりがないなら教会に入りたい子供に写本の仕事を優先的に与えようと思っています。」


ふむ、確かに教会に入るつもりがないものにいつまでも仕事を回すのも変な話だな。写本の仕事は小遣い稼ぎと母親への言い訳だ。別になくなって困るものでは無い。


「教会に入るつもりはありません。別の人に仕事を回してください。いままでありがとうございました。」


「そうですか。あなたの写本は字も綺麗で正確で評判が良かったのですが…。気が変わったらいつでも言ってください。」


これで教会に行くという言い訳は母親に言えなくなった。まぁこの当たりの魔物相手に怪我をすることもないし本当のことを言ってもいいか。


教会を出たあと木刀を取りに行くために自宅に向かう途中でログに会った。ログはリズおばさんの旦那だ。元々C級冒険者で腕を悪くしたので引退したそうだ。


「リッカか!少し見ない間に身長が伸びたか?それにしてもあいかわらず無表情だな〜」


ログはいつも身長の話をしてくる。残念ながら少ししか伸びていない。無表情なのは生まれつきだ。


「なんか用?」


「お前あいかわらず道場に来ないな。まぁおまえなら来る必要も無いか。」


「ログさんが指導するなら行く。」


「俺の指導が理解できるのはこの村ではお前くらいだろうし無理だな。」


「じゃあ行かない。もう行っていい?今日の食材を取りに行くから。」


何を隠そうログが今まで魔物の狩り方や血抜き

や魔石のことを教えてくれた。それもあって迷惑兄弟を邪険にできない。


「まぁ待て。最近この辺りで行商人に魔物の被害が出ている。行商人は冒険者を雇っているにもかかわらずだ。」


「そいつらが弱かっただけじゃない?」


「それもあるな。E級ができることなんてたかが知れてるからな。だが一応注意しろよ。ここ最近ここらの魔物の動いが活発になってるからな。」


なるほどだから近頃は魔物が多いのか。一応気をつけておいて損は無いな。


「わかった。忠告感謝する。」


「ははっ!お前はほんと子供らしくないな。それとうちのガキどもと仲良くしてくれよな。」


「それは無理。 」


聞きたいことは聞けた。森に行って今日の食材を探しに行くか。迷惑兄弟には睡眠妨害をされたことを忘れていない。睡眠の恨みは深いものだ。


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