第6話幼少期③

どうやら迷惑兄弟は森で迷って大目玉を食らったようだ。これで少しは大人しくなって欲しいものである。


今日は教会に来ている。治療の魔法“ヒール”を使って教会はお布施を貰っている。その他にも説教をしたり写本をしたりしている。この世界では平民はあまり魔法を使えない。せいぜい灯りたり火をつけたりするくらいの小さなものしか使えない。


恐らくだが魔法を使う際に意識してマナを全身にめぐらせていないせいで使える魔法が少ないのだと思う。


教会に来る目的はヒールの習得(盗み見)と写本で得られるお金だ。実際教会に来ている者のほとんどが簡単な文字を覚えたら来なくなる。継続してくるのは教会に入るために司祭の推薦を貰いたいものくらいだ。


自分は読み書きの覚えも早く字が綺麗だったから写本を任された。金銭を得られつつヒールを見られるのだから道場よりもよっぽどいい。


道場は村の自警団が剣を教えている。自警団と言っても素人集団だし剣の流派などもなくめちゃくちゃだ。ただ筋肉をつけて剣をふるようなものだ。あれをするくらいなら教会に来る方がいい。


「リッカ、写本は終わりましたか?」


「はい司祭様。今日の分は終わりました。」


写本といっても本自体が薄いためすぐに終わる。


「今日も治療の風景を見てていいですか?」


「リッカは本当に治療を見るのが好きですね。いいですよ。」


初めて頼んだ時は不思議な顔をされたものだ。確かに治療の風景を見るなんて奇妙な頼みだと思う。ヒールの習得さえ出来れば見る必要はなくなる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る