二刀流が流行っているだと...

くるくる

二刀流が流行っているだと...

「なんで最近の護衛や冒険者は二本も長剣を持っているやつが多いんだ?」


 周りが騒々しい酒場で、エールを飲みながら、ふと疑問に思ったことを友人に尋ねていた。


「そんなことも知らないのか。最近王都であった武道会で二刀流の剣士が優勝したからだ。右手と左手の長剣を器用に操り、対戦相手を翻弄したって噂だ。それに憧れてみんな二刀流をしようとしてるらしい」


「そんなに強かったのか、二刀流って。武道会見に行けば良かったな」


「見に行っても、俺たち商人には武芸の凄さなんて一欠けらも分からないけど、暇つぶしには良かったかもな。とは言っても、その時は隣国で商売していたから行けなかったわ」

 

 友人は笑いながら、そんなに酒に強いわけもないにも関わらず、酒を次々と飲んでいた。


「おいおい、そんなに飲んで大丈夫か。前回、飲みすぎてつぶれたばかりだろうに。今日はつぶれた後の世話をしたくないぞ」


「そんなこと言うなよ。隣国の内乱がついに終わったんだから、それのお祝いよ」


「おまえはそれが無くともいつでも飲んでるだろうが。隣国ではどうだった?」


「隣国はいいところだった。食事は美味しいし、安い。世界の食料庫とはよくいったもんだ。でも、今回は稼ぎは少なかった」


「うちの国の金属製品は売れなかったのか、珍しいな。隣国と比べて、金属の質や量は良いはずだろう?」


「戦争があったから、その武器が多く余っているから金属製品はいらないらしい。5年も戦争が続けば、そりゃ武器も多く輸入されるか」


「そうなるとうちの国は大変だな。うちが他の国に誇れるものといったら、金属製品しかないぞ」


 そう口にしながら、ナッツを口に放り込んだ。そして、ふとある考えが思い浮かんで、つい口にしてしまった。


「でもうちの国で二刀流が流行ったのは良かったな。二刀流のためには、二本の長剣が必要となる。二本の長剣のためには、金属がより必要となる。そうすると、うちの国の金属の内需は増加し、金属産業は守られる。得なことしかない」


「おいおい、まるで武道会で談合があったみたいじゃないか」


 彼は顔だけは笑っていたが、眼だけは全く笑っていなかった。その顔を見たので一瞬固まった。しかし、かろうじて口は動いたので、すこし震えながらこう言った。


「冗談に決まっているだろ。そんなことがこの国であるわけない。おまえも俺も飲み足りないんだろう、よし飲むぞ」


 この後のことは全く覚えていないが、10杯以上もエールを飲んでいたと、あとで友人から教えられた。そしてその後、友人とは疎遠となっていったが、国のお抱えの商人となったと風の噂が流れてきた。


 




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