解体

 アニメや漫画でよく刀で首がスパっと切れるが、あれは嘘だ。物凄く研いだ剣であれば肉が綺麗に切れるだろうが、やはり骨は固い。あんなアニメみたいにスパスパ切れたら楽なのに。

 ホームセンターで買ってきたノコギリを置いた。両手は切れた。肩の関節はノコギリが通らないので、金槌で砕ぎながら刃を進めた。それでも、もう刃がボロボロだ。重労働だ。時計を見ると6時間も過ぎていた。

 2リットルのお茶を飲みきってしまったので、冷蔵庫に入れておいた炭酸ジュースでも飲もう。

 こいつは冷蔵庫の中も汚い。ほとんどのものが賞味期限切れだ。謎の栄養食品みたいな物が溢れている。部屋にもこのロゴの段ボールがあった。

 汚い部屋を見渡すと色々な中途半端が溢れている。結婚前からあった高級ミシン(果たして動くのだろうか)ダイエットの為のトランポリン、ヨガマット、美顔器、美顔ローラー、英会話教材、海外ドラマのDVDボックス。全部、すぐ飽きてやめた。あれ?今、気が付いたが、猫がいない。猫グッズ全て見当たらないから、捨てたのかもしれない。本当に命を扱うのに値しない人間だったな。

 なんでこんなクズが好きだったのか。こいつが人生で初めての彼女だった。出会いはVの現場だった。

 当時は、映像の仕事なら何でも受けていた。門外漢の現場の手伝いで手間取ったが、何となくそれっぽい雰囲気だけだして働いている感を出していた。

 ハルを初めて見た瞬間は、きっと一生忘れない。バスローブを着てお菓子を食べていたのだが、体育座りをしているので女性器が丸見えだった。陰毛レベルなら驚かない。女性器をおっぴろげでM字開脚に座っていた。エロ漫画で言うと「くぱぁ」てやつだ。今、考えたら最初から最期まで「なんだこいつ~」だったな。

 忘年会で意気投合してデートしてスピード結婚した。「童貞とヤリマンの結婚」と周囲は面白がった。そんなことは、どうでも良かった。人生で俺を好きになってくれた唯一の女性だったから、大好きだった。だが、勿論長続きしなかった。すぐにハルはスカウトの男に夢中になった。

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