サンタが町に殺ってくる!
煌びやかなライトや装飾でおめかしをした大きなモミの木のした、十二月某日にサンタクロースが街にやってくると聞いたこの町の住民はみな、鼻息を荒くしてその時を待っていました。
この町は子供たちが集められて作られた人工的な町です。ここに住む子供たちは、毎年この時期になるとサンタクロースを捕まえようと、ひねもす、さすまたに手を加えて進化させたり、空を飛ぶトナカイを撃ち落とすためのゴム鉄砲を作ったりと、「手厚いお出迎え」の準備を始めます。
「今年のサンタはどんなプレゼントを抱えてやってくるんだろうな」
「俺はアーミーナイフがいいなー」
「私はサンタさんの服が欲しいかも」
と、楽しく雑談をする皆からすこし離れた家の軒下で、マフラーを編んでいる女の子がいます。この女の子は町の皆から忌み嫌われていました。あの子はいい子ぶっているだとか、少し年齢が上だからって、など、女の子からしたら心外なこともたくさん言われていました。でも、女の子はじっと耐えていました。女の子にとって、この時期は一番つらい時期でしたが、この時期を越したらまた1年は楽になるとわかっていたので辛抱していました。
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今晩はいよいよ、サンタクロースがこの町にやってきます。子供たちは武器や道具を布団の中や押し入れに隠し、じっと息をひそめ、サンタクロースが来るのを待ちます。
シャンシャンシャン……カタッ。ザッ、ザッ、ザッ。
サンタクロースはもう、この付近を歩いているようです。町はより静かになります。
「今年も『いい子』にはたくさんプレゼントを持ってきたよ、ホッホッホッ」
ギイィ……。サンタクロースは誰かの家のドアを開けて入ったようです。それを合図にしてその家のドアに子供が3人、さすまたと棒とアミを持ってサンタクロースを捕獲する用意をしているようです。
すると突如その、サンタクロースが入った家から激しい銃声が聞こえました。3人はドアを開けて猪突猛進していきましたがどうやら撃たれてしまったようです。あまりに激しい銃声なので町の子供たちはみな家を飛び出し走って逃げますが、サンタクロースはガトリングガンで、さらに子供たちからは見えないところから撃っているようでした。次々に子供たちは倒れ、2匹のトナカイは街路に敷かれた子供たちのその手から、武器を取り上げてサンタクロースが持ってきた袋に詰め込んでいきます。サンタクロースは少し赤く染まったひげを揺らして笑っているだけでした。
「あぁそうだ、あの女の子に会えていないな、おおい、いるかね」
女の子は手編みの白いマフラーを胸に抱えながら、ひょっこり出てきました。
「今年もいい子にしていたかい」
女の子はひとつうなずきます。
「また忙しくなるだろうけど、来年も頑張ってくれるとありがたい」
サンタクロースはマフラーを受けとりお礼をしてから、「サンタクロースを信じている悪い子リスト」という、来年この町に来る子供たちの名簿を女の子に渡しました。
「それじゃあ、また来年のこの日まで、頼んだよ」
子供たちの亡骸を片付けおわったトナカイがそりに戻ったのを確認して、サンタクロースは重たい身体をそりに預けて、また次の町へと飛んでいきました。
女の子は大きくひとつ息を吐き、身を震わせながら布団にもぐっていきました。
村上駄文集 村上 耽美 @Tambi_m
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