第7話 日記の苦い思い出
小学校低学年の頃「毎日、日記を書きなさい」という課題があった。
日記帳を用意して、それに毎日日記を書いて先生に提出する。
先生はすべての生徒の日記を読み、それにコメントを付けて返してくれた。そして、上手に書けた生徒の日記をB4サイズの紙に写してみんなに配った。
このプリントは学校のある日は毎日配られた。
今思うと、担任の先生は大変だったのではないかと思う。
プリントに載れることは嬉しかった。
タイムリーな内容だった場合もあったが、その日、上手に書けた人ということだったからだ。
だから、みんなでがんばって書いていた。
1年分なので、必ず自分の日記が載る日があった。
もちろん先生がまんべんなくクラスの生徒の日記を載せようとしてくれたこともあったが、日記が上達すると、それを褒めて載せてくれることもあった。
ボクはわりと早い時期に載せてもらえた。そして、褒められると調子に乗るタイプなので、がんばって日記を書くようになってしまっていた。
その日は、日記を朝に書いていた。
日記は当日に書くのもいいと思うが、日記を書くべき日が終わって、次の日になって、一番記憶に残ったエピソードを書くのがいいと思う。
だから朝に日記を書くのは間違っていない。
しかし、早起きをする習慣はなく、ギリギリまで寝ている。
すると、朝、書いているということは、学校に行く時間になってしまうということだ。書き終えて、読み直した。
小学校で、そう習ったからだ。
一度書いた物を読んで、直せと。
すると、何を言っているのかわからない文章になっていた。
小学校低学年が書いた日記である。それでも十分ではないかと思うが、小学校低学年だったボクは満足しなかった。
―― 誰が読んでも伝わる内容にしなければ。
脅迫されたかのようにそう思った。
これでは伝わらない。
もっと細かく書かなければ。
ちゃんと意味が伝わるように書かなければ、悪い意味に取られてとんでもない返事が返ってくる。
恐怖だった。
書いても書いても悪い意味に取られて、自分の意思がまったく相手に伝わらなかった記憶が蘇った。
そんなことが起きてはいけない。
自分に悪意がないことが相手に伝わらなければ何の意味もないのだ。
書いて書いて書きまくり、気づくと学校に遅刻していた。
かなりの長文になった日記はプリントに掲載された。
先生のコメントは「遅刻をしないようにしましょう」と書かれていたように思う。それは自分に非があると知っていたので素直に受け入れることができた。
ボクは誠意を込めて書いた手紙の返事が、どうしてそんな風に思うんだ? それが本心なのか? と疑ってしまう内容だったことがあった。
自分が書いた手紙から、自分が思ってもいないとんでもない発想に持って行かれて責められた。だから、そういう方に持って行かれない書き方をしなければいけないとかなり悩んだことがある。
よけいなことを書くと、そこからとんでもない発想に持って行かれることがあったから、それらを排除してドドンと言いたいことだけを書かねばならなかったのだ。
日記を書いていると、その時の記憶が蘇った。
今は、パズルを楽しむように書くのが楽しいからいいけれど。
おそらく、ボクの書いた手紙は兄上の元には届かず、別の超絶嫌味な人間が代筆していたのではないかと思う。
そうでなければあれほど攻撃力が高くて心が折られる内容にはならない。
だから、人は文章ではなく、会って話すのがいい。
いくら文章を重ねても、本当の想いは伝わらない。
会って話したのなら、心が折られる内容でも受け入れられる。
そして、次に進める。
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