相談事その12ー2

「今、何て?」

「しっかりしてよ!灯夜とうや君!」


 これは夢なのか?現実だよな?

 11月のある日のこと。

 耳を疑った。


「来年、私達、んだよ!」


 同じ言葉をもう1度言った朝歌あさか


「親…」

「そうだよ」


 やっとー…。


「安定期に入ったら、みんなに伝えようね」

「だな」


 いろいろ気を付けて、朝歌とお腹の子を、守るんだ。

 久々に起きていたぐうは、じっと俺と朝歌を見ていた。


「ぐうちゃん」


 朝歌はぐうに近付き、頭を撫でた。


「赤ちゃんが生まれる日、必ず生きててね」


 朝歌…。


「ぐうも一緒に、赤ちゃんと家族写真、撮るんだからね」


 叶うと良いな…。

 無事に元気に生まれて来てくれるように、ぐうと赤ちゃんが会えるように。

 頑張れ、ぐう。



 さらに季節は流れた。

 2月のある日。

 寒くて寒くて、朝はベッドから出づらくなっていた。

 安定期になり、やっと両家の両親や常連客、光希みつき光羽みつば志穏しおん龍雄たつおに報告した。

 みんな喜んでくれた。

 志穏は親友のもり満奈みつなさんと共に、手伝ってくれるようになった。

 まだ大丈夫、と朝歌が遠慮しているのだが、2人は「ダメです!」と強く言うもんだから、お言葉に甘えて朝歌は椅子に座ってお客様の話し相手に徹していた。

 開店時間を少し遅くし、閉店時間を早めて、なるべく朝歌に負担にならないようにしていた。

 一方のぐうは、相変わらず。

 それでも、寝ることよりも、起きてる時間が何故か長くなっていた。

 ご飯も少しだけ増えた気がする。

 病院で定期的に診てもらっているが、先生も最近の様子を話すと、首を傾げて不思議に思っていた。

 再開したウエディングケーキの準備。

 上手くいっている。

 4月の中旬に、依頼人の美歩みほさんの結婚式がある。

 それに合わせて仕上げていく。


 何もかもが順調過ぎて、少しだけ心がざわめく。

 大きな出来事が、起こらないでくれ。

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