相談事その12
常に、平常心で店を開けて、お客様に笑顔で帰ってもらえるようにしていた。
時間が解決してくれる、という言葉は嘘ではないようだ。
ぐうのことを、大分受け止めることが出来ていた。
ぐうを助けた
2人共、思いっ切り泣いたから、話すのが早すぎたかと思った。
でも、後日来た時には、彼らなりに理解して受け止めたのか、時間が許される限り、なるべく毎日は無理だが、毎週1回は必ず見に来るようになった。
常連客も、なんだかみんなで、ぐうを見守っていた。
本当にありがたい。
食欲は少しずつ減り、散歩にも行けなくなった。
寝てばかり、でも、声をかければ反応があるから、そこは救いだったりする。
たまに志穏に預けて、依頼されている、ウエディングケーキ作りの準備は順調に進む一方、心はそわそわ。
見ていない間に、何かあったら、なんて嫌なことが過る。
「大丈夫か?」
「あぁ、すまん」
生クリームを絞り終えて、完成したケーキを見ると、所々ムラがあり、絞った形が不揃いだった。
「今日はここまでにするか。暫くは休め」
「いや、でも…」
「2月に練習を再開しても問題ないって。愛犬と長くいる時間を確保しろ」
「ごめん…」
なんだか申し訳ない。
「お前は優秀だから、暫く休んでも問題ないって。1ヶ月で仕上がるさ」
「おう…」
楽観的な龍雄に心が救われた。
「じゃあ、また」
「待っておるからな」
ふざけた口調に、ふっと笑ってしまった。
※
月日は流れた。
ぐうは、すうすう眠っていた。
「ぐうちゃーん」
「…くしゅん」
自分のくしゃみに驚いたのか、目を開けてゆっくりキョロキョロして、また目を閉じて寝た。
「食べないな」
「そうだね」
もう時間は少ないようだ。
※
朝歌は珍しく1人で出掛けてしまった。
俺は家でぐうの面倒を見る。
優しく頭を撫でながら、俺も少しうとうとする。
「ぐう?」
ぐうは眠るばかり。
「ここに拾われて、家族になって、どうだ?楽しいか?」
返事は全くない。
「あと少し、長生きしてくれよ」
せめて、心の準備が出来るまでは居なくなるなよ。
そんな願い、通じるはずはないのにな。
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