相談事その11ー3
カランコロン…
「いらっしゃいませー!」
「こんにちは」
「あー、
また来たな。
今回は、1人ではない。
「はじめまして…」
彼女の後ろにいたのは、旦那さん。
この前の事を、2人でここで話すのだろう。
「ささ、こちらに!」
「ごゆっくり~」
朝歌は俺の所に来た。
「まず、アイスコーヒー1つとミルクティー1つ」
「はいよ」
「あとは、上手くいくと良いけど」
「見守ってよう」
俺らはあくまでも、話す場所を提供しただけ。
実際に向き合うのはあの夫婦だけ。
邪魔はせず、見守るのみ。
緊張しながら朝歌は橘たちが注文した飲み物を運んだ。
離れると2人は話を始めた。
※
「話って…なっ何?」
重苦しい空気が漂う。
彼はおどおどする癖がある。
別に私は怒ってはいない。
だから、余計にイラッとくることがある。
「今までのことなんだけど」
私は疑問に思っていたこと、疑っていることを、淡々と話した。
話し終えた所で、私は注文したミルクティーを一口飲んだ。
「何かある?」
棘のある言い方をしてしまった。
ちょっと反省しないと。
彼は顔面蒼白になって、俯いてしまった。
その態度は、どういう意味?
まさか、浮気がバレてしまったとか?
何か悪いことを隠してきて?
だんだんモヤモヤしてきて、そのモヤモヤが怒りに変わろうとしていた。
その時、ようやく彼は顔を上げた。
なんだか、意を決しているような。
「ごめん、不安な思いをさせて」
ハッキリと彼は言った。
「こんなに勘づいているのなら、ちゃんと言うよ」
どうしちゃったの?
急にハキハキ言うから、私の方が動揺する。
「実は、かおるの誕生日を計画していたんだ」
「えっ」
私の…誕生日…計画!?
「サプライズが頓挫しちゃったなぁ…」
頭をかいて、苦笑いの彼。
「たろちゃん…」
どうしよう、何て謝れば…。
ポン、といつの間にか横にいた昼仲が、私の肩を叩いた。
「やっぱりボタンの掛け違いだったな」
※
「本当にごめんなさい!たろちゃん!」
「いいよいいよ、僕の方こそ、ごめんよ」
誤解が解けたから、2人共良い表情だ。
「これ、どうぞ」
フルーツタルトが、今日のケーキでは目玉にしていたので提供した。
「頼んでないけど?」
「サービス」
「気が利くじゃない!」
「別に」
2人は仲良くフルーツタルトを食べ始めた。
ニコニコしている。良かった。
旦那さんは、朝帰りはただ急な夜勤で連絡する余裕がなくてのこと。
隠れてスマホは、嫁の為に検索。
甘い匂いは、夜勤で洗濯した時、柔軟剤の入れすぎで、匂いがハッキリとしていただけだった。
家事は嫁に任せっきりで、洗濯の柔軟剤の量を無駄に使っていたようだ。
「解決しましたね!」
「本当にありがとね!」
これで夫婦円満は保たれたな。
「こうして、たろちゃんとここに来れて良かった♪」
「僕もだよ」
「次は仲睦まじくで」
「デートの時に!」
「やだぁ!2人共!」
バシッと俺の腕を強く叩いた橘。
痛い、どんだけ力が余ってんだよ。
頬を赤くして…照れてんかい。
「本当に本当に!お騒がせしました!」
「す、すみません…」
会計が済んだ後。
2人は頭を下げた。
やめてくれ、気まずい。
「大丈夫だ」
「私達はただ環境を提供しただけですし」
朝歌は慌てながら両手をブンブン振って、大丈夫アピール。
「また来るから!」
「お待ちしております♪」
こうして2人は仲良く店を後にした。
「腕組んで帰ったね」
「ラブラブで結構」
喧嘩してるより良いからな。
「私達も負けずに仲良くしようね?」
「ん?」
恥ずかしいこと言ったか?聞き間違いか?
「もぅ!
その後、朝歌は暫くぷりぷりしていたのだった。
ごめんなさい、ちゃんと聞いてました。
やっぱり、恥ずかしいからさ。
いつまでも、仲良く、よろしくお願いします。
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