回想その1ー4
結婚して1ヶ月が経過した。
だいぶ落ち着いてきて、2人の生活にも慣れてきた頃。
私は、そろそろ良いかなと思って、
子供について、性について。
まず、子供は大歓迎と灯夜君は言っていたので安心した。
次に性については、やったことないし、知らないことだらけだし、きっと灯夜君の方が知っていると思っていた私。
だけど、違っていた。
彼も、そういう経験は、なかった。
興味のあることに真剣に取り組んでいた結果、交際は私が初めて、と今更打ち明けられた。
私も灯夜君が初めての彼氏だったから、おあいこだ。
驚きつつも、2人で相談した結果。
探りながらの出発となった。
1つ1つ分かってきて、ようやく最後まで出来るようになった。
そうすると、月日が経ち、私は体調の異変に気付いて病院へ。
医者から「おめでとうございます」と言われた。
コウノドリさん、ありがとう。
来てくれた…赤ちゃんだ。
メルヘンなことは置いといて、本当に嬉しくて幸せで。
灯夜君に話したら、大喜びして。
あまり感情を出さない彼が、初めて見せた一面。
これから
※
「数ヶ月が経ったある日、買い物に出掛けて、帰り道は気分転換に違うルートを通って歩いていたの」
俺の手を握った。
だから、優しく手を握る。
「数段の石階段を下りていた時に、後ろから急いでいたサラリーマンの人とぶつかって…」
黙って聞いている
「私…踏み外して転んで…」
「も、もう、いいです!」
「いや!」
体をビクッとした美歩さん。
「大丈夫…大丈夫…だから…」
消え入りそうな、掠れた声で、朝歌は続きを話し始めた。
「そうしたら、お腹が痛くなって…ぶつかった人はもういなかったから、自分で救急車を呼んで…」
俺は俯いた。
あの日、店が忙しくていた。
なくなった材料を1つ、朝歌に頼んで行ってもらった。
たかが、材料1つのために。
俺は後悔している。明日で良かったじゃないか。
悔やんでも、もう遅い。
「病院で診てもらったら、私にはどこも異常はなかった。ただね…ただ…」
ポトリ…
朝歌の目から涙が、落ちた。
「赤ちゃんは、お空に…帰っちゃった…」
ポトリ…ポトリ…
「なんで、あの時…通らない道を通ったのか…なんで、周りを見てなかったのか…どうして…どうして…」
美歩さんは朝歌を抱き締めて、背中を擦った。
「ううっ…うっ…」
「朝歌さん…朝歌さん…」
泣き止むまで美歩さんは待った。
※
「ありがとう…もう大丈夫」
「はい」
5分後に、朝歌は泣き止んだ。
「しばらくは前を向けなかったけど、時間が解決してくれたから、徐々にお店に出て、お客様とお話していたら、元気になってた」
「そうでしたか…」
「だから、今でもお客様のお悩み相談?みたいな感じで、お話しているんだ」
微笑む朝歌。
「で、数ヶ月前に病院に行ったら、先生がもう大丈夫って言っていたから、また頑張ってみることにしたの!」
「そうだったんですね!良かった!」
「うん!」
俺も驚いた。
良かったと思っている。
「今はぐうちゃんがいるから、直ぐに赤ちゃんって考えはなくて」
「うん」
「来てくれたら、良いね!って灯夜君と話してる!」
「そうですか!」
そう、焦らずゆっくりでも良いから。
「ぐうちゃんは、私達の子供のような大事な存在だから♪」
そのぐうは、寝ていた。
ぐっすりと、気持ち良さそうに、すやすや。
「こんな感じだよ!どうだった?」
俺と朝歌の話は終わった。
「とても貴重なお話を、ありがとうございました!」
目を輝かせて美歩さんは言った。
「朝歌さん…もし、もしですよ?」
「ん?」
「私の子と朝歌さんの子が同級生だったら、嬉しいなって」
「わあ!良いね!」
朝歌も目を輝かせている。
「その時はママ友になってね!今からタメ口で良いから!」
「いえいえ、そんな!」
「良いから良いから~♪」
遠慮する美歩さんと、遠慮はいらないという朝歌。
その後の話は世間話になり、楽しそうな会話となった。
俺は出来上がっていた品をキッチンから持ってきた。
「2人とも、はいどうぞ」
「「わあ!」」
俺が作っていたのは、焼きプリン。
ほんのり苦味をきかせたカラメルとの相性は抜群。
「「いただきます!」」
スプーンで掬って食べる2人は、幸せそうな顔だ。
「美味しいー!」
「すんごく美味しいです!」
「ありがとう」
2人はペロリと完食した。
「おかわりは?」
「すまん、ない」
「「えー」」
ブーイングするな。
「また今度な」
「しょうがないなー」
口をへの字にして、ふてくされる朝歌。
参った参った。
※
「本当にありがとうございました!」
「こっちこそ、話せてスッキリしたよ!」
これで、本当の意味で、立ち直ったのかもしれない。
「また来ますね!」
「待ってるよ!」
「はい!」
美歩さんは店を後にした。
「頑張ったな、朝歌」
「これで、もう、大丈夫」
「うん」
良かった良かった。
いつの間にか起きていたぐう。
俺と朝歌の間に割り込む。
「ぐうちゃーん♪」
「わん!」
朝歌はしゃがみ、ぐうを撫でたのだった。
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