相談事その8

 残暑が長引いているからか、汗が出てしまい、タオルは手放せない。


「だいたい、良いですかね?」

「メモをとったし、大丈夫かと」

「何かあれば、聞いて下さい!」

「ありがとうございます」


 今日は畑について、清水しみずさんから教わった。

 奥深いものだと思いつつ、しっかりやらないとという痛感が心に響いた。


「戻りましょう。暑いですから」

「確かに、そうしますか!」


 2人で店に戻ると、朝歌あさかがルンルンで箱の中を見ていた。


「清水君、お野菜ありがとう!今回も凄いね!」

「はい、自慢の野菜なんで!」


 また野菜を持ってきてくれたのだ。

 今回はトマト、きゅうり、茄子がぎゅうぎゅうに入っていた。


「トマトなんか大きいし!きゅうりは太くて長め、茄子はブクッと!」

「これでも訳ありらしいですよ」


 よく見ると、キズやらちょっとした小さな穴やら、歪な形があった。


「よく見ないと気付かないや!」

「確かにな」


 俺と朝歌は、野菜を見ながら言った。


「清水さん、これ」

「あっ、お預かりします!ありがとうございます!」


 野菜のお代をお支払いした。

 安く買えるから、本当に助かる。


「来年に向けて準備進めて下さいね!」

「はい、頑張ります」

「んじゃ、また!」

「「ありがとうございました」」


 爽やかな笑顔で、清水さんは店を後にした。



「自給自足の喫茶店、良いね♪」

「朝歌も畑の手伝いしてくれよ」

「やるよー!むしろ、率先してやりたいくらい!」


 だと思ったよ。


灯夜とうや君?」

「ん?」


 朝歌は恥ずかしそうに頬を赤らめている。


「何だ?どうした?」


 さらに赤くして、俯いてしまった。

 顔を覗き込もうとすると。


「ダメダメ!」


 俺に背を向けてしまった。


「言わないと、分かんないんだけど?」


 それからは、朝歌から言うまで黙って待った。

 待つこと10分。長いな。


「灯夜君…」


 やっと俺の方を向いた朝歌。

 まだ俯いている。


「ゆっくりで良いから、言ってみ?」


 すると、朝歌は深呼吸をして、息を大きく吸ってから言った。


「家に帰ったらなんだけど…」


 と区切って、俺の耳元に近付いて、小さな声で続きを言った。

 聞き取り、理解した瞬間、心臓が早くなるのが分かった。


「分かった」

「言うことじゃないのは分かるんだけど、なんとなく…」

「う、うん…」


 いくつになっても、緊張するもんだ。

 俺と朝歌だけかな?


「よろしくお願いします」

「こちらこそ」


 お互い、頭を下げた。

 顔を上げると、目が合い、笑い合った。

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