相談事その7ー3

 ぐうを志穏しおんに預けて、朝歌あさかと2人で、龍雄たつおの店に来た。


「こんにちは」

「おー、灯夜とうや!」


 相変わらずお元気で。

 また奥の事務所に通された。


「毎週月曜は龍雄は休みなのか?」

「月曜だけ、店のことは嫁さんに任せてあっから、俺は毎週月曜は休みなのさ♪」

「へぇー」


 店はやってあるから、不思議に思っていたけど、そういうことか。


「ところで、この子は?お前に妹いたか?」


 はい、出たー。例の質問。


「はじめまして、妻の朝歌です!」

「えっ?つ、妻!?」


 驚く龍雄。


「若い嫁さんかよ!聞いてないよ!」

「いや、年賀状で知らせたはずだが?」

「あー見てなかったー!」


 忙しいもんな、でも見ろよ。


「灯夜、やるなー!」


 ガハハッ!と豪快に笑っている龍雄。


「歳の差は何歳?」

「10歳です!」

「ええええええええ!?」


 ここ、奥の部屋で良かった。

 龍雄の声がデカすぎる。


「どこで知り合った?どっちから告白した?」

「俺達のことはいいから、ウェディングケーキの作り方を教えてくれ」

「俺は今、灯夜と朝歌さんの馴れ初めの方が聞きたい!」

「あのなー!」

「あとでお話しますから♪」

「ほんとに!?ありがとう朝歌さん!」


 呆れつつ、ようやく教わる準備に取り掛かった。



「ざっとこんな感じかな」

「なるほどな」


 教わり終えてひと休み。

 だいたいは理解した。


美歩みほさんには伝えてあるよな?」

「うん、ばっちし!イメージも来てたんだよ!」

「何で今?」

「灯夜君、一気に伝えるとパンクするでしょ?」


 まあ、確かに。


「灯夜君のキャパに合わせて、待ってたんだよ♪」


 俺って一体?


「よく分かってんな!」

「はい!」


 この2人の波長、合うのか?意外だ。


「これ、イメージのケーキ!」


 朝歌のスマホ画面を、龍雄と見ると。


「四角いやつか」

「段々よりは良いかもな!」


 正方形が2つ分の四角いケーキ型。

 生クリームをふんだんに使う。

 果物は俺に任せる、美歩さんとたけしさんの2人の絵を描いて欲しいとのこと。


「絵って…いやいや」


 描けん、似顔絵なんか。


「朝歌、似顔絵は?」

「無理だお♪」


 笑顔ではっきりと言われた。


「龍雄は?」

「あー、無理」


 えぇ…。


「ちょっと待って!」


 朝歌は誰かに電話をかけた。

 スピーカーのボタンを押すと、聞き覚えのある女の子の声が。


『朝歌さん、どうかしましたか?』

「志穏ちゃん、聞きたいことがあるの!」


 志穏に電話をしたようだ。


「似顔絵とかって得意な方?」


 すると『はい、見てみます?』と、朝歌のスマホがピロリンと鳴った。

 朝歌は直ぐに反応すると「わぁ!」と声を溢した。


「凄い!これなら良いじゃん!」

『何がですか?』

「ぐうちゃん、迎えに行った時に!」

『分かりました!』

「じゃね、バイバイ♪」

『はい、失礼します!』


 電話を切ると、俺の方に画面を向けた。


「これなら良いでしょ?」

「「!?」」


 俺と龍雄は驚いた。

 志穏の絵がすこぶる上手いから。


「描くだけなら、やらせても良いか?」

「だよな?」

「はい、決まりー♪」


 こうして志穏が絵の担当に。

 俺は絵以外を、美味しくなれと、心を込めて作ることとなった。



「良いですよ!頑張ります!」


 ぐうを迎えに志穏の家に来た。

 話をしたら、すんなり決まった。


「さぁ、ぐうちゃん、帰るよ~♪」


 ぐうは朝歌に抱っこされた。


「ラフ画が出来たら、美歩さん達に見てもらうから良い?」

「分かりました!ササッと描きますね♪」


 こうして、俺達3人と龍雄の計4人で、ウェディングケーキに取り掛かるのだった。

 本番、緊張しそうだな。

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