相談事その6ー4

 閉店した喫茶 はと。

 集中を切らすことなく、でも朝歌あさかのことも忘れず。

 今は2人並んでカウンター席に座っていた。

 ぐうはどこか心配そうに俺と朝歌の様子を見ていた。


灯夜とうや君」

「ん?」


 あまり重たくならないように、軽く優しく反応した。


「結婚して2年目じゃん」

「うん」

「私、こっそり病院に行ったのね」

「えっ」


 初耳。気付かなかった。


「いつ行った?」

「先月。ほら、出掛けるーって言ったあの日」

「…あぁ、あの日か」


 思い出した。

 出掛ける時はいつも「灯夜君も行こうよー!」と言うのに、あの日は結婚してから初めて朝歌は1人で外出した。


「それでね?」

「うん」

「大丈夫って主治医が言ってた」

「?」


 大丈夫、てことはー…。


「まさか」

「そのまさか」


 これは…一大事だ。


「とりあえず、焦らないから始めようね?」

「だな」


 朝歌は俺の手をとる。


「来てくれるかな?」

「焦らなければな」

「そうだね」

「無理はしない」

「うん」


 ゆっくり、待とう。


「ぐうちゃんいるし、寂しくないし!」

「そうだな」

「わん!」


 不安な表情はどこへやら。

 また笑顔に戻った朝歌。

 良かった良かった。元気になって。


「さっ帰ろう♪」

「おう」


 荷物を持って、ぐうも連れて。

 身の回りを確認し、電気を消して、店を出て、鍵をかけた。


 温かみのあるこの喫茶店。

 暗くなると、また雰囲気が変わった。

 灯りって、凄いな。なんて思った。

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