休憩その1

「お散歩行って来るね!」

「「行って来まーす!」」

「はい、行ってらっしゃい」


 朝歌あさかはぐうの散歩に出掛けた。

 ぐうを連れて来た、あの子達と一緒に。


 散歩の手伝いをしに、たまに来てくれるようになったあの子達。


 2人は兄妹で、名字は須恵すえ、兄は光希みつき、妹は光羽みつば、と言うことを知った。


 人懐っこい2人。

 元気だし、お手伝いのご褒美に、おやつをあげてるが、それを「美味しい」と言って、美味しそうに食べるから、見ていて微笑ましく思う。


 子供…かぁ…。

 まだ、かな…。


 「ふぅ…」


 さて、準備準備。


 開店まで、あと30分。

 気を取り直して作業を再開した。



「「「ただいまー!」」」

「おかえり」


 午後3時過ぎ。

 3人と1匹は帰って来た。


「ぐうちゃん、今日もいつもの所で止まったけど、帰りは歩いたから進歩したよ!」


 いつもの所とは、木々を抜けて直ぐの所。

 帰りも歩いたなら良いじゃないか。


「何で、あの場所から先はダメなんだか」

「不思議よね?」


 ぐうはキョトンとしていた。

 不思議なやつだな。


「はい、手洗いして来よっか!」

「「はーい!」」


 手を洗いにトイレに行った朝歌と子供達。

 その間に、生地は出来ていたやつを、冷蔵庫から出し、フライパンを温めた。

 油を少量ひいて、生地をお玉で掬ってフライパンに流す。

 ふつふつと、穴が出来た所で返した。

 うん、良い色。


「はい、2人とも座って座って!」


 手洗いから出てきた3人。

 カウンター席は高さがあって危ない為、2人用のテーブル席に座らせた。


「甘い匂いがする!」

「今日は何だろう?」


 1枚皿に移し、また生地をフライパンに流す。

 返して、焼いて、皿に。

 繰り返すこと10分。

 上にバターを乗せて、蜂蜜をかけて出来上がり。


「朝歌、運んで」

「はーい♪」


 お盆に出来上がったそれを乗せて、フォークを2つと共に、朝歌は運んだ。


「お待たせ~♪ホットケーキだよ♪」

「「わぁ!」」


 さっそく2人はフォークを持って「いただきまーす!」と元気良く言ってから食べた。


「「美味しい!」」

「ありがとう」


 口を大きく開けて美味しそうに食べる2人を見て、本当に可愛いなと思った。


灯夜とうや君」

「何?」


 いつの間にか隣にいた朝歌。


「可愛いね、あの子達」


 今にも泣きそうな、でも、慈しむような目で、子供達を見詰めていた朝歌。

 それだけで、俺は朝歌の頭を撫でた。


「灯夜君?」


 キョトンとする朝歌。


「ほら、そろそろ食べ終えそうだぞ」

「あっ、本当だ」


 手を引っ込めると、朝歌はサッと光希と光羽ちゃんの所に行った。


 こればっかりは、どうにもならないから。

 優しく寄り添うことしか出来ないから。

 いつか、叶ったら、その時は。


 以上に、大事に守ろうな。

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