相談事その4ー2

「友達とじゃあねって言って教室を出たんです」

「うんうん」

「そしたら、そ、そし…たら…」

「はい、ティッシュ!」


 羽柴はしばさんは、鼻をかむ。


「好きな人が…女の子と一緒にいて…」


 悪夢を見てしまったのか。


「彼が私に気付いて…」


『あっ!志穏しおん

夏馬なつめ君…』

『志穏のおかげで、彼女出来てさ』

『てことは、今まで話していたって…夏馬君だったんだ』

『恥ずかしくて言い出せなくてごめん』

『ううん、大丈夫大丈夫!』

『先輩、はじめまして、1年の水城みずしろです』

『はじめまして、羽柴です』

『じゃっまたな!たくさん相談に乗ってくれてありがとう!』

『ど、どういたしまして!』


「…ショックが大きくて、傘も忘れて…急いで内履きを下駄箱に突っ込んで、ローファーを履いて走って学校を後にして…」

「ここまで来たわけだ」

「はい…」


 失恋はツラいな…。

 気持ちを伝えられず強制的にフラれるなんて。

 耐えられないよな。


「友達の話ってワード、だいたい本人説なのに、何で気付かなかったのか…」


 あー、友達の話は、だいたい本人説…確かにな。

 力なくシュンとする羽柴さん。

 それに朝歌あさかは彼女の肩をポンッと叩いた。


「強制的にフラれたけど、まず、気持ちは伝えたら?」

「えっ?」


 キョトンとする羽柴さん。


「言わなきゃ、ずっと、もやもや~ってなるよ?」


 時間が解決するけれど、しばらくはもやもやするのを考えると、耐えられないかもしれないよな。


「その彼、悪い人じゃなければ、伝えて損はないと思う!」


 ニッと笑った朝歌。

 その顔を見て、羽柴さんは、何か決意したようだ。


「分かりました…伝えます!」

「おー、良いよー!」


 高2の恋の結末は、気持ちを伝えることから始まるようだ。



 カランコロン…。


「こんにちは!」

「志穏ちゃーん!」


 1週間後のことだった。


「朝歌さん、灯夜とうやさん」


 これは、もしや、かもしれない。


「あっ、ぐうちゃんも」

「クゥン?」


 首を傾げるぐう。

 言葉、分かるのか?いや、たまたまか。


「伝えました!すっきりしました!」


 満面の笑顔で羽柴さんは言った。


「それは良かったね!」


 朝歌は興奮している。


「伝えた後、ギクシャクするかと思いきや、逆によく話すようになって…笑っちゃいます」


 相手の男子、もしかしたら申し訳ない気持ちなのかも。

 いきなり距離を取ると怖いって思ったのかもだし。


「本当にお2人には感謝です!ありがとうございました!」

「いえいえ♪」


 解決して良かった良かった。


「あの、1つ良いですか?」

「何かな?」


 すると、羽柴さんは深呼吸をしてからこう言った。


「うちの学校、申請して許可されれば、休み期間中のアルバイトが出来るんですが」


 そこで区切って、続けた。


「もし許可されたら、ここでバイトさせて下さい!」


 深々と頭を下げた羽柴さん。


「灯夜君、私は良いと思うんだけど?」


 俺に委ねる感じかい。

 重要なことはいつも俺が決めてるからなぁ。


「接客、お願いしようかな」

「てことは…」

「よろしく。でも、暗くなる前には帰すから、勉強は疎かにすんなよ」

「はい!ありがとうございます!」


 喫茶店を開いて、初の学生のアルバイトを期間限定で雇うこととなった。

 まっ、ぐうの散歩も任せても良いのかもしれない。


「よろしくね、志穏ちゃん♪」

「よろしくお願いします!」

「わん!」


 賑やかになりそうだ。

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