相談事その4

「土砂降りだね…」


 窓の外を見る朝歌あさか

 今年の梅雨の中では1番の雨量だ。

 お客様も全く来ない。


「今日は早く閉めるか?」

「それが良いね」


 1時間早めて閉店しよう。


 そんなことを考えながら、お客様を待ってみた。



「よし、終わろう」

「そうしよっか」


 午後7時になっても、誰も来なかった。

 隠れ家的な場所な為、来ない時は来ないのだ。


「わん!わん!」


 突然ぐうが吠えた。


「どうしたの?ぐうちゃん」

「わん!」


 すると、カランコロン…と、音が聞こえた。

 出入口を見ると、ずぶ濡れの人が立っていた。


「「えっ」」


 驚いて硬直した後。


「大丈夫!?灯夜とうや君、タオル!」

「おう!」


 慌てて朝歌はその人に駆け寄った。

 タオルを見付けて、それを朝歌に渡す。


「何で濡れてるの?」


 顔は見えないが、制服を着ていて、スクールバッグを持っている、となると高校生くらいだろうか。


「うぅっ…」


 えっ?泣いてる?


「うわぁーん!」

「「!?」」


 さらに、俺と朝歌は慌てる。


「と、とりあえず、座って?ね?ね?」


 カウンター席に座らせた。



「ありがとうございます…ぐすん…」

「落ち着いて良かったよぉ」


 泣き止んで、今はホットミルクを飲んであったまっていた。


「高校生?」

「はい」

「お名前は?」

羽柴はしば志穏しおんです」


 スカート=女子ではない時代。

 だが、この子は女の子のようだ。

 声は高くて、可愛らしいから。

 おっさんが、こんなことを言うとアウトだよな、ごめんなさい。


「どうして、傘も差さずに濡れちゃったの?」

「折り畳みはバッグにあります…でも…」

「?」


 羽柴さんは俯き。


「ぅっ…うぅっ…」


 また泣いた。


 朝歌は背中を優しく擦りながら「大丈夫大丈夫」と声をかけた。

 3分くらい経過し、落ち着いたのか、羽柴さんは顔を上げた。


「見てしまったんです…」

「何を?」

「実は…」


 ゆっくりと語り出した。

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