相談事その3

 梅雨の時期になり、じめじめしてる今日この頃。


 常連客にすっかり愛されるようになった、看板犬のぐう。


 今日もケージの中で、すやすや。

 よく寝て、食べて、よく寝てる。


 散歩は意外と好き。

 でも、歩く距離は短い。

 木々を抜けた所で、ぐったりするから、結局抱っことなる。

 大きくなったら抱っこはキツくなるだろう。

 対策を考えないとな。


「さっ!開店の時間だよ!」

「はいはい」

「グゥー…」


 バタッ!

 ポポーッ!ポポーッ!ポポーッ!

 パタン!


 午後3時、喫茶 はと、開店です。



 午後8時。

 ぽつりぽつりと、お客様が帰っていく中。


 カランコロン…。


「いらっしゃいませ!」


 スーツを着た男性、サラリーマンだろうか。

 傘を傘立てに入れて入店。

 2人用のテーブル席に近づき、窓側の椅子に座る。


「すみません、コーヒーを1つお願いします」

「かしこまりました」


 様子を見ると、どこか疲れているようだ。

 仕事がキツいのだろうか、何なのか。


「お待たせしました、コーヒーです」

「ありがとうございます」


 朝歌あさかはそそくさと俺の所に来て。


「おかしい、大丈夫かな?」

「大丈夫には見えないな?」


 小声で会話する俺と朝歌。

 仕事をしながら、さらに様子を見ていると、男性はスマホの画面を見てため息を吐いた。

 肩を落として、ガッカリしている。


 朝歌はウズウズしていた。

 俺に視線で『声をかけたい!』と訴える。

 それに対して俺は首を横に振った。

 すると、朝歌はむすっとした顔に。


 相手から話さなきゃならんだろう。

 ずかずか聞いてはいけない。


 ぐうはと言うと、静かに寛いでいる。

 珍しい、起きてる。

 夜更かしするなよ。


「すみません…」

「はいはーい!」


 待ってました、と言わんばかりに朝歌は身を乗り出すように、男性に近付いた。


「ここって、愚痴とか相談とか、話し相手になってくれるって聞いてきて…」

「はい、大正解、その通りです!」


 目が輝いている。朝歌、本業は喫茶店な?


「じゃあ、聞いてもらっても良いですか?」

「もちろんです!ねっ、灯夜とうや君?」

「おっ、おぅ」


 俺に振るな。


 さて、どんな話が待っているのやら。

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