相談事その1ー3

「いらっしゃいませー!」

「こんにちは、お久しぶりです!」

「わぁー!美歩みほちゃーん!」


 1ヶ月ぶりに館花たちばなさんが来店した。

 隣は、もしやー…。


「あっ!お隣の方はもしかして?」

「はい、彼氏です!」

「はじめまして、堂上どうがみたけしです」


 高身長でスラッとしているが、肩幅はあって、意外と筋肉質なのかもしれない。


「ゆっくりしていって~♪」

「「ありがとうございます」」


 館花さんと堂上さんはカウンター席に座った。

 そして、館花さんはミルクティーを、堂上さんはコーヒーを注文。


「はい、どうぞ♪」


 朝歌はそれぞれに注文の品を運び、目の前に置いた。

 早速2人は同時にカップを持ち、一口飲んだ。

 2人は「美味しいね」「そうだね」と微笑ましい会話に癒される。

 ゆっくりした後、館花さんは俺と朝歌を呼び、こう言った。


「あの、報告があるんです」


 報告…てことは…!

 朝歌あさかはニコニコしながら次の言葉を促す。


「彼と婚約しました!」

「キャーッ!おめでとー!」


 店内に他の客がいなくて良かった。


灯夜とうや君、あれを!」

「はいよ」


 焼いておいたスポンジケーキを出し、まず脇から横に切り2枚にする。

 1枚目のスポンジケーキの上に生クリームを塗り、そこに苺、キウイ、蜜柑の3種類を散りばめる。

 もう1枚目のスポンジケーキにも片面に生クリームを塗り、塗った方を下にして果物を挟む。

 あとは脇やら上やらを残ったクリームをムラなく塗る。

 上に残った果物と長方形のクッキーを乗せる。

 クッキーにはチョコペンでお祝いの言葉を書いてー…。


「はい、出来上がり」

「お祝いなんで、プレゼント~♪」

「わぁー!すごーい!」


 ケーキはお持ち帰りするとのことで、用意していた箱に入れた。


「気をつけて下さいね」

「慎重に慎重に…!」


 幸せな報告を聞けて嬉しい気持ちになる。


「また来ますね!」

「今度は赤ちゃん連れてきてね♪」

「やだ、朝歌さんったら!」

「あはは!」


 館花さんと堂上さんは会釈してから、店を出た。


「良かった良かった」

「ほんとにねぇ♪」


 ルンルンの朝歌は、楽しそうに片付けをする。


「幸せな人達から、幸せのお裾分けをしてもらった気がする」

「そうだな」


 バタッ!

 ポポーッ!ポポーッ!ポポーッ!

 パタン!


「もう午後6時か」

「早いなぁー」


 朝歌は外を見ている。

 きっと視線は空だろう。


「…」


 なんとも言えない、切なく悲しく悔しく…そんな表情。

 この表情の時はそっとしておく。


 カラン、コロン…。


 ベルが聞こえると、それが切り替わりの合図のように、朝歌はいつもの笑顔になる。


「いらっしゃいませ!」


 ちょっとだけ、胸の辺りが締め付けられたような気がした。

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