第5章 虐殺
20.決定
新留村の惨状は皇帝の耳にも届いていた。
皇帝はもちろん、村人への締め付けの強化を命じた。
だがそれでも被害は収まらない。
皇帝にとっては、異教徒の村人が何人死のうが一向に構わないし、むしろ好都合だ。
しかし皇帝に忠実な一般の役人や軍人までもが犠牲になっているとなれば、話は別である。
これは天神様からの罰だと皇帝は信じていたし、それに反対する人間は皇帝の周りにはいなかった。
「異教徒の取り締まりと矯正だけでは足りん」
皇帝は言った。
「異教徒の存在を根こそぎ消さない限り、天神様のお怒りは収まらん」
それはつまり、新留村とその周辺の村人たちを、軍事力をもって全滅させるという決断だった。
「異教徒を根絶やしにせよ。天神様の御心のままに」
ただちに戦車が用意された。他の地域からも軍人たちが集められ、戦車に乗って首都を出て、一路、新留村を目指した。
新留村の役人と軍人には電話で通達が行っていたが、村人たちはこのことを知る由も無かった。
ただ、急に監視兵たちからの折檻がなくなったことに、不穏な違和感を覚えるだけであった。
そんなわけで、これから何が行なわれるのかを彼らが本当に知ったのは、コンクリートの壁の出入り口から、戦車が続々と侵入し始めてからのことだった。
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