第693話
おはようございます。気が付いたら翌日の朝どころか昼間になってたアマネです。
完全に寝過ごしたけど、ユーリも同じだったみたいで慌てて支度をしてたので、まぁ私だけが悪いってことはないよね?
「で、私達が寝てる間に勝っちゃった、と……」
『被害もほぼ無いな。一部の強者に足軽連中が何人かやられた程度だ』
『騎士の被害もそんな感じだねぇ。まだ日の浅い新人が何人か。まぁ、相手はそれなりに大きいところの幹部って話だし?』
拠点内で大まかな報告をしてくれるのは、嘗て『剣豪将軍』と呼ばれていた足利義輝と、まだ出番には早いと待機を命じられてしまったアーサー王。
モードレッド達は既に城壁上か前線に出ているらしく、起きたら色々と説明しておいてくれと頼まれてしまったので、まぁしょうが無いかと大人しく拠点内に残ってくれたそうだ。
『西門、正門、東門の防衛戦はこちらの勝利。敵戦力にも壊滅に等しい被害を与えている』
『というわけで、残敵掃討戦に移行し始めているよ』
「残敵掃討……もしかして、前哨基地を攻め落とす的な感じですか?」
『まぁ、言ってしまえばその通りだな』
何でも、正門側の戦力は信長の指揮の下で鉄砲、弓、投石と迫撃砲の砲撃であっという間に片付いてしまったらしく、控えていた他の人達が暴れ足りないと駄々をこねたそうだ。
西門はモンスターが担当しているので、武士や兵士、騎士や傭兵の出番は正門か東門しかない。
しかし、正門側のプレイヤーは遠距離射撃や砲撃で壊滅したそうだし、東門側のプレイヤーもほぼほぼ総崩れとなっていて、彼らが暴れられる戦場は近場に無くなってしまった。
「じゃぁ、今頃前哨基地は……」
『総攻撃を受けているだろうな。それも、こちらにいる猛将や勇将が率いる軍勢に、だ』
攻め込んでいる武将の数は相当いるらしく、織田家だけでも柴田勝家や森可成、前田利家に丹羽長秀、山内一豊や佐久間盛政など、この他にも数え切れない程の武将が参加している。
簡単にまとめてもらった主要な武家のリストを見せてもらったが、それはもうオーバーキルって言葉が色々と生温くなる程で……
「えっと……これ、ざっと読み上げた方がいい?」
「私達には見る勇気がないから……お姉、お願い!」
ユーリが代表でそう言ってきたので、仕方無く私がその一部を読み上げることにする。
まずは豊臣家だが、こちらは加藤清正、福島正則、石田三成、大谷吉継、弟さんの豊臣秀長に、片桐且元、脇坂安治、中村一氏、仙石秀久など、大体十名以上。
続いて徳川家だが、こちらは東門に行っていた人がいたのであまり多くない。
と言っても、徳川四天王と呼ばれている酒井忠次、榊原康政、井伊直政の三人に、偵察に向かっている服部正成を除いた徳川二十八神将が参加していたらしいんだけどね。
武田家と上杉家、真田家と伊達家は東門の戦いに参加していたので今回は見送り。代わりに今川家と毛利家が武闘派の人を連れて出撃した。
今川家だと岡部元信や朝比奈泰能、鵜殿長持等で、毛利家からは毛利十八将と呼ばれた武将達。三本の矢の話で有名な毛利隆元、吉川元春、小早川隆景という三人の武将もその中に含まれている。
「スメラミコト勢だけでコレだけいるの……?」
「シン国の武将もいるから、更に数は多いんだよねぇ……」
趙雲とか張遼とか馬超とか孫権とか、兎に角シン国側の武将もコレと同じくらい多い。これ以上数えるのは目が痛くなるので、ちょっと休憩を挟むとしよう。
というか、円卓の騎士も東門に行っていたみたいだけど、モードレッドとゴリアテはそのまま前哨基地の攻撃にも行ったのか……
「なんか、ここでゆっくりしてるのが申し訳無くなりそうな感じだねぇ……」
「我々の総大将はアマネ様であり、この拠点の礎を築いたユーリ様達ですからね。こちらの映像でも観て、現地の者を応援していただければと思います」
そう言ってガラティアがテレビのリモコンを操作してボタンを押すと、画面には現在侵攻形……じゃなかった。現在進行形で攻撃されている前哨基地の映像が映し出される。
火矢に爆薬に投石に油壺にと、兎に角様々なものが投げ込まれて大炎上している前哨基地。生産職のプレイヤーも武器を持って抗おうとしているようだが、戦闘民族な武士達には全く敵わない。
「逃げる人達は放置なの?」
「リクエスト通り、彼らの拠点を落とすのは今夜の日付が変わった後ですからね。最終的に刈り取るのですから、遅くても早くてもどちらでも良いのです」
ユーリの質問にそう答えるガラティア。遅くとも日暮れ時には、ヒビキ達が各地に点在するクランホームの座標の情報を持ち帰ってくる。
そして、何十とあるプレイヤー復活後の拠点を、全戦力を放出して片っ端から陥落させて中のクリスタルを全部貰っちゃおうって話になっていた。
「うわぁ〜……そんな話になってるの?」
『まぁ、お疲れ気味の君達を気遣ってもいるんだけどね。ほら、あんまり長期戦にしてしまうと色々擦り減ってより一層疲れちゃうからさ』
「気遣いは嬉しいけど、他のプレイヤーが可哀想になってくるなぁ……」
今のところ、プレイヤーVSプレイヤーではなくプレイヤーVSNPCの構図になっているわけだから、イベントの趣旨からズレて不満たっぷりなプレイヤーが湧いてそうな予感。
「サムライブレイダーズとかは喜びそうだけど、翼の騎士団とかは……」
「騎士団の団員は円卓の騎士と戦えて満足しているかと。両者共、憧憬の存在を目の当たりにして無謀な突撃を繰り出した辺りがそっくりなので」
あ、それなら別にいいか。サムライブレイダーズも翼の騎士団も、本来ならば戦えない相手と戦えて満足出来てるんだろうし、補填とかは考えない方向でいいだろう。
他の一般プレイヤーも、歴史的に有名な武将とか騎士と戦えてきっと嬉しく思っている筈だ。例えそれがやられ役だったとしても。
「取り敢えず、ホットサンドが美味しいってことだけは頭の中に入ってるからヨシ!」
「何も覚えられてないじゃん……まぁ、確かにホットサンド美味しいけどね?」
朝食兼昼食のホットサンドがカリカリとしてて美味しい。ガラティアがホットサンドメーカーを導入してたのはわかってたけど、このタイミングで御披露目になるとは思わなかったよ。
一口齧ればサクッとした音と共に、内側の熱々チーズを乗せたハムが口の中に旨味を広げ、飲み込めばすぐに二口目を口に頬張りたくなる。
「ユーリも人の事言えないねぇ……」
「まぁ、妹だし。あ、テレビに映ってるの、フロリアじゃない?」
そう言われてテレビを見てみると、ゴリアテと斬り結び合う両手剣使いの女剣士の姿が確認出来る。闘技大会で戦ってる姿は見たことはあったけど、装備が変わってるからちょっと認識するのに時間が掛かった。
直接言葉を交わした事はないけど、多分あの女剣士が話に聞く翼の騎士団の団長、フロリアなのだろう。
両手剣を振り回して戦うフロリアだが、縦横無尽に両刃の大剣を振り回すゴリアテと比べると、こう言っては何だが下位互換のように見えてしまった。
実際、ゴリアテの剣は壁や置いてある木箱等もお構い無しにガンガン斬りまくっているのだ。まだ仮の大剣だと言うのに、随分と無茶苦茶な戦いをしている。
「あ、人ぶん投げた。アレは邪魔だったの? それとも投げるのに丁度良かったの?」
「……どっちもじゃない?」
邪魔だったら多分斬ってるだろうから、多分投げた上でまとめてぶった斬ろうって魂胆だと思う。ゴリアテのパワーと性格的に、それくらいのことは普通にやるだろうからね。
この読みは正しかったようで、投げられた人に驚き躊躇したフロリアが、そのまま投げられた人と一緒に縦に振り下ろされた大剣で両断されたし。
ホント、ウチの面々って戦闘に於いてはゴリアテに限らずかなり物騒になるよね。
モードレッドだって黒炎を剣に纏わせながら、容赦無く生産職なプレイヤーを斬り裂いているようだし、龍馬もすれ違いざまに首を斬り落としてるし。
「うわぁ……戻ってきたら、何この惨状……」
「あ、おかえりヒビキ。ホットサンド食べる?」
「頂くわ……道理で、基地の方が騒がしいわけね」
白い皿の上に乗ったホットサンドを掴んで食べるヒビキ。どうやら調査部隊の面々は無事に戻ってきたようだが、ヒビキは何か疲れている様子。
「前哨基地でドンパチやり始めたから、他のクランホームに撤退するプレイヤーやリスポーンするプレイヤーが増えてきてね……」
「あー……急いで撤退したんだ」
ちょっと迷惑を掛けた形にはなったが、調査自体は終わっていたので帰る口実に丁度良かったというのが本音らしいけどね。
持ち帰った情報は素早く軍師組に報告されているそうなので、今頃本館で大勢の軍師達があーだこーだと話し始めている頃だろう。
「それで、今日のアマネの予定は?」
「未だに寝落ちしてる他の面々が起きたら、公開でライブの練習をしようと思っててね。ほら、ユーリの活動の方もここなら見てあげられるし」
「お姉に見てもらうのってめちゃくちゃ久々だし緊張するなぁ~…………!」
どうせ戦うのはモードレッド達になりそうだし、私達は盛り上げ役として大騒ぎさせてもらおうか。
後、単純に私がユーリと一緒に歌いたい! って言うのもあるんだけどね!
「ヒビキさん? 妹ならわかるよね?」
「参加するに決まってるでしょ。この機会、逃したら次は何時になるか……」
…………別に私的には何時でもいいんだけどなぁ?
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