第574話

 スカアハの家から再び旅を再開した私達。ユーリ達から色々と詰め寄られて知ってる事とやってる事全部吐け! と怒られたけど、私なんか悪いことした?


「対主神及び反帝国同盟って……」


「フランガとオルンテス以外は加盟してる同盟。ちなみに全部で十ヶ国くらいかな」


 マギストス、マルテニカ、アラプト、ノルド、ヴェラージ、ケーニカンス、キャメロット、ウォルク、レン国、スメラミコトで合計十ヶ国。


 正直なところ、戦力的にはこの十ヶ国にプラスしてニャル達とか古代兵器とか、その他諸々でもっと跳ね上がっている。


「聖教国はどうなんですか〜?」


「国としては中立かな。でも、私の行動に対しては黙認って感じ。代表の竜がそう言ってたからね」


「……代表の竜って、守護龍じゃね?」


「だよ? ウチのクランホームにも元守護龍住み着いたし」


「え!? 何それ、私達の知らない間に事が進み過ぎてない!?」


 進み過ぎてるというか、もう帝国の終焉が見えてきてる。今の戦力なら勝てるような気がしなくもないからね。


 というか、仮にメインストーリー的なものがあるとしたら、もうそれ大半どころか一割か二割くらい残ってるかどうかの問題になってる気がする。


 現状で一般的なプレイヤーの進行度がマルテニカ東部からギリギリ聖教国に入るか入らないか、といったところ。前線組もマルテニカ東部から少し立ち往生気味らしいので、本格的な聖教国入りは少し先の話になるだろう。


 その裏で、私はまだプレイヤーが足を踏み入れられない国々に来訪して、そこのメインクエストに相当するものをシッチャカメッチャカにした上でクリアしている。


 となると、帝国と開戦した時点で一気に時計の針が進んで、メインストーリーが終了する可能性も少なくない。


「ウチの戦力、確かに強いなぁって思ってたけど……」


「とんでもない計画が裏で進んでたんだなぁ……」


「ん。流石、真の最前線組。あ、でも一人だから先駆者の方が正しい?」


 今のところ、ウチの関係者以外のプレイヤーでコレを知ってる人はいないだろうからね。ユーリ達がほへ~っと呆けているのも仕方が無い。


 というか、オーバーテクノロジーな面々を見せたらもっとヤバい反応してくれる気がする。ここら辺に、いい感じの遺跡とか方舟とか落ちてないかな……


















 えー、確かに私は何処かにそんな遺跡とか方舟とか落ちてないかな〜って思ったよ? 思ったけどね?


「まさか、ホントにあるとは思わないよ……」


「もしかして、また何かフラグになることを考えていたんじゃないでしょうね?」


 ヒビキにそうツッコまれたけど、それ正解。ここまで早いフラグ回収は想定して無かったけど……


 今、目の前にあるのは墜落したであろう方舟が三隻程。大分年月を経ているのか、その表面には苔やらツタやらがビッシリとくっついている。


「でっかー……ねぇ、これ何なの?」


「エーディーンで開発された方舟だな。崩壊の際に非戦闘員の避難の為、各地に散らばったと聞き及んでいるが……」


「マルテニカの国民の半分近くはエーディーンの避難民だったのかもね。そう言えば、キャメロットとマルテニカは例の病の被害が酷かったと聞いているよ」


 モードレッドの言う例の病とは、ゼウスらが掛けた黒化の呪いのことだ。エーディーンの生き残りを悉く滅ぼした呪いは、直接的な関係の無い各国にも少なくない被害を及ぼしている。


 恐らく、ここの方舟はマルテニカやキャメロットに避難し入植した難民達が乗っていたものなのだろう。


「どの方舟も見た目よりは損傷箇所が少ないように見えるな。尤も、素人の目ではそのように見えるだけかもしれんが……」


「……もしかして、ノアの方舟がモデルなのかしら?」


「ん。大洪水の際にノアが作った船。避難民を乗せた船だから、間違ってないかもしれない」


 そう言えば、この方舟を作った人ってまだ知らないんだよね。設計者なり研究者なり、絶対に名前を残した人がいると思うんだけど……


 実は本当にノアの方舟だったりして。後でクリオン達に聞いてみようかな?


「わ!? なんか出てきた!?」


「これは……エジソンが研究していた、オートマタじゃないか?」


 そんな方舟を眺めていると、金属の軋む音を立てながら何体もの人型がこちらに向かって動き難そうにしながら歩いてきているのが見えた。


 サビだらけの見た目から察するに金属製。恐らくだが、以前エジソンが研究していたオートマタと呼ばれている子達なのだろう。


「あのままだと、何かの拍子で壊れてしまいそうですね~……」


「お姉、なんとかならない?」


「大丈夫、なんとかするよ」


 指輪を輝かせて呼び出すのは、オーバーテクノロジーに染まりきったリキッドメタルゴーレム達。転移陣を肩に担いだ子がそれを地面に突き立てると、瞬く間に他のリキッドメタルゴーレム達も転移してくる。


 サビだらけのオートマタ達は、次々と現れるリキッドメタルゴーレム達のことを最初は警戒していた。


 だが、同じ無機物系のモンスターであるからか、チカチカと目の部分を点滅させてモールス信号のようなやり取りをし、ゆっくりとゴーレム達に体を預けていく。


「方舟の方も大丈夫そう?」


 オートマタの修理をするゴーレムとはまた別に、方舟の方にも大量のゴーレム達が集まっていく。


 何方かと言えば、ゴーレム的にはオートマタ達より方舟の方が手を付けたい代物だ。何せ、他の場所でもそういった古代兵器の類を近未来化改修しているわけだからね。


 取り敢えず表面の掃除からだと、属性石の力を利用した高圧水流でブシューと苔やツタを一気に洗い落としていく。


 方舟の入口を見つけた子は、そのまま中に入って片付けを始めている。このまま放っておけば、ここの方舟も彼らの作りたい超兵器へと改造されることだろう。


「ねぇ、ゴーレム達は方舟をどうするの?」


「使えるパーツを組み合わせて改造して、動かせるようになるまで直す感じかな? 何を作るかはゴーレム達が決めることだけどね」


 試しに何を作るか予定を聞いてみようかな。これだけ沢山方舟があると、多分相当な代物を作ろうとするだろうし……


 ということで、近くのリキッドメタルゴーレムにこの方舟はどうする予定か聞いてみる。近未来化改修をするのはわかっているから、どんな兵器にするのかを中心に聞く。


 すると、リキッドメタルゴーレム達は『三隻あるから連結して装甲列車を作る』という答えを返してくれた。


「三隻全部繋げて列車を作るんだって」


「列車!? え、機関車ってこと!?」


 想定しているスペックというか武装とかなのだが、まず主力兵装となる砲塔は自作。それ以外は方舟を改造したものと、他の兵器の予備パーツや余り部品を使って一両分を作るそうだ。


 列車を操作するのはリキッドメタルゴーレムと、ここの管理をしているオートマタ達。錆取りされたオートマタ達には後で武装を追加する予定らしく、それの改造はユーリ達がいない間に済ませるという。


 まぁ、下手な近代化改修はユーリ達がうるさいだろうからね。そうしてもらえると個人的には助かるかな〜って感じ。


「列車かぁ……大陸横断鉄道?」


「ふむ。乗り物というのはわかるが、列車というものがどういうものなのかは知らんからな……」


「そこは完成してからのお楽しみってやつだな。ま、コイツらが作るんだからきっと面白いもんが出来る筈だぜ?」


「ちょっと楽しみだね。どうせなら、ここ以外の大陸にも行けるようになるといいんだけど」


 あ、ルジェがそんな事を言うからリキッドメタルゴーレム達がやる気を出してしまった。


 これは、銀河鉄道ルートに進んでしまったかもしれない。浮遊走行列車……あ、でも案外悪くないかも?

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