第20話

「彼女は幸せになるべき人なんだ。だから、君の力が必要なんだ」


「……君は、それでいいのか?」

 

「ああ。俺が彼女にできる事は、それしかないんだ」 


「そうか、分かった。けれど、僕は君の事も諦めないからな!」


「……ありがとう。けれど、いいんだ。俺がいては、彼女が幸せになれないからな……」


「それは違うぞ!それに僕は君にも幸せになって欲しいんだ!だから君の幸せも願うよ!」


「俺の……、幸せ……?」


「ああ!僕が願う事はなんでも叶うんだ!僕は幸運のにゃんこだからね!」


 ――――――――――   

 ここは本当に聖国なのでしょうか?

わたくしの知る聖国は、白亜の城と呼ばれる純白の王城の周りを聖水の水堀が囲い、そこから癒しの白いオーラが霧となり、城を囲うよう東西南北に連なる4つの首都が霧で覆われていて、その光景から「白霧はくむの都市」と呼ばれていた。

それが…、白い霧が銀白色している…。これが、バン・ビルバレットが言っていた異変なのね。


魔術国家の魔塔に居たわたくし達は、お姉様とミケラ様の転移魔術で聖国に来る予定でした。

けれども、バン・ビルバレットが「魔力を温存して欲しい」と、魔塔と聖国の北の都市【リバイ】を繋ぐゲートを使わせてくれたのです。

あの日以来、お姉様のストーカーになり力を借りたくはなかったが、「使えるものは、使ってとけ」との、お姉様の一言でゲートを使う事になったのです。

後から見返りを要求するのではと、お姉様に聞くと「そんな器の小さな男じゃないもんね?」と、バン・ビルバレットに笑顔で言う姿がとっても美しくてカッコ良かったですわ!


そして、リバイに着いてその理由が分かったのです。


「天界の神のオーラね……」


「流石はアリシア嬢だ。天界の神、しかも途轍もない奴だよ」


「くさ〜い!リアムの臭い匂いがする〜」


「ミケラ様!天界の殿下のリアム様ですか!」

 

「そだよ〜!君が知らないってことは、聖国に勝手に来たんだね〜!」


天界・人界・魔界に行き来するには、それぞれの国に許可を得る事になっております。それなのに、聖国の国王陛下が知らないと言う事は、アーノルド殿下がやらかしたのですね。


「聖女を召喚するのは、まさか……」


「リアムだろうね〜。聖女を召喚して天界を聖国を乗っ取るつもりかも〜」


「なんですと!この国を乗っ取るですと!」


「そだよ〜!俺は天界の長になる〜!って言ってたし〜、この霧でみんなの聖力と生命力を奪ってるから〜、きっとアーノルドの魂を消滅させて身体を奪うのかもね〜」


「そ、そんな事が……」


だから首都が静かなのですね。リバイは貿易都市で常に沢山の人で賑わっていたはずなのに、人が誰も居ないのですもの。しかし、霧に触れているのにわたくしの聖力には何も変化がないのはなぜでしょう。


「ミケラ様。わたくしの聖力に変わりはありませんわ」


「僕が近くにいるからね〜!ここにいるみんなは大丈夫だよ〜!」 


「ミケラったら魔除けみたいじゃん!何それウケるんですけど!」


「僕だけじゃないも〜ん!アムラ様のカケラの真奈美もそうだからね〜!」


「カケラって……。その言い方はやめてくれないかな…。」


「じゃあ俺は、真奈美嬢に守られているって事ですね!」


「え、やだキモイ!私はアリシアとトーマス様しか守らないけど!」


「そんな事より国王陛下。わたくし達も王城へ行きましょう」


「そうだな。一刻も早く聖女召喚を止めないといかん。しかし、移動魔術を使うと、神達に気付かれてしまう」


「移動手段ならこちらで用意してありますよ。あ!丁度よく来た!」


そう言いながらバン・ビルバレットが手を振ると、一台の赤いバスがわたくし達の方に走ってきます。このバスもお姉様が「やっぱり西洋の街並みには、赤い二階建てバスでしょ!」と、魔石で走る車と一緒に魔道具師に作らせたのです。このバスのおかけで聖力や魔力のなく高価なゲートを使えない市民達も、遠い場所にも移動出来る様になったのです。

バスがわたくし達の前に停まると、中から背の高い若い男性が降りて来ました。初めてお会いするはずなのに、見覚えがありますわ。何処で会ったのかしら?


その答えはお姉様の悲鳴にも近い叫び声で判明したのです。


「きゃ―――!‼︎マサ―――!!!トーマス様!!!マサがいる―――!!!」


お姉様が念写した大量の写真に写っていた方にそっくりな男性でした。


 

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