第19話

白い大理石と瞳をアメジストで作られた10メートル程のアムラ神の像が聳え立つ真っ白な白亜の間には、天界の長のみが座る事ができる像と同じ大理石で作られた百合の彫刻が施せれている立派な白亜の玉座がある。しかし、天界の長は眠りについている為その玉座には誰も座る事は出来ぬはずが、金糸て百合の刺繍が散りばめられた白い衣を身に纏い、光輝くプラチナの長い髪にアクアマリンの様に水色に輝く瞳をした、男にも女にも見える中性的な顔の美しく神々しい人が気怠い感じに座っている。

5段程の段があり、その下には3人の人が立っていた。その3人も中性的な顔立ちをしているが、プラチナの髪だが短く、濃紺の瞳にで衣も白一色だからか、玉座に座っている人よりは野暮ったく見えてしまう。


「それで〜、準備は整ったの〜?」


玉座に座っている人が気怠く言うと、3人は少し困った表情を浮かべた。


「リアム様、本当に、異世界から聖女を…、召喚するのですか?」


「召喚するよ〜」


「しかし、本来なら、まだ先の予定です。早過ぎるのでは?」


「私に〜、意見するつもり〜?」


「いえ……。そんなつもりは……」


「素直に私の言う通りにすればいいのよ〜!」


「申し訳ございません。リアム様」


「それで〜、準備は整ってるの〜?」


「はい。いつでも召喚の儀を行えます」


「それじゃ〜、明日に行うわよ〜!」


「「「……御意」」」


「あ〜!私が長になるまでもう直ぐよ〜」


――――――――

「号外!号外!明日、聖国の王城にて、聖女の召喚の儀が行われるよー!」


魔術国家の魔塔の周りで、新聞売りが大きな声で号外を売っていて、私はその新聞を買いトーマス様姿のミケラと魔塔へと来ていた。

一週間前に渡したドライヤーとブレンダーの試作機が出来たと魔道具師から連絡が来て、新しい魔道具が見たいと聖国の国王が来ているから、私にデモンストレーションをして欲しいと言うのだ。私の欲しかった物だし、なにより、外交官であるトーマス様とアリシアが国王を接待しているのだ!アリシアの姉として、トーマス様の下僕として、大事な見せ場ではないか!トーマス様にもっと貢げる様に気合いを入れて実演しなければ!


と、気合を入れている私の隣で、いつもヘラヘラしているミケラの顔が険しくなっている。どうしたのだろう?


「ミケラどうしたの?緊張してるの?」


「……真奈美〜。天界で怪しい動きがあるよ〜」


「ん?この号外の事?」


「……うん。天界にあるアムラ様の像に嵌め込まれてるアメジストを通じてね〜、4神が聖女を召喚して〜、何かをしようとしてるのが見えたんだ〜」


「え!あんた、盗撮魔なの!」


「違うよ〜!天界の奴らが悪さしない様にね〜、見張ってるんだけどさ〜!私が長になるまでもう直ぐって〜、ホザイてるアホがいたの〜」

     

「え?何それ?」


「多分ね〜、神を殺せる聖女に長を殺させて〜、長の座を奪おう〜!ってやつ?」

     

「はあ〜?どこぞの厨二病者か?」


「厨二の方が可愛いかもよ〜!1000年も生きてそんな事を言っちゃうやつだもん〜!」


「やだ!キモイ!何そいつ!」


「キモイでしょ〜!」

 

「でもさ、国王は、今ここに居るじゃん!」


「きっと馬鹿息子がさ〜、国王代理の言う事が聞けないのか!とか〜、言ったんじゃない〜?」


「それ、国王に知らせないと、やばくない?」


「そうだね〜!その新聞を見せようよ〜!」


私は新聞を片手に実演を行う研究室に入ると、一目で分かる程に怒りを露わにして新聞を握り潰している国王と、青い顔をして今にも倒れそうな王妃をアリシアが支えている。

そりゃあ、そうなるわな。自分の息子が新聞の一面を飾ってるんだもの!しかも、『臆病なウィリアム・ヒル・グライム国王に変わり、アーノルド・アム・グライム殿下が、聖女召喚の儀を執り行う!』と、デカデカと書かれているのだ。しかも、『魔術国家と友好を深める国王より、天界と友好を深めている殿下の方が、聖国にとって有益であるのでは』とも、記事に書いてあった。


全く、何処の世界にもドラ息子っているんだね!あー、国王が血管がブチ切れて血が噴き出しそうな程、真っ赤な顔をしているわ!


「あのバカ息子が!なんて事をしてくれたんだ!」


「落ち着いて下さい陛下」


「トーマス!これが落ち着いていられるか!」


「そうよアナタ!今は落ち着きましょう」


「そうです陛下。この状況では、殿下が行う聖女召喚の儀を、止めることは難しいでしょう」


「くそ!また天界の神に唆されよって!」


「国王陛下。わたくしは、至急聖国へ戻られた方が、宜しいかと思いますわ」


「そうだなアリシア嬢。アーノルドと天界の神に、好き勝手にさせる訳にはいかぬ!」


「ええ。それに、神官達は召喚の儀を行える力を、まだ身に付けていないので、早過ぎますわ!」


「アリシア嬢は分かってるのに、バカ息子はそれが分かっていないのか!」


どうしよう……。話に入るタイミングを、間違いなく逃したなこれ。

てか、私は聖女のサポーター役としてこの世界に来たのはずよ?何故に私が知らない。

私に知らせるのをただ忘れただけなのか、わざと知らせず聖女をどうにかしようとしているのか。この雰囲気を見たら絶対に後者だな!

ドラ息子は聖女をどうにかしようとしてるのかな?


「トーマス!今すぐ聖国へ向かうぞ!」


「陛下。申し訳こざいませが、今から向かっても、明日には間に合いません」


はっ!トーマス様が困ってらっしゃる!ここは奴隷である私が、移動魔術で全員を聖国へ連れて行けば、トーマス様のお役にたてるのでは!


「トーマス様!私が移動…」


「俺の出番だね!!」


私の後ろから、男の大きな声が聞こえビックリして後ろを振り返ると、会いたくなかったKY男がドヤ顔で立っていました。

 

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