第16話

わたくしは半年前から準備をして、この日が来るのを楽しみにしてましたの!


彼等が何度も時間を戻した影響で世界の理に歪みが生じてこの世界は崩壊直前だった。

それを調べていたミケラ様は、歪みの中心にわたくしがいる事に気付き、彼等にミケラ様がこちらに来ている事を悟られぬよう、わたくしの夢の中に現れたのです。ミケラ様はどうして繰り返しが起きているのかを説明してくれました。

この繰り返しは、天界の3人の神によるもの。わたくしの聖力が使われていている事。そして、聖力を使うには、わたくしを殺して聖力を奪う必要があるというのだ。

 

なんとも、ふざけた話ですわ!

己が欲望の為に、わたくし達を辱めて殺したなんて!

しかし、5回目では違いましたわ!エルのお陰で、彼等に関わる事なく平和に過ごせました。だから、奴等の思い通りになんてさせません!


そして、丁度よくミケラ様が天界の王と四神と人界の国王を、転移魔術で魔術国家へと連れて来てくれた。それと同時に、事前に話し合いをしていた、魔術国家総長と副総長、魔界の王と四天王も来てくれて、復讐を果たしてこの繰り返しから抜け出せると思ったのに…。

エルと幸せになれると思ったのに…、それなのに!

時を戻すのにエルの力が必要だと人柱にして、奴等と共に時空に閉じ込めたよ!


今、わたくしの目の前に座っているこの男、バン・ビルバレット!貴方達が、わたくしとエルの幸せを奪ったのよ!だから、今回は貴方達が復讐される番よ!


「貴方のは、お姉様じゃないからよ」


「アリシア・コーデルハイム。僕の運命の伴侶は、マナミ嬢だよ」


ふふふ、そんな怖い顔をして睨まないで欲しいわ。

わたくしからエルを奪っといて、自分だけ幸せになるなんておこがましい!


「いいえ、違いますわ!総長様の運命の伴侶とやらは、聖女なのでしょ?」


「そうだ。神に選ばれた聖女様だ!」


「なら、ますますお姉様じゃないですわ」


「神に選ばれ召喚されし本物の聖女様は、マナミ嬢なんだ!あんな女じゃない!


「だからこそ、お姉様は違うと言っているのです」


「アリシア・コーデルハイム。君は、何が言いたいんだ?」


右耳に付けている小さな赤い魔石のピアスから『アリシア〜、もうすぐ行くよ〜!』っと、ミケラ様から声が聞こえると、外からバタバタと走る足音が聞こえて来ましたわ!さて、総長様の反応が楽しみですわ!


「アリシアを虐めてる奴は、どこのどいつだ!!」


勢いよく扉を開けてお姉様が部屋に入って来ると、ソファに座っているわたくしをギュッと、抱きしめてきました。ふふ、可愛いお姉様ですわ!


「アリシア!大丈夫?ミケラにね、アリシアが悪い奴に虐められてるって聞いたから、助けに来たよ!」


「ありがとうございます!嬉しいですわお姉様!」


「それで、こんなに可愛いアリシアを、虐めてるのは、お前か?」


「は、はじめましてだねマナミ嬢。僕は君に会いたくて来たんだよ」


「はあ?私は別に、アンタなんかに興味ないけど?」


「えっ?僕を、知らないの?」


「ねぇ、アリシア〜。あの自意識過剰さんは誰?」


やっぱり、お姉様は最高ね!

総長様は常にフードを被っているので見た目はともかく、侯爵家の嫡男であり魔術国家の総長でもあるので、女性に凄くモテるが為に、全ての女性は自分の事を知っていると勘違いしているのです。

だから、お姉様の反応に動揺しているのが顔に出ていて、なんとも滑稽なのでしょう!


「バン・ピンバレット魔術国家総長様ですわ」


「へ〜。知らないけど、なんでアリシアの事を虐めるんだ?」


「それはですね、わたくしが、お姉様は聖女ではありませんって、言ってからですわ」


「はあ〜?何それ?私が聖女?馬鹿じゃないの?」


「なっ!なにを!マナミ嬢は、アムラ様に選ばれた聖女様ではないか!」


「何この頭の可笑しいフード男は?私がアムラ様に選ばれた聖女って何?私はミケラに選ばれた、聖女のサポート役だよ!」


「ミ、ミケラ様に……?聖女、様の……サポート?役?」


「ふふふ、だから言ったでしょ?お姉様は総長様の、ではないと」


「何、その運命の伴侶って?」


「運命で結ばれた恋人ですわ。ミケラ様がお姉様にはつがいって言えば分かるって、言ってましたわ」


「私がこんな頭の可笑しい奴の番?ないない!あり得ないよ!ははは!」


まあ!総長様ったらお姉様の言葉に、今にも泣き出しそうな顔をなさっているわ!ふふふ、最後はお父様にもお願いしようかしら?


「お姉様がお父様の番だったら、わたくしは嬉しいですわ」


「なっ!なっ!何を言うの!私が番だなんて!!私はトーマス様の下僕でお財布なのよ!弄ばれたら泣いて喜びます!」


「真奈美嬢……。落ち着いて下さい……」


「あぁ!!トーマス様が私の名前を!幾ら!幾らお布施を払えば!」


お姉様はそう言いながら、ソファーからピョンと飛んで、お父様の足元に綺麗に土下座の格好で着地しました。ピアスから『あれがね〜、スライディング土下座だよ〜』と、ミケラ様の声が聞こえると、小さな狐の姿で現れてわたくしの肩にちょこんっと座って、2人を見ながらケラケラと笑っていだしました。


「お、お金なんて要りません!私は、真奈美嬢が幸せに過ごせ…」


「トーマス様が私の幸せをー!!!その言葉だけで、私は幸せに生きていけます!!」


「い、いや、これから家族として一緒…」


「トーマス様と家族として一緒にだなんて!!奴隷として一生尽くします!」


「僕は一体……、何を見せられてるんだ?」


流石はお父様とお姉様ですわ!2人のこのやり取りを止められるのはお母様だけですのよ!

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