第12話

私、福田 真奈美はトラックに轢かれて死んでしまい、聖女のサポート役として(聖女よりもアリシアを立派な悪役令嬢へと育てる方が楽しみ!)この世界に来て、コーデルハイム公爵家の長女マナミ・コーデルハイムになってから1週間が過ぎた。


到着した日は、列車の腰が砕ける程の硬いシートで私の身体はボロボロなのに、アリシアとメイドさん達の着せ替え人形として弄ばれたせいで、夕飯も食べずに寝てしまっていた。


しかし!若い身体とは素晴らしい!

翌日には身体はスッキリして元気がみなぎっているではないか!一晩寝れば疲れがとれるなんて…うぅ…。

若い身体って、なんて……、なんて素晴らしいんだ!!


それに、公爵邸ではお嬢様としてメイドさん達が世話をしてくれるし、美味しいご飯とスイーツを作ってくれるシェフもいるし、なにより働かなくていいのだ!


と、おかしなテンションになった私は、アリシアとミリア様と一緒に(ミケラは小さい狐の姿で私の肩に乗っている)買い物やスイーツ巡りに、今流行っているオペラを観に行ったりして、3日間で一通り首都を満喫した後は、今まで休み無しで毎日働いてたんだから、引き篭もりになっても良いよね!っと、一日中ベッドの中でゴロゴロしながら、私の推しのLIVEを脳内再生しながら寝て過ごしていたら、あっという間に1週間が過ぎていた。そして、トーマス様とアリシアにお呼び出しされてしまった…。

まあ、怒られるだろうね。この世界来て直ぐに引き篭もりになろうとしたのだから。


それより、さっきから気になるのがミケラだ。

今日は青年のトーマス様の姿ではなく、今の私と変わらない14、5歳の姿で私の腕にひっついている。しかし、機嫌が悪いのか、少し険しい顔をしている様に見える。


「ミケラどうしたの?お腹でも痛いの?」


「……まなみぃ〜、お願いがあるの〜」


「お願い?なんだい?」


「トーマスにね〜、僕がいいって言って〜!」


 ――――――――

わたくしのお姉様が、お部屋から出て来なくなり4日が経ちました。

ミケラ様が言うにはご飯も食べずにずっと寝ているようです。

お腹が空いたらメイドにケーキなどのスイーツを持ってきてもらい、食べているみたいですわ。

いきなりベッドから起き上がると、歌を歌いながら腕を振って踊っているらしくて……。

お姉様がおかしくなってしまったのかと心配しても、「真奈美はね〜、今夢の世界で幸せなんだよ〜!」と、笑って答えるのです。

元の世界でのお話を聞いて、一生懸命に働いてきたのですから、ゆっくり休んで欲しいと思いましたが……。

これ以上はいけません!お姉様が怠惰を極めてしまいますわ!


ですので、これ以上は見過ごせません!

珍しくお父様も今日は公務が無く、執務室で執事長から領地の報告を受けているはずですわ!

我が公爵家は代々、天界・人界・魔界の情報を収集して、良好な関係を維持しながら政治的な交渉をする外交官の仕事をしているので、月の半分以上は家を留守にしていますわ。だから、家にいる今しかお話し出来ないのです!

本来なら引退したお祖父様に領地の管理をしてもらうはずでしたが、色々あり魔界の在外公館でお仕事をしなければならなくなったのです。


そんな事よりも、お姉様が魔力を制御出来るようにする為に、魔術の勉強をしなければいけので、お父様に師匠を呼んでもらわなければ!


わたくしはお父様の執務室に入ろうとノックをしようとしたら、嫌な気配がしたので後ろを振り返ると、真っ黒なローブを着てフードを深々と頭に被る怪しい男がこちらに足早に向かって来ていますわ!

わたくしは嫌悪感を感じ無視して中に入ろうとすると、「コーデルハイム公爵令嬢!」と、その男にわたくしの名前を呼ばれましたが、無視しノックをはさてお父様の執務室の中へ入りました。


「失礼します、お父様。真奈美お姉様の事でお話があります」


「ああ、いいところに来たね。私も真奈美嬢の事で話があったのだ」


「…それは、お姉様の魔力のお話でしょうか?」


「そうだ。とりあえずソファに座りなさい」


お父様の執務室にある応接テーブルを挟んで2つあるソファを指差したので、「はい、お父様」と返事して、左側のソファの元に行こうとすると、あの男がわたくしの後ろにやってきました。


「トーマス!僕も座っていいかい?」


あの男がは無礼にもお父様に話しかけ、わたくしの頭をポンポンを叩かれましたが、関わり合いたくないので無視してソファに座りました。


「僕をガン無視するなんて、コーデルハイム公爵令嬢は冷たいな〜!」


そう言いながらあの男は、わたくしが座るソファの向かいのソファに座り、偉そうに踏ん反り返っているのが腹立たしいですわ。

 

「バン・ビルバレット総長殿。私は総長殿の入室を、許可していないのだが?」


「そんな事を言うなよ!公爵邸にんだからさ!」


「…それはない」


「ああ、知ってるよ。アリシア・コーデルハイム。君の仕業だね」


「それがどうしたのですか?」


は〜、面倒くさい男ですわ!


「君、前回の記憶を持っているのかい?」


「だから、それがなんなのですか?」


「どうして僕とマナミ嬢の出会いを邪魔をする」


ふふふ、怒ってらっしゃるのね!わたくしに殺気を向けちゃって。


「貴方のは、お姉様じゃないからよ」

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