第9話
今日は可愛い妹アリシアの洗礼式だ。なので、お父様のトーマス様とお母様のミリア様と共に洗礼式が行われる聖泉に来ている。
洗礼式は西側の聖国と東側の魔術国家に挟まれた大陸の中央にある聖都アニスで行われ、この世界の創造神である神アムラを崇める『アムラ教』の大神殿の中心部にある神の涙と呼ばれる聖泉で、年に一度月が1番近づく7月の満月の日に朝から夜まで6回に分けて今年10歳になる子供達が洗礼を受けるらしい。本当は1回目だったがミケラが作戦会議をしたいと言うので最後の6回目にずらしてもらった。
聖泉の中に入り両膝を付け
風=緑、水=青、火=赤、土=茶色、聖=金色、闇=紫
多属性だとその属性の光が絡み合うらしい、例えば水属性、風属性、闇属性を持つトーマス様だと、1番強い闇属性の紫色の大きな
まあ、普通は一つの属性しか持たず1メートル程の細い
そして、現れる事が決してないのが金色と紫色の
だが、ミケラはアリシアが聖泉に入ったら、これが現れると言うのだ。
『アムラ様の庭でお菓子を食べたから』って言うが、どうにも怪しくて突っ込んで聞こうと思ったら、トーマス様の顔が悲しみに満ちていたので、聞かなかった。推しが悲しんでいる姿は見たくない…。
なので、後でミケラをとっちめて吐かせる!
聖泉に着くと私はその神秘さに驚いた。
泉というよりは2メートル程の池のようだが、神殿の中なのに白い優しい穏やかな光が聖泉に差し込みキラキラ輝いている。そして、光の中から一つの水滴が落ちるが、ピチャッと
神の涙とはよく言ったものだ。
聖息を囲む様に置かれたベンチに案内されトーマス様とミリア様と並んで座った。もちろん!ミリア様の隣にね!
トーマス様の隣に座ったら息が出来ない!
そして、聖服を来た20人程の子供達が向かい側の2列のベンチに座っていてアリシアは前のベンチの真ん中に座っていた。洗礼式には正式な服装があり、聖花の白百合模様のレース襟のシャツに女子が足元が見えてはいけないので少し引きずる長さの白いプリーツスカート、男子は膝丈の白いズボンだ。
みんな同じ服装だが、アリシアが1番輝いてて可愛い!!こんな可愛い天使を害そうとするなどけしからん!!と思っていると、アリシアの後ろに座っているピンク色の頭をした女の子が、鬼の形相で睨んでいるではないか!!
「アーノルド殿下の入場です!」
若い神官の言葉に全員が一斉に立ち上がり男性は右手を左胸に当て頭だけを下に向けてお辞儀をし、女性は膝を曲げて小さくカーテシーをしてアーノルド第一王子を迎えているが、座ったまま動かない例外がいた。
そう!私だ!カーテシーなんて知らんがな!
そして、アリシア、トーマス様、ミリア様もしていない!そして、予定通りに殿下の腰巾着(側近)がアリシアに「貴様!殿下に対して無礼だぞ!」と、絡み始めたのでトーマス様達と一緒に、困り果てて慌てふためいている神官を横目に、アリシアの元へ向かった。しかし!なんて良い悪い笑顔をしているアリシアが天使過ぎる!
「全く、神聖な洗礼式だと言うのに、礼儀知らずな煩い羽虫がいますわね。殿下もそう思いません?」
「俺にはお前の方が礼儀知らずに見えるがな。愛しい婚約者が、洗礼式で緊張してるだろうと思い、会いに来たというのに。出迎えもせずとはな」
「そうだぞ!わざわざアーノルド殿下が、お前なんかのために来てやったんだぞ!」
「黙りなさい羽虫!伯爵家の次男が公爵家の
「なんだと!!」
「やめないかアリシア。未来の王妃が家柄で人をみてはいけないぞ」
「だから殿下は平民だろうと、下級貴族だろうと、王妃になれると戯言を言っては、誑かしていたのですね!」
「誑かすだと?アリシア、お前がそうしろと言ったのだぞ!」
「
「ああ!自分のために女を知れって、言ったじゃないか!」
わあ…。あんなのがアリシアの婚約者だったなんて…。
まだ14歳なのにあんなクズ男だとは…。
金◯蹴り上げたいわ!
そう思っていながらアリシアを見ると、小さくなってアリシアの髪の中に隠れていた狐姿のミケラが、アリシアの肩にちょこんと座り何かを話しかけると、ベンチから立ち上がり2人は聖泉に向かって足を伸ばした。
「待てアリシア!何処に行く!」
聖泉に入ろうとするアリシアを捕まえようとしるアーノルドの腕を、ミケラがシールドを張って弾いた!
ナイス!グッジョブ!ミケちゃん!
弾かれてバランスを崩したアーノルドが、後ろに倒れ込み尻餅をついて間抜けな顔をしてアリシアを見る姿に、笑いを堪えるのが大変だ!
さあ!アリシアの晴れ舞台が始まるわよ!
アリシアはスカートを少したくし上げゆっくりと、まるで時が止まったかのような明鏡止水の水面にちょんと付けた瞬間に、金色の光が円になり聖泉に隅まで広がっていくと、金色、紫色、青色、桃色の光が立ち上がり、聖泉一面に光が重なり合いオーロラの様に揺らめき神秘的だ。
その光の中をスカートを少したくし上げたまま進み、聖泉の真ん中に立つアリシアの姿はもはや女神だ!
アリシアは振り返り両手の掌にドヤ顔をしているミケラを乗せて声を高らかに宣言した。
「
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