第7話

福田真奈美は目を覚ますと、先程のお花畑ではなくて知らない庭園のベンチに座っていた。


ここはどこだろう?


目の前にある白い女神像が立つ大きな噴水は、

手柄杓の様に小指を合わせた女神像の掌から溢れる水で満ちてすっごい綺麗で、昔にヨーロッパの旅行ツアーに行ったのを思い出すな〜。


その周りの花壇にはチューリップとヒヤリンスが咲き誇っているから、今は春なんだろうね!

てか、あの豪邸はなんだ!ヨーロッパで見学した皇族やお貴族様達が住んでいた豪邸みたいなんですけど!


とりあえずここが何処なのか探索してみよう!ベンチが立って歩いていると違和感を感じる。なんだが身体が軽くって、視界がいつもより少し低いような…。


とりあえず噴水の水面で姿を確認しよう!

水が落ちて水面が揺れている所は姿が分からないから静かな水面を覗きこむと、水面に着きそうな黒い長いストレートの髪に茶色と黒い瞳の日本人らしい顔が映っているが、41歳ではなく高校生の頃の若い姿が映っているではないか!?


「なっ!わ!若い!!!」 


顔を触る両手からはいつもの疲れ果てた肌ではなくて、ぷるっぷるの肌の感触が伝わる。エステに行ってもここまでの肌になった事はなかったのに!めっちゃ嬉しい!!


私は若くなった肌を堪能しているとある事を思い出した。


「あ、そういや、狐が呼べって言ってよな?」


噴水の縁に座って「お〜い!ミケラ〜!」と、言われた通りに狐の名前を呼ぶと、ドローン!っと、白い煙と共に見た事のある白い狐が現れた。


「やっと読んだ〜!おっそ〜い!」


「あっ!夢で見た変な喋り方の、変な狐だ!」


「ちょっと〜!変な喋り方ってなんだよ〜!それに〜!こんな可愛い狐を変な狐だなんて〜!ひっど〜い!」


私の太ももにに肉球パンチをパシパシ連打してくるけれど、めっちゃプニプニで気持ち良いんだけど!!


「それで、ここは何処なのよ?」


「ここはね〜、コーデルハイム公爵邸だよ〜!アリシアのおうち〜!」


「ええ!アリシアの家!?じゃ、じゃあ、こ、この豪邸が!」


「真奈美の家でもあるよ〜!家に向かいながらさ〜、これからの事を話そうか〜!っあ!僕もこっち仕様にしないとね〜!」


こっち仕様とは?と、聞こうとしたらドローン!と、白い煙に包まれると、少し長めの銀髪をざっくりとかき上げたオールバックから垂れた前髪が、クッキリとした二重に切長の目に輝くアメジストの瞳をよりセクシーにさせる。


真っ白な艶のある肌に筋の通った少し高めの鼻のしたには、血色の良い赤くプリッとした唇の長身のイケメンではないか!しかも、着ている黒い燕尾服からでも分かる鍛え上げられた筋肉痛な身体をしている。


そして、私このイケメンを知っている!


「サークルの川村圭介!!しかも、絶世期の頃の!!」


「そだよ〜!真奈美の愛してやまない圭ちゃんだよ〜!抱きしめてもいいよ〜!」


はあ?何言ってるんだこの狐は。確かに見た目は圭ちゃんそっくりな化けたが、圭ちゃんではない。こんな阿呆な喋り方をしないし、こんな阿呆な笑顔をしない。


うちの圭ちゃんを馬鹿にしているのか?


「おい、狐。よくも圭ちゃんを汚したな!」


「ええ〜!怒らないでよ〜!この姿じゃないと駄目なんだよ〜!」


「なんで駄目なの?」


「実はね〜…」


豪邸に向かうのに庭園を歩きながらミケラが言っていたのはこうだった。


・私はコーデルハイム公爵夫人の平民に嫁いだ姉の子供で、両親が亡くなり養女になってマナミ・コーデルハイムになった(名前は真奈美のままにしてくれたらしい)


・年齢は16歳でアリシアの6歳上の姉になった


・ミケラはトーマス・ウィル・コーデルハイム公爵の従兄弟ルシウス・アートンハイム伯爵の息子で私の執事らしい


・時戻しの魔法で過去に戻り前回の記憶を持っている者達とトーマスお父様はミケラが話した(国王を脅して私の偽の戸籍を作ったらしい)


ところで、何故に圭ちゃんの姿じゃなきゃ駄目なのかの説明がないのだが!


「それで、なんで圭ちゃんの姿じゃなきゃ駄目なの?」


「それは、会えばわかるよ」


広い庭園を抜けて豪邸に着いが、玄関のドアもめっちゃ豪華でデカい!ミケラが二枚の扉を勢いよく開けると、広い玄関ホールで待っていた男性を見て思考回路が停止してさまった!


「私はトーマス・ウィル・コーデルハイムです。お待ちしてましたよ、真奈美嬢。コーデルハイム公爵家へようこそ」


「け!け!け!圭ちゃん!!圭ちゃんが!!私の名前を!!!」


愛してやまない川村圭介の絶世期アラフォー時代の彼がいる!!しかも私の名前を呼んたわ!


トリップしそうになった所を「真奈美〜、落ち着いて〜」と、ミケラの阿呆な喋り方と頬っぺたを手でムギュッ!と、された事により冷静になれた。


まさかお義父さんになる人が圭ちゃんと瓜二つだなんて!!!!!!!!

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