第2話

目が覚めると、そこは一面花畑だった。


はあ、起きたら元に戻ってると思ったがやっぱり何も変わらないか。


夢オチ期待したんだけど、でも、この真っ白なもふもふは夢心地ね。


私は花畑で横になって寝ていた、狐は気を利かせたのだろう、私の腕に顎をのせてうつ伏せで寝ている。


あの憎たらしい口調はどうかと思うが、この姿は愛くるしくて堪りません‼︎


「やっと起きたの〜?」


私に顔を向けて上目遣いで聞いてくる、なんて愛らしい‼︎


基本猫派で犬科の動物は苦手な私だが、今日から犬派に鞍替えしよう!そうしそう!


「寄り添って慰めてくれてありがとね!狐さんは優しいんだね」


頭を撫でようとした私の右手をハエでも叩き落とすかの如く肉球パンチが炸裂した。


突然のパンチに目を見開き「んあ!」と、声を上げ開いた口が塞がらない。


そんな私の事など気にも留めてない狐は爆弾を投下した。


「早く泣き止んでくれなきゃ話進まないでしょ〜、こんなんで絆されるなんてチョロ過ぎじゃな〜い、だから彼氏も出来ないし結婚も出来ないんだよ〜」


なんて事でしょう。


私の家族親戚友人一同、もう口にしなくなった言葉を…。


このお狐様は……。


神使ではなくて悪魔の使いではないのだろうか?


「あら、神の使いであるお狐様がそんな了見が狭い事を仰らないでくださいまし、するもしないも個人の自由ではなくて?さも、旦那様や彼氏がいないのを蔑む言葉は如何なものかと思いましてよ」


「うわ〜、きもちわる〜い、本当の事言われて悔しいんでしょ〜?そんな強がんなくって良いよ〜、ぷぷぷ〜!」



前から思ってたけど、神様って悪役令嬢似合いそうね、

狐さん、あなた今ヒロインを虐める悪役令嬢の顔をしているわよ、顔の横に『穢らわしい平民風情が!』って、吹き出しが見えるわ!


あ、ちなみに私、怒りのレベルが上がれば上がる程に冷静になり言葉口調が丁寧になります。


「それでは、何故結婚しなくてはいけないのか、恋人を作らなくてはいけないのか、してない事で何かデメリットがあるのかお聞かせ下さい」


「え〜、一人より二人の方が楽しいし〜、色んな場所にも行けるし〜、色んな事も出来るよ〜、一人だと寂しいじゃ〜ん、親に孫見せないなんて親不孝だよ〜!」


はいはい、そのテンプレはもうお腹いっぱいですよ。


「そんな事ありませんよ、一人旅行楽しいし、スノボも一人で行った方がガッツリ滑れるし、温泉も一人で行った方が好きに入れるし、映画や美術館は一人じゃないと落ち着かないし、夜の観覧車も一人でしんみりしたい時にはピッタリだし、ネズミの国も一人で楽しめるし、仕事で疲れてるのに家でまで人の相手するの疲れるし、一人になりたいのに人の気配がするの嫌だし」


「まって!まって〜!僕が悪かったよ〜!ごめんよ〜!それ以上はいいから〜!」


ん?まだいっぱいありますよ?一人で楽しい事は!


「遠慮しなくていいのに、私のお一人様ライフお聞かせしますよ?」


私には子供を育てられる自信が無い。だから、結婚も考えられない。


私の母は典型的な天才タイプで、勉強で分からない箇所や間違えた箇所があると『分からないお前が分からない』と、言われて叩かれた。


テストの点数が悪いと『どうしてこんなに馬鹿なの!』『誰に似たんだか!』と、言われて叩かれた。


もし私が結婚して子供を産んだらお母さんみたいに子供に手を上げたらと考えてしまう…。子供を育てる自信が無いし恐いのだ。


子供出来たら変わるよ!って、高橋家の娘さん達に言われたな、それに、うちに帰って来て良いから一回は結婚してみな!経験として!とも言ってたな。


まあ、死んでしまったから経験としても出来ない訳だが。


「もういいよ〜!ごめんなさ〜い!」


「まったく、謝るくらいならアラフォーにあんな事言うんじゃありません、分かりましたか?」


「うう〜、ごめんなさ〜い」


耳がペタンとなって可愛いらしいからこの辺で許してやるか!


「それで、異世界転生で聖女のサポートってのを詳しく聞かせてくれるかな?」


「やっと聞いてくれるんだね〜!」


なんて良い笑顔で笑うのだろう、この狐は…。

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