41歳独身、異世界で小料理屋の女将始めます
いちとご
第1話
福田真奈美 41才 独身彼氏いない歴10年こえました。
18年間料理の世界に生きてきました。有名店で修行をし個人店での経営のしかた、お歴々のお客様達にも色々教えてもらった。
そして、やっと自分店が持てた。
東銀座の5階建ての小さいビルの4階にある6坪のカウンター6席に4名様のテーブル一つの小さい店だけど、一人で切り盛りするには丁度良い。
明日明後日のレシェプションも皆さん出席して下さる。
明日の料理の仕込みも終わったし12時も過ぎたから家に帰ろう。
自転車で10分程の場所にある築地のマンションを借りた。
興奮していてきっと寝れないだろうな、でも明日のレシェプションは修行でお世話になった日本料理屋の女将さん、大将、兄弟子とお店のお得意様2人。
23才の時から13年お世話になった小料理屋さんの女将さん、大将、娘さん二人が来てくれる。
このお店の高橋家の方々は私にとって家族の様な存在だ。親兄弟と仲悪かった訳でもないが、ただ、個々に無関心だっただけだった。
一緒に住んでて話しないの?
そう聞かれる事が多々あったが、別に話す事は無いから事務的な話以外に会話は無かった。
だから、一人暮らしを始めて数年後に従兄弟から「叔父さん達土地売って引っ越したんだね」と、言われ愕然とした。
いくらなんでもそれくらい教えてよ!
しかも、両親が離婚したと言う事実も…。
なので、23歳からお世話になって「娘みたいなもんよ」「あんたは妹よ」っと、言ってくれるのが嬉しい。
ようやくここまで来れたな、明日は100%出せるよう頑張ろう!
これで少しは恩返しになるかな。
明日に向けて気合いを入れて家に向けて自転車を走らせて、この交差点を渡ったたら家は目の前だった…
キキーー‼︎‼︎
金属を引っ掻いた様な大きな音がすると、私に向かってダンプカーが暴走して来た。ヘッドライトが眩しく目を細めた瞬間に、体にとてつもない衝撃が走り飛ばされた。
あぁ、これ、あかんやつや……。
そして、私の意識が無くなった。
次に目が覚めると一面花畑だった。
ここは、俗に言う死後の世界だろうか?
小さい時にテレビで丹波なんとかが言ってた。
私は体を起こすとキョロキョロと周りを見渡した。
黄色に白にピンク色の小さな可愛らしい花の花畑が広がっている、そして、私から少し離れた場所に大きな川に橋が一本架かっているのが見えた。
「私は、死んじゃったの…?」
「死んでないよ〜!君はまだ《向こう側》ではないよ〜!」
いきなり私の目の前に雪の様に真っ白な狐が現れた。
「???きつね???」
高橋家で飼ってるグレーハウンドと同じ大きさかな、動物園で見た狐はもう少し小さかった気がする。
けらけらと口を開けて狐は「そうだよ〜!僕は
「あの橋を渡るとね〜、黄泉の国だけど〜、君には二つの選択枠があるよ〜!」
「二つの、選択枠…?」
「そうだよ〜!このまま橋を渡って死ぬか〜、異世界で聖女をサポートするかだよ〜!」
「はい?」
めっちゃマヌケな声が出ちゃったよ、てか、この狐、今異世界って言った?
「ははは〜!!びっくりするよね〜!死ぬか異世界か〜だなんてさ〜!」
狐はケラケラとさっきよりも口を大きく開けて笑った。
「あの、死ぬのは嫌だけど、異世界って…何?」
「え〜、君好きでいつも読んでるじゃ〜ん!異世界転生もの!あれだよ〜!」
この狐、神使だかよく分からないが、人の事を馬鹿にしてるのか?
まずは、何がどうなってこうなったのか、そしてどうするのか何も言わないで選択しろだなんて馬鹿にしてるとしか思えない!
「まずは私が死んだ経緯を述べて、その後どうして私がその選択をしなくてはならないのか、で、最後に何をするのか説明してくれないかな?」
この狐、神の使いだと言っているのならば間違いなく下に見てるだろう、ならここは話を早く終わらせる為に下手に出た方が早いだろう。
「そだね〜、君が覚えているか分からないけど〜、ダンプカーの運転手が居眠り運転をしてさ〜、君に気付いてブレーキを踏んだけど間に合わなくて〜、轢かれちゃったんだよ〜!」
なるほど、あのキキーって音はブレーキ音だったのか、急に眩しくなったのはヘッドライトで、なんか飛んでるって思ったけど、本当に飛んでたのか。
「それでね〜、今迄頑張って働いてやっと夢が叶ったと思ったら〜、死んじゃったなんて可哀想だな〜て思って〜、異世界転生をして第二の人生をってね〜!ついでに召喚される聖女をサポートしてもらったらな〜、なんてね〜!ははは〜!」
うん、ダメだ、この狐ダメな奴だ!
私は基本神様は信じていない、学問としての宗教学は好きだが神様なんて理不尽でご都合主義だろう。
戦争や紛争で命の危険があるのに、見守っていますや、神が与えた試練だと言うし、自殺は地獄で人を殺しても悔い改めて信仰すれば天国だなんでおかしいだろ。
神話なんて昼ドラか深夜ドラマみたいなのばかりだし!
「まず、可哀想だと思うなら瀕死の状態から蘇らせるとかあるでしょ、異世界って何?それに、ついでに召喚される聖女をサポートしてもらったら良いって、相談すらなく勝手に決めてますよね?」
狐は「え〜」っと、面倒臭いって顔をしてきた。
「瀕死じゃなく即死だったし〜、体が真っ二つになってたら無理だよ〜」
「まっ!まっっぷたっ!!」
真っ二つって何よ!体は一つだけでしょ!
あ、いかんよ、だめだ、死んだってのでも冷静になれないのに今のでパニックだ!訳分からん!
「そだよ〜、ダンプカーのスピードが結構出てね〜!衝撃に耐えられず空中で上と下との真っ二つ〜!しかも〜、頭は地面に叩きつけられてグッチャ〜!顔も認識出来ないんじゃな〜い?いや〜、久々に凄まじいのを見たよ〜!」
う、ウソでしょ……。
そんな、せっかく自分のお店持てたのに……。
少しは恩返し出来たかなって……。
なんで、こんな事って……。
涙が溢れ出てきた…。41年間泣かないで我慢していた分が溢れ出て来たみたいに涙が止まらない。
どちらかと言えば泣かない、お母さんにも赤ちゃんの頃から泣かずに手がかからなかったって言われたし、何事にも動じない冷静沈着だったはずだ。
でも、こればかりは無理です!いかんとです!
座り込んで泣きじゃくる私の膝の上に狐が座ってきた。
涙を拭いてれようとしているのか、私の頬をぷにぷにした肉球が撫でてくれる。
狐って温かいな〜、昔飼ってた猫のナミを思い出す。
どれくらい泣いただろうか、ひとしきり泣きじゃくり私は寝てしまった。
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