第243話 近づくバレンタイン
~~~作者前書き~~~
というわけで、活動報告にも書きましたが
6月1日に小日向さんの書籍第二巻が発売することになりました!!
これも皆様の応援のおかげです!!めちゃ可愛いので、お楽しみに!
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~~小日向明日香Side~~
「もうすぐバレンタインデーだね、明日香は杉野くんにチョコ作るんでしょ?」
「…………(コクコク)」
智樹がバイトに行っている土曜日、野乃がうちに来た。
唐草も仕事みたいだから、今日は二人で作戦会議する。
智樹はいつも美味しい美味しいって私の作った料理を食べてくれるから、バレンタインではいっぱいチョコを作りたい。智樹を好きな気持ちを、大きさで表したい。
そんなことを野乃に話してみると、彼女は引きつった笑みを浮かべた。
「それってどれぐらいのサイズになる予定……?」
「これぐらい」
目いっぱい手を横に伸ばしてサイズを表現すると、野乃は「杉野くん鼻血でちゃうよ」と笑いながら言った。「もしかすると迷惑なのではないか?」と薄々思っていたけど、やっぱりだめみたいだ。残念。
「じゃあこれぐらい」
妥協案として、人の顔ほどのサイズを手で表してみると、「それぐらいならたぶん大丈夫……かな?」と野乃は言ってくれた。じゃあそうする。
「野乃もチョコ作る?」
「うん! バッチリ景一くんの好みもリサーチ済みだからね! 私は生チョコに挑戦してみるつもりだよ!」
「生チョコ……」
そういえば、智樹はどんなチョコが好きなんだろ。
あまり聞いたことがなかったから、わかんない。今度バレないように聞いてみよう。
「時間はまだあるし、ゆっくり考えたらいいよ~。――ところでさ、明日香たちは付き合ってからどう? 相変わらず二人は仲良しそうだけど、付き合う前と何か変わったのかなぁと思って」
「口でちゅーするようになった」
胸を張ると、無意識に鼻からふんすーと息が漏れる。
智樹とちゅーできるのは世界で私だけ。いっぱい自慢したいところだけど、智樹が恥ずかしがりそうなので野乃だけで我慢しておく。
「そ、そっかー。二人の仲を見てると、既にその辺りは終わらせているものとばかり思ってたけど、そうでもないんだね。ほら、お泊まりとかしてたしさ」
「智樹がダメって」
「あー、杉野くん、そういうところしっかりしてそうだもんね。あ、言っておくけど景一くんも私のこと大切にしてくれてるからね?」
「智樹から聞いてる」
でも智樹と私の方がラブラブ。
唐草はモデルをしているみたいだけど、智樹が表紙ならきっと一億部ぐらい雑誌が売れるはず。
そんな風に智樹に一度提案してみたけど、却下された。曰く、自分はそんなにイケメンじゃないとのこと。カッコイイのに。
拗ねる私に、智樹は「明日香の目にカッコよく映っていればそれでいいよ」と頬を赤く染めながら言った。可愛かったのでちゅーした。十回ぐらいした。怒られた。
「家では遊ぶときはどんなことしてるの? やっぱりゲームとか?」
たしかにゲームをすることは多い。
だけど、そればっかりというわけでもない。
二人でアニメや映画を見たり、漫画を読んだり、特に何もせずだらだらと過ごす時もある。どれも好きだけど、やっぱり一番はのんびり過ごす時間が好き。
「このまえ智樹に乗ってお馬さんごっこした」
「お馬さんごっこ!?」
年末に智樹と遊んだときのことだ。
智樹からは「皆には内緒だぞ?」と言われていたけど、たぶん野乃ぐらいなら許してくれるはず。もしバレたとしても、おでこペチンはご褒美だ。
しかしなぜ、野乃は顔を真っ赤にしてあわあわしているんだろう?
高校生にもなって――とか野乃は言わないし、不思議。
「そ、そのお馬さんごっこって、ど、どうだった? やっぱり痛いの?」
「お尻がちょっと痛かった」
だけど、智樹は五分ぐらい私を背中に乗せ、膝を突いて部屋の中を歩き回っていたから、私の痛みなんて些末なものだ。
痛いの痛いのとんでけってしたら、智樹「治った」って言ってた。
「そそそそそっか……お、お尻が痛くなるんだ、そうなんだ……」
「…………(コクコク)」
さらに顔の赤みが増す野乃。
私と智樹の仲良し度にびっくりしたのかもしれない。
なんだか誇らしくなって、むふーと鼻息が漏れた。
その日の夜。
智樹に『野乃にお馬さんごっこのこと言っちゃった』とチャットすると、『大丈夫だよ』というお許しの言葉と一緒に、『メッ』とお叱りのスタンプが来た。
『それを聞いて冴島はどんな反応をしたんだ? 笑われただろ? あ、もしくは優しい感じの笑顔とか?』
『顔真っ赤にしてもじもじしてた』
『――ん? 他には?』
『痛かった? って聞かれた』
『よしわかった。冴島には俺から連絡しとくわ……』
なぜか智樹のチャットからは、疲れた雰囲気がぷんぷんしている。
バイトで疲れてるのかな? こんど、膝枕してあげよう。
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