第237話 巫女さんはやはり……

~作者の懺悔とお知らせ~


前話にて多数の読者様よりご指摘があったとおり、小日向さんが名前で呼ばれてない……! 付き合ったら呼ぶって言ってたやんけ!

はい、その通りです。付き合って以降、智樹くんは小日向さんを名前呼びするようになっています。

というわけで、申し訳ないのですが、前話を少し修正させていただきました。

混乱させてしまい、大変申し訳ございませんでした。

ちなみに小日向さんは、智樹君から名前で呼ばれた際、嬉しすぎて何十回も智樹くんに復唱させていたことを記しておきます。


~~~~~~~~~



 俺と明日香が向かったのは明戸神社という場所で、交通機関を使わずとも行ける距離にある。存在は以前から知っていたが、実際に行くのは初めてだ。ちなみに明日香は地元だけあって、何度も来たことがあるらしい。


 近場の公園のほうがまだ広いんじゃないか? と首を傾げるぐらいの面積しかないけれど、駐車場はあるし、一月二日にはなったけど参拝客はそれなりに大勢いた。


 カタンカタンといういつもと違う足音の明日香が転ばぬよう、しっかりと手を繋ぎ、他の参拝客に混じって階段を上ると、紙コップを配っている二人の巫女さんが目に入った。すぐ傍の小さなテーブルの上には、ヤカンと大量の紙コップ、その隣には大きなゴミ箱が設置されている。


「甘酒かなぁ――明日香は飲む?」


「飲みたい」


「オッケー。俺も飲もう」


 さすがに神社で配る甘酒にはアルコール入っていないと思うが、一応確認してからにしよう。視線をヤカンに向けてコクコクと頷く明日香の手を引いて、俺は巫女さんに近寄って行った。そして、その途中で思わず立ち止まった。


「あけましておめでとう。小日向二年、杉野二年」


 近づいてよく見ると、巫女さんはどこかの会長と瓜二つの見た目をしていた。他人の空似であってほしいと願うけど、俺たちの名前を呼んだ時点で本人確定なんだよなぁ。しかも、会長の隣には白木副会長までいるし。


 この二人、絶対明日香が来ると予想してこの場所で巫女さんやってただろ。

 彼女たちの存在をしる以前の俺ならば「凄い偶然だな」で済ませていただろうけど、いまとなっては「やっぱりいたか」という言葉が脳裏に浮かぶ。


「あけましておめでとうございます。会長、副会長。今年もよろしくお願いします」


 あまり積極的によろしくしたくはないけれど、彼女たちのおかげで明日香は花火や特別なライトアップを見ることができたのだし、少なからず明日香の幸せに貢献していることには違いない。


 社交辞令と本心半分で、俺は頭を下げた。


 明日香は俺の隣でスマホを二人に見せている。たぶんあのスマホのメモ帳には、俺と同じような定型文が映し出されているのだろう。


「うむ――桜清学園でともに過ごす期間はあまり多くはないが、こちらこそよろしく頼む。本来であれば留年して君たちと同じ学年になる予定だったんだが、両親に猛反対をくらってしまってな。まったく……年寄りは頭が固くて困るよ」


 そりゃ反対するでしょうよ……というか会長がそんなことをしたら、他の会員も同じように学校に残留し、俺たちの学年の人数がかなりヤバいことになりそうだ。

 隣でキョトンとした表情を浮かべている明日香は、『生徒会長、卒業したくないの?』という文面を俺に見せながら、首を傾げている。無邪気で可愛い。


「そうなんじゃないかなぁ……まぁこの二人のことはあまり気にしなくていいよ」


 俺は会長たちに聞こえないようぼそりと明日香の耳元で呟くと、いつの間にか鼻にティッシュを詰めていた二人に向き直る。もう鼻血についてはいちいちツッコまんぞ。


「その甘酒、アルコールは入ってないんですよね? 俺たちももらえますか?」


「あぁもちろんだとも。心を込めてそそいであげよう」


 不要なものまで一緒にそそがないでほしい。


 そう思ったが余計なことは口にせず、俺は明日香と一緒に紙コップを受け取って、人の少ない隅のほうへ移動した。


 会長はこちらへ来たそうにウズウズしていたが、隣の白木副会長にたしなめられていた――が、すぐに副会長の心も折れたらしく、二人でこちらへ来ようとする。しかし、別の巫女さんに止められていた。この間、わずか十秒である。


「火傷しないようにな。ふーふーってして」


 明日香と話していると、つい子供に話しかけるみたいになってしまう。

 ここで「子ども扱いしないで!」と言われたならきちんと受け止めるのだけど、明日香は俺の言葉を聞いて嬉しそうな表情をするので、たぶんずっとこのままなんだろうなぁと思う。


 明日香が息を吹きかける姿があまりに可愛かったので、俺は紙コップを持ったままその様子を見守る。やがて、明日香はその紙コップを俺に手渡してきた。


「ん? なんで?」


「智樹の分、冷ました」


「あ、そっちが俺の分だったのか」


「…………(コクコク)」


「はは、ありがとな。じゃあもらうよ」


 そう言って、俺たちは紙コップを交換する。

 すると、彼女は再び紙コップにふーふーと息を吹きかけ始めた。

 可愛いポイントとしては、息を吹きかける時に頬っぺたが少し膨らむこと。そして、ほんのり瞼が持ち上がるところである。


 最近KCCの広がりが、まるで学校に収まっていない気がするから、こんな公共の場で可愛い明日香を披露すると、さらなる広がりを見せそうだなぁと思ってしまう。


 そのうち、神様とかまでKCCになっちゃうんじゃないだろうか。


 


 

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